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第48話 分身


 結婚式の後の夜。


 ナディアは一晩中眠ろうとしなかったし、俺にもそれに応えるだけのモチベーションがあった。


「ぜーぜーぜー、もう一回行けるか?」


「はぁ、はぁ、はぁ……の、望むところだ」


 汗ばむ肌にリボンのごとく舞う黄金の髪。


 割れた腹筋の上で揺れる玉のような乳房。


 発揮されるたくましい尻と力強い太ももの運動量。


 騎士として磨き上げられた彼女の肉体の力が一気に女の喜びへと転用されていく様子は神話的ですらある。


「はーはー……これはもう妊娠確定であろう」


 とうとうシーツに突っ伏すナディア。


「さあ、そう上手くいくかはわからんけど。ちゃんと願いは込めておいたぜ。『ナディア、妊娠しろー』って」


「そうだったのか? ふふ……うふふふふ」


 そんなふうに事後トークの軽い冗談に笑い合ってキスをしたり頭をなでてやったりしているうちに、いつのまにか二人とも眠っていたらしい。


 ……そして、夜があけた。


「アルト様。素敵な結婚式でしたわ。ナディアの嫁ぎ先として安心いたしました」


 この日、お忍びで来ていた女王がやっとお帰りになるとのこと。


 マジ早く帰ってくんねーかなと思っていたけれど、この人にとってもナディアは大事な部下だったわけで「ふたりの結婚式を見てから帰ります」というご要望を無下にはできなかったのである。


「陛下。これまで大変お世話になりました」


「ナディア……お幸せに」


 初日はヤベーくらいHENTAI性を露呈した女王であったが、お帰りになる時には少ししんみりとしたご様子であった。


 厄介な趣味をお持ちなところ以外、基本イイ人なんだよな。


「やれやれ……」


 女王が去ると、おふくろは肩で息をついた。


「さすがに緊張したねえ。こんなことが幾度もあったら寿命が縮まっちまうよ」


「安心しろって。ダダリに女王がやってくるなんてもう二度とないだろうからさ」


「まあ、それもそうだね」


 俺たち一家はホッとひと息つく。


 ――そう。


 この時はまだ想像だにしなかったのである。


 あの女王が、ずっとのちにあんな形で再びダダリにやって来ることになろうとは……



 ◇



 それはそうと、ナディアとの結婚で俺には三人目の妻ができたことになる。


 TOL(テリトリー・オヴ・レジェンド)のシステム上、嫁ひとりにつき一つの魔法を覚えるのだった。


 前回は『ほのお』と『亜空間』を覚えたのだが、今回はなんだろう?


―――――――――

領主レベル:5

称号:転生子爵

HP:424

MP:177

ちから:230

まもり:197

魔法:亜空間C、ほのおE、分身F(New!)

特殊技能:ステータス見、痛覚耐性、移動速度2倍、身躱みかわし、壁抜け

―――――――――


 おお、分身か!


 これは正直アタリ魔法だ。


 そもそもTOLは領地を経営したり獲得したりしていくゲーム性なんだけど、それが進んでいくと『飛び地』を獲得することも出て来る。


 現状も、ベネ領から獲得した塩田の島があるだろ?


 そういう本居地から遠くの領土があると、わざわざ土地を往復して建設や耕作の指令を出さなければならないというのがゲームの仕様だった。


 これが結構ロスでさ。


 移動に日数を消費してしまうと指令可能回数も減るし、領民たちも指令が終わっているのに放置されることになり行動力を無駄にしてしまうことがある。


 しかし、『分身』の魔法があれば話は別だ。


 これはプレイヤーのボディを複数作り出す魔法。


 分身の一方を飛び地の方に派遣すれば移動することなくそれぞれ同時に指令ができる。


 つまり、指令可能回数を減らさずに”本拠地”と”飛び地”を同時経営できるというワケだ。


「でも、自分の分身を作るとか、実際やったらどんな感じなんだろうな……」


 そう、そこらへんちょっと怖かった。


 当然ゲームでは視点を切り替えて順々に操作してたからね。


 単純に二回分コマンドするってだけだった。


 でも、現実世界(この世界)で分身を作り出したら、そいつの行動はどうなるんだろう?


 普段はオートで、場合によって意識の切り替えが可能だったりとか?


 それだとオートの意識とケンカになったり、最悪の場合のっとられたりしないだろうか?


 マジ不安だな……


 が、よくよく考えてみたら『分身』は魔法だ。


 もしも分身に意識があって本体と衝突が起こったら魔法の発動を切ればよいだけじゃね?


「とにかく一度使ってみるか……分身!」


 そう唱えた瞬間。


 俺は二体になった。


 ……ただし、意識はひとつである。


「な、なんだこりゃ!?」


 今、俺は。


 俺の意識ひとつで二体ぶんのボディの視点を同時に見ることができていた。


 昆虫の複眼とかってこんな感じなんだろうか。


 もっと言えば、人間は目が二つあって同時に視覚情報を得ているけど、意識の上ではひとつの景色として統合して捉えているだろ?


 そんな感じに、本体と分身で二つの視点の景色をひとつの意識に統合して捉えることができているんだ。


 不思議な感じなんだけどさ。


 また、手で頭をかきながら足は道を歩くことができるように、本体と分身で全然別の行動を取らせることも容易であった。


「これならケンカになることはねーか」


「そうだな」


 こうして本体と分身で会話をすることもできる。


 意味はねーけど。


 それから、ゲームだと分身にも固有のステータスがあったはずだよなー。


―――――――――

【分身】

HP:42

ちから:23

まもり:19

―――――――――


 おお、それはゲームを踏襲しているようだ。


 まず分身は魔法や技能を使えない。(分身に魔法が使えたら、分身の分身とかできちゃってゲームバランス壊れそうだよな)


 そして、戦闘能力も本体から割り引かれた能力しか備わっていない。


 分身Eの状態で、およそ本体の1/10程度の強さかな。


 でも、魔法のランクを進化するための”コスト”はこの日のために取っておいてある。


 とりあえず分身を1ランクUPさせてみるか。




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