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マウンド。   作者:
12/15

第十二話

震える手足を懸命に支えて、祐咲は教室を出た。

頭の中は真っ白だった。少しでも気を緩ませれば泣き出してしまいそうだった。

今まで、控え投手だった先輩が投げていた。

きっと試合でも彼が正投手になるのだろうと思っていた。

けれど、違う。慎の1番を受け継ぐのは・・・違う学校からやって来る人。

天才と呼ばれる投手。

「どうして、うちに・・・」

そのまま青葉にいれば、エースは確実だっただろう。

甲子園で大活躍も出来ただろう。

何より、約一年一緒にプレーしてきた仲間たちと離れて、何故成明に来るのだろう。

(何か問題を起こしたんじゃ・・・)

悪い予感が祐咲の頭をよぎる。

高校野球はスポーツの中でも特に規則が厳しい。

何か問題が起これば、対外試合禁止、公式試合出場停止なんて当たり前だ。

もし、問題を起こして部活を退部になったような人だったら・・・

そんな人が成明に来るのだとしたら・・・

仲間として、喜んで迎えたい。

甲子園を目指し、一緒に頑張りたい。

そうは思う。

けれど・・・

歓迎なんてできるのか。頑張ることができるのか。

水野に言った、がんばんなきゃ、は自分自身に向けられた言葉だった。

(慎、どうしよう・・・)

こんな時、慎なら何て言ったのだろう。

『ばーか。何悩んでる?野球部への入部を希望してるんだ。野球が好きなことに変わりはないだろう。野球が好きな奴なら、一緒に頑張れるさ』

そんなことを言うのだろうな、と祐咲は思った。

今、言って欲しい、と心から願った。

決して叶うことはないけれど。

その日の夜、恵から電話があった。

「どうだった?」

ミーティングが、だ。何だった?ではなく、どうだった?と聞くのが恵らしい。

「うん…何か、三学期から、転入生がくるって」

「へぇ。野球部なの?」

「青葉の、ピッチャー。一年生」

「青葉って…あの、強いとこ?」

「そう」

何で成明にくるんだろうねぇ、と昼間祐咲が思ったことと同じことを呟いた。

「それで、暗くなってるんだ?大野君の次に立つのが、違う学校から来る凄い人だから?」

さすが、恵だ。

鋭い。いつも通りに、普通にしているつもりだったのに、恵はごまかせない。

「・・・大丈夫だよ。うちの野球部は、皆凄く仲良しでチームワークがめっちゃ良いのが売りでしょう?」

恵の言う通り、成明の野球部はとても仲が良い。

「だから、その青葉の人もすぐに明成の野球部員に、仲間になるよ。もし天狗になってて、馴染もうとしないような人なら、皆が受け入れない。そんな人にエースナンバーを任せたりしない。

 大丈夫。あんたの仲間を信じなよ」

恵の言葉には、説得力がある。頭が良いからかな。話にちゃんと筋が通っている。

「・・・うん、分かった。ありがとう」


12話です。
読んでくださってる方、遅くなってしまって申し訳ありません・・・
もうすぐ豪腕投手が登場します。
これからも応援お願いいたします。

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