第18話 食い物
「ご、ごめんなさい」と言うへレスの頭に
俺はチョップをくれた。
「痛っ!」とへレスは頭を抱える。
「いいか?へレス。俺達は3人しかいない。
だから複数の魔獣と対峙したら少しの
油断や慢心で一気にやられるんだ」
俺はそう言うと話を続ける。
へレスを中心に攻撃を組み立てるのは
変わりはないけど、今は無理なんだ。
そうだな、後2人ほどいたら出来るだろう。
だからそれまでは我慢してくれ。と。
「わかってるんだけど。」と下を向くケレス。
あの時、晋の左側に魔獣が回り込もうと
していたと思って。確実にヘッドショットを
決めたかったから左に移動したの。
そうしたら魔獣が私に気づいて。
そこまで言うへレスに俺は驚く。
俺は気づいていなかった。
「本当なのか。」と聞くとへレスは頷く。
「その時さ、へレスは焦っていた?」とも聞くと
へレスは首を振る。
「逆かな。凄く冷静で、周りが『静か』過ぎて」
そこまで言うと涙ぐむ。
俺はアスティを見る。アスティも俺を見る。
「師匠、やっぱりへレスを中心にした攻撃を
今のうちからしましょう。」俺がそう言うと
「へレスは15匹の魔獣の配置がわかったか?」
そうアスティが言うとへレスは頷く。
「変な感じなの。地面が水面なの。魔獣が
動くたびに波紋がして、それが私に当たるの。
動く方に波が広がって。なんか説明が出来ないけど」
そう言うと、何故か涙ぐむ。
「へレス。次から俺達を、俺達の動きを指示しろ」
そうアスティは言うとへレスは目を大きく開き
「む、無理!」と大きく両手を体の前で振る。
「へレス。お前はランクSSになりたくないか?
俺は成りたい。SSになればレアなモノも探しやすくなる。
お前はジェニ・・・様?の役に立ちたいんだろ?
お前の能力はソレに値すると思う。ならば、
磨くべきだ、それを。」と俺はマジで思ったのでそう言った。
「明日はお前、弓を使うな」とアスティが言うと
へレスは「ええええええ!」という声をあげる。
「後ろから戦局を見るんだ。お前が司令塔だ。
ああしたい、こうしたい、と悶々としろ。
それを俺達に言え」とアスティは笑う。
「よし!飯にするぞ!」とアスティは笑う。・・・が。
「師匠。飯なんてありませんよ。狩りしてないし。」
と俺は教えてやった。
「あ、さっきこれ捕まえました。」とへレスは
言うとトカゲっぽいモノを取り出した。
それも5匹。「いつのまに!」と俺。
「これなんていう動物なんですか?動物じゃねえか。
爬虫類か」と俺はライターで竈の中の木に
火を付けながら言った。
「そそっそ!それは、なに!魔道具!?」と
鼻息荒いへレスさん。
俺はちょっと考えてニヤリとする。
「もし、俺達の言う通りにしたら、この魔道具。
そう、炎の魔道具を君にあげよう」と!
「アイデクスだ。」とアスティは言うと
ずぶりと木の枝を口から突き刺し、それを
焼く。俺は「か、皮は?」と聞いちゃう。
「パリパリして旨いぞ?大丈夫。
鱗は取ってある。さすがへレス」と。
俺達はソレを食いながら雑談をする。
「師匠は、ぶっちゃげですよ?なんで俺達と
行動するんですか?師匠ならランクSSの
冒険者を選び放題でしょう」と食いながら
質問してみた。ギャグで返してくると思い・・・。
「俺はな、晋。異世界人だ。なんだかんだで、
色目で見られるんだよ。」そう言うと続ける。
お前はまだ、わからんかもしれないが。
俺は大統領にもなった。だけどな、
やっぱり。なんていうのかな。壁があるんだよ。
もちろん、違う奴らも居た。慕ってくれる奴な。
でも、それはほんの一部だ。
ここの人間は俺を、『異世界から来た俺』を
仲間とは思ていない。ただ、俺が強いから、
強かったから従っていただけなんだよ。
「焼けたぞ」と少し笑いながらアスティは言う。
「私はアスティさまが好きですよ!」とトカゲに
かぶり付きながらへレスは言う。
「ジューシー」とも。
「でもへレスの母さんは言ってましたよ?
仲間になりたい奴は多いって」と俺はトカゲに
かぶり付きながら言う。「あ、旨い」とも。
「金の為なら人間は自分を隠すさ」とアスティ。
「ところでお前のその手。『変』に磨きがかかったな。
なんでそんなにツヤツヤなんだよ」と笑うアスティ。
「すごいよね、俺。」と手を見ながらおらは言っちゃう。
「自分にしか効果がないって言うのは、いかがなものか
と思いますよ。と言うか、熱かったりするし。」と
手を見ながら言う。「謎だ」とへレス。
「私も初級なら使えるけど。ほら」と手をかざし
竈に向けて炎を放つ。
「熱くないの?手」と俺。
「全然?」とへレス。
おれは竈に向けて「ファイア」と唱える。
炎の玉が出るには出るが『手が燃える』。
「熱ぃいいいいいい!」そう言うと俺は
地面で手をこする。
「な?『変』だろ?」とアスティは2匹目に
手を出し食う。
俺とへレスは目を合わせ、そして。
「その1匹は私のです」とへレス。
「何を言ってるんですか。とんでもない失敗を
して俺に傷を負わせたくせに」と俺は
15歳の少女に向かって言い放つ。
「女性に対して、譲る気持ちはないんですか?」
とへレスは手をトカゲに向けて動かすが、俺は
その手を掴む。
「ないな。俺は男女平等主義者だ。そもそも
お前は成人らしいな。」とマジで言っちゃう俺。
「セクハラです」とキリリとした表情でへレス。
俺は思わず、手を放してしまった。痛恨のミス!
トカゲをおいしそうに食べるへレスであった!
「じゃあ、明日はそう言う事で」とアスティ。
「了解です」と少し凹みながら俺。
「了解です」とおいしそうにトカゲを食べるへレス。
そして俺達は眠りにつく。
そして朝を迎え、朝食も取らず、いや・・・。
朝食が無いの間違いでした。
「気合い込めていくぞ!腹減ってる者は強い!」
とアスティは言う!その声に俺は!吠える!
「ハングリー精神を見せてやる!否!精神じゃねえ!
マジのハングリーを見せてやる!」と!