勇者パーティーがどいつもこいつも“悪役側っぽい能力”すぎる
イカれた勇者パーティーメンバーを紹介するぜ!
……いきなり、こんな変なテンションですまない。
こうでもしないとやってられなくてね。
僕は勇者クオール。国王陛下から魔王討伐を命じられた剣士だ。
耳にかかるほどの風になびくような金髪と、キリッとした青い瞳がチャームポイント。
今まさに三人の仲間とともに旅立つというところなんだけど、そのメンバーがヤバイ奴らだらけなんだよね。
まず一人目がネクロマンサーのフリード。死体を操るエキスパートだ。
死体て。死んだ人の尊厳とか考えろよ。
銀髪で眼鏡をかけ、白いローブを身につけた、神経質そうな顔立ちの男だ。
僕が「安らかに眠っている死体を操ることに罪悪感はないのか?」と聞くと、フリードは悪びれもせず笑ったよ。
「私は死体を有効活用しているのですよ」
ダメだ、こいつ。人間の心ってものがない。
続いて二人目はベネナという女。薄紫の髪、濃い紫の瞳、紫色のローブを愛用している。
パーティー全員で顔合わせをした時、
「あらあら、あたしは紅一点ってとこかしらぁ」
と笑ったが、お前はむしろ“紫一点”だろ。紫づくしすぎる。
こいつも長年の研究と実験で、さまざまな毒を体内で生成し、操れるようになったとのこと。毒を盛る、毒液を出す、毒ガスをばら撒く、もお手の物だそうだ。まさに歩く産業廃棄物だ。
毒殺なんて、勇者パーティーのやることじゃない。やはりこの女にも人の心はない。
最後のメンバーは、“爆破魔”の異名を持つディクシス。異名からして悪人である。
黒髪黒目で、黒いロングコートを羽織る。
爆発系魔法にかけては、右に出る者はいないそうだ。
「フハハハッ! 敵の肉体が四散するその瞬間こそが、俺の喜びで生きがいなんだ!」
敵を爆死させることを楽しみ、快感を味わい、達成感すら覚える。
やっぱりこいつにも人間の心はない。あまりにも外道すぎる。
なんでこんな危険人物ばかり集まってしまったのかというと――魔王が現れ、物騒になった今の世の中、真っ当に戦士やら魔法使いやらをやってる人間は、みんなさっさとパーティーを組んで、魔物退治で儲けたり、身の安全を図ったり、と大忙しだからだ。勇者と一緒に魔王を倒そうなんて酔狂な奴はいない。
結果、こんな世間からあぶれたような連中と組まざるを得なくなったってわけ。
だが、こんな奴らでも腕は確かだ。贅沢は言ってられない。
僕はどう見ても悪党サイドなこいつらとともに魔王を倒し、世界を平和にしてみせるぞ!
***
森でゴブリンの群れに遭遇した。
一匹一匹は大したことないが、こう数が多いと手強い相手といえる。
だがフリードは臆することなく、得意げな表情で前に出る。
「ここは私にお任せを」
フリードは腕の立つ死体を『コレクション』と称して“魔法の棺”に収納している。いくらでも死体を入れられる代物らしい。いったい何体あるんだか怖くて聞けない。
戦いの際は、その中の誰かを出陣させられるという仕組みだ。
「今日は彼らでいいでしょう」
銀色の鎧をまとった騎士たちの死体を出す。
騎士たちはゴブリンにも負けぬ数で斬りかかり、あっという間に全滅させてしまった。おそらくどこかの騎士団なのだろう。
死によってようやく戦いから解放されたのに、フリードにいいように使われる彼らが哀れでならない。
しかも、フリードの非道はこれだけに留まらない。
「使えそうなのがありますね」
フリードは損傷が少ないゴブリンの死体に魔法をかけ、自身の手駒にする。
「おかげでコレクションが増えましたよ」
こう言って笑うフリードはまさに悪魔の如し。
僕は顔をしかめてしまう。
「すっごーい! やるぅ!」
「ったく、敵なんて爆破すればいいのに、まどろっこしい野郎だ!」
フリードに嫌悪感を持たず、拍手するベネナと文句を言うディクシスも同類だ。こいつら全員悪魔だ。
***
険しい山道を歩いていると、数頭のワイバーンがこちらに飛んできた。
ワイバーンは竜としては小型だが、優れた飛行能力を持つ。地形的に動きにくい場所であり、空から攻撃を受けるのは非常に不利だ。
僕は剣を抜き、身構える。
「勇者様が出るまでもないわぁ。あたしに任せてぇ」
間延びした口調で、毒使いベネナが臨戦態勢に入る。
「うふふ、いい方角に風が吹いてるわね。そぉれ」
ベネナが両手をかざすと、ワイバーンたちが次々に苦しみ出す。
呼吸困難に陥り、翼の動きが衰え、バタバタと墜落していく。
地上に落ちたワイバーンたちは、白目をむき、泡を吹き、痙攣し、やがて動かなくなった。
僕はベネナに目をやる。
「毒ガス……か?」
「そうよぉ」
「そうよって……僕たちは大丈夫なのか!?」
「ガスの範囲は絞ったから大丈夫だとは思うけど、念のため解毒剤飲んでおいてねぇ」
渡された錠剤を飲み込む。
まったく、こんなのがパーティーにいると、生きた心地がしないよ。
ワイバーンの死体を見て、フリードとディクシスは――
「うーん、さすがに毒で死んだ竜はコレクションしない方がいいですかね」
「トドメに爆破してやりてえが、毒が飛び散っても面倒だしな……やめとくか」
相変わらず恐ろしい連中だ。
毒による虐殺を見たというのに、あまりにもマイペースすぎる。
ベネナが僕の方を見る。
「さあ、勇者様。行きましょうかぁ」
その紫色の瞳はあまりに毒々しく、人間離れしていて、僕は思わず目を逸らした。
***
冒険が進むにつれ、出くわす魔物は確実に強くなっていく。
僕らは荒野で、角を生やした赤い皮膚の巨漢――オーガと戦うことになった。
強靭な肉体を持ち、生半可な攻撃では太刀打ちできない。
「ハッハッハーッ! こういう奴こそ俺の出番だな!」
ディクシスが意気揚々と飛び出した。
黒いコートをはためかせ、呪文を唱え、オーガの四肢を爆破していく。
「ギャアアアアアッ!!!」
「フハハハッ、こんだけでかいと爆破しがいがあるぜ!」
“爆破魔”の本領発揮である。
まるで蜂が刺すように、オーガの全身をチクチクと爆破。
最後は、半死半生のオーガを大爆発魔法で丸ごと吹き飛ばす。
オーガの肉片が四方八方に飛び散り、僕は目を閉じてしまう。
「あ~……スッキリした! なぁ、みんな、今日はステーキにしねえか!?」
「いいですね。そうしましょう」
「だったら、あたしはレアにしようかしらぁ」
僕は一人、暗い表情だった。
こんな光景を見ておいて、こいつらステーキ食えるのかよ。
何度でも言うけど、こいつらは人間の心を持っていない。
***
僕たちの冒険もいよいよ正念場を迎える。
魔王軍最高幹部――“四天王”が僕たちに勝負を挑んできたのだ。
四天王は一対一での決闘を望んでおり、僕たちはそれに応じた。
僕の相手は四天王のリーダー格である銀髪の魔族。
手強かったが、僕はこの強敵を殺さずに制することに成功した。
魔族とはいえ、なるべく命は奪いたくないからね。
しかし、僕以外の三人はというと――
「四天王というだけあって強かったですね。私のコレクションを半分以上倒されましたよ。ですが、彼を新たなコレクションに加えることができました。プラマイでいえばかろうじてプラスってところですかね」
「あたしの相手も強かったわぁ。あたし、危うく食べられそうになったもの。だけどそれが運の尽きだったわねぇ。体内から猛毒を発して、全身を毒まみれにしてやったわぁ。おかげであたしは血と一緒に吐き出してもらえたわぁ」
「俺も苦戦しちまったぜ! 鉄みてえな装甲の魔族でよ! だが、その分爆破しがいはあったがな! 爆破して、爆破して、爆破して……なんとか倒したぜ! 動けなくなったところを大爆発させて、木っ端みじんにしてやったら、最高にスカッとした!」
哀れな四天王たち……。
僕と当たれなかったのは本当に不運だった。敵ながら同情してしまう。
だが、魔王はもう目前だ。
僕はとうとう魔王に挑むことになる。この人でなしどもと一緒に――
***
魔王城の奥深くにて、僕たちは魔王と対面した。
長い角、長い黒髪、凍てつくような眼を持つ、恐ろしい魔族だ。
「よく来た……歓迎しよう」
「人類を支配しようというお前の野望もここまでだ! 魔王!」
僕は剣を構える。
「ふん……我が闇の魔力、思い知るがいい! 四人まとめて地獄に落としてくれる!」
魔王の強さは圧倒的だった。
これまでに戦った魔族とは比べ物にならない。魔王を剣の達人とするなら、あの四天王ですら今日剣を握ったばかりの初心者。そんな風に感じてしまう。
フリードの死体軍団はあっけなく全滅してしまう。
「バカな……! 私のコレクションが……!」
ベネナの毒もまるで通用しない。
「嘘でしょぉ……!? あたしの毒でもへっちゃらなんて……!」
ディクシスの爆破魔法ですら、魔王に傷一つつけられない。
「信じられねえ……こんなのがいるなんてよ……!」
僕は悟った。
やはり人の心を持たない邪悪なこいつらでは、闇の権化である魔王を打ち倒すことはできない。
心に光を持つ、僕が出るしかない。
「みんな下がってろ。僕が“心の力”でもって魔王を討つ!」
魔王が大きな口を開けて笑う。
「クサいことを言う……私はお前のような者が一番嫌いだ! 魂ごと滅してくれよう!」
魔王が怒りの形相で迫ってきた。
対する僕は、それを光り輝く剣で迎え撃つ。これこそが僕の得意技。
「心光刃!!!」
僕の剣から放たれた光が、魔王にぶつかる。
まもなく効果は現れた。
「あ、あうう……やめてよぉ……みんなして僕をいじめて……やめてよぉ……!」
魔王は頭を抱えてうずくまる。
おそらく魔王には幼い頃、周囲から迫害された過去があり、僕の技によってそれを思い出しているのだろう。
その記憶は時間とともに、どんどん鮮明に濃厚になっていく。
「みんな……みんな……僕をいじめるぅぅぅぅぅぅ……!!!」
もがき苦しむ魔王。
これを見て、僕は勝利を確信する。
「このままトラウマが増幅していけば、魔王は精神崩壊を起こし、5分以内に廃人となるだろう。かろうじて呼吸をするだけの、平和的な生き物になるはずだ」
まもなく魔王の心は完全に崩壊した。虚ろな表情でどこかを見つめている。いかなる手段を用いても修復は不可能だし、もはや二度と悪さをすることはできないだろう。
魔王の心を攻め、むやみに命を奪うことなく制圧する。我ながらなんと勇者らしい戦い方だろう。人間の戦いというのはこうあるべきなんだ。
僕は剣を鞘に納め、宣言する。
「これで世界は平和になった。さぁ、帰ろう!」
――勇者クオールの戦いぶりを見ていた仲間三人はつぶやいた。
「いやはや、いつ見ても恐ろしい技ですね……。鳥肌が立っていますよ」
「ホントよねぇ。勇者様ってあたしたちのこと怖がってたけど、一番怖いのはあの人よ」
「勇者だけは絶対敵に回したくねえな……」
おわり
お読み下さいましてありがとうございました。




