第1話 出会い ②
今は4月、ようやく暖かくなってきた季節だ。
上下灰色スウェットで平日の朝に出かけるにしては
いかにもニートっぽい格好だが……
まぁスーパーに行くだけだ、気にしない事にする。
外に出てみると朝だからか、意外と肌寒い。
軽く腕をさすりながら歩く。
「こんな事ならもーちょっと寝てればよかったかな」
元々、東京5大家だった為か、
東京の中央区に居を構えていて
中央区を仕切ってたらしいが
父が無くなり、5大家を剥奪され
今や見る影もなく、ただのでかい家が
あるだけの赤月家となってしまった。
それ故に……
「流石、中央区。ちょっと出るだけで人多いな」
そう人が多いのである。
絶賛通勤ラッシュって感じか。
ゴミ出しをしながら家を出ている人や
子供を自転車に乗せ出勤している人もいたり
中には魔法を使って飛んでる人もちらほら。
それに……あれは新卒かな。
緊張や不安の中に何か期待や夢を膨らませて
まだ新しいスーツを着て歩く姿は
俺にはちょっと眩しすぎる。
「っとんな事考えても仕方ねぇ。
とっとスーパー行って帰ろ帰ろ」
自分に無いものを持っている彼等が
羨ましくて現実を見ないように
見なくていいようにそそくさと
スーパーへ足を運ぶのであった。




