表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人に向けて魔法が撃てない俺はニートになろうとしたら底辺クランに入団させられました  作者: いぬぬわん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/49

第5話 決意 ③



自宅に着くと、陽翔は疲れ切った体をソファに沈めるように横たわった。


戦闘で受けた打撲や擦過傷の痛みがまだ残っている。深く息をつきながら、そのまましばらく眠りに落ちた。



夕方を過ぎ、夜になったころ──

家の玄関の扉が開く音が聞こえる。


「「ただいまー!!」」


その声に、陽翔はぼんやりと目を開ける。

そこには、義母の赤月 琴音の姿があった。



ウェーブのかかった黒髪のボブ。

40代とは思えない若々しい美貌に赤月家特有の真っ黒い瞳が、陽翔の怪我を見てぎょっと光った。


「……陽翔、あなた!どうしたの、その傷は!」


義妹の赤月 雫もすぐに駆け寄る。

ストレートの黒髪ボブで母譲りの体型。思春期特有のツンとした表情で、陽翔の顔を見ると少し口を尖らせた。

「……また無茶したの?……お兄ちゃん……」


琴音は眉をひそめ、鋭い目で陽翔を見つめる。


「なにがあったの?説明しなさい!」


陽翔は少し息をつき、痛む体を押さえながら経緯を話し始めた。

謎の男が現れたこと、先輩が助けてくれたこと、自分は何もできなかったこと……。

言葉を選びながらも、正直に一つずつ説明する。


雫も横でじっと聞き入り、母親も静かに頷きながら聞いていた。


話が一通り終わると、陽翔は拳を握りしめ、決意を込めて言った。


「……だから、俺は強くなりたい…………!」


琴音はその言葉を聞き、少し驚いた表情を見せる。


「……そう。強くなる、ね……」


そしてしばらく陽翔の顔をじっと見つめ、静かに頷くと、琴音は軽く「ちょっと待ってて」と言い、席を立った。


数分後──

琴音が戻ってくると、手に持っていたのは一振の刀だった。


その姿に、陽翔の目が一瞬見開かれる。


──それは、赤月家の家宝、名刀赫月。(あかつき)


赤月家の当主が手にしてきた刀であり、当主になる時に前当主から新当主に送られるもの。


最後は生前の父が使っていた刀。


「……それは……」


琴音は刀を静かに陽翔の前に差し出す。



「陽翔……あなたが本当に強くなりたいなら、この刀を使いなさい」



陽翔は、赤く淡く光る刀身から目を離せずにいた。


琴音は一歩近づき、そっと声をかけた。


「……陽翔」


その声音には、厳しさよりも、隠しきれない不安が滲んでいた。


「強くなりたいって言葉……その覚悟が本物なのは分かるわ。でもね……」


琴音は一度視線を伏せ、ゆっくりと言葉を選ぶ。


「貴方に何かあったら……私は、天国の兄さん達に顔向けできない……」


陽翔の胸が、きゅっと締めつけられる。


「……わかってる」


思わずそう漏らすと、琴音は首を振った。


「ただ……無茶だけはしないで。お願いよ、陽翔」


心配そうにする琴音だが、瞳には温かさを感じる。


「本来なら、当主になるときに前当主から受け取るもの。でも……貴方には、受け継ぐ資格がある」


その言葉に、陽翔の脳裏に過去のトラウマが蘇る。

人を殺す可能性のある力。

かつて、それを恐れ、握ることすら拒んだ自分。

もし刀を振るえば、守れるかもしれない。

だが人を殺めてしまうかもしれない。


「……俺、〝あの時〟から……刀を使えませんでした」


陽翔は正直に告げる。


「人を殺すかもしれない力を……持つのが、怖くて……」


琴音は驚いた表情を見せるが、すぐに優しく微笑んだ。


「それは……貴方が、優しい証よ」


陽翔は赫月を、両手で受け取る。

赤い光が、まるで呼応するように脈打った。


「……もう逃げない」


声は震えていたが、視線は真っ直ぐだった。


「今日の痛みも、悔しさも……全部背負って、俺は強くなります」


琴音は静かに頷く。


「ええ……。赫月は貴方を拒まない」


少し離れた場所で雫が腕を組み、ぷいっと顔を背けながら呟く。


「……ほんと、無茶ばっかしないでよ。バカ兄……」


陽翔は小さく笑い、赫月の重みを胸に刻む。


それは、力の象徴であり、

同時に“守る覚悟”そのものだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ