第17話 崩れた予定
「むちゃくちゃ旨い仕事ですよね。
運び屋って。」と片寄合いながら
俺は一応聞いてみた。
「そうだなぁ、これが街から街だと
さらに旨いだろうなぁ」とアスティ。
「そもそも人間3人で銀貨3枚ですからね!
俺もしかしたら馬買ったら、運び屋を
するかもしれないです!」とハッキリと言ってやった。
「因みにな、カティの街から国の首都
までだとな銀貨6枚だ。あ、1人でな」とアスティ。
「マジですか!シン!運び屋やろう!
冒険者やりながら運び屋!」と興奮するへレス。
「そうだな!それもいいな!」とアスティは言うと
へレスと拳を突き出し、へレスと誓いを交わす。
「狭いんだから動かないでくれ」と俺は二人に
真顔で言ってやった。
そうこうしてエナ鉱山の入り口に着き、俺達は
代金を払い荷馬車を降りる。
「いいですか?コレで全財産は銀貨2枚です。
ここで馬を買えるだけの魔核を取ります。
目標は金貨10枚分です」と二人を並ばせ
俺はゆっくりと左右に歩きながら言う。
「はい!質問です」と元気よく手をあげるへレス。
「はいどうぞ!へレスさん!」と俺。
「それだけの魔核となると朝から晩まで中級魔獣を
討伐をしても10日はかかります!」との事。
「いや、上級や名持ちをやればいいかもな」と
アスティは顎に手をやり答える。
「名持ちとは?」と俺が聞くと
名持ちの魔獣は別名『ボス級』とも呼ばれる。
その核は捨て値でも銀貨8枚分。
しかし、普通は10人くらいのパーティで
討伐をする。まぁクラスSSとなると4人でもやれる。
居るのは最深部になるので道中の魔獣まで倒すと
合計で金貨3枚ほどにはなる。
「因みに、ここエナ鉱山は上級魔獣が多いから
結構な稼ぎになる。上級の魔核は銅貨5枚から
銀貨1枚で取引される。」とも説明してくれた。
俺は空を見上げ、計算した。
「えっと、ボスが銀貨8枚。上級が銅貨5枚として
金貨10枚ってことになると上級を184・・・。
ってかそもそも3人でボス戦はしたくないから
上級200匹かよ!」と気づいた俺。
「死ねるじゃねえか!変更!予定変更!
金貨5枚でいい!それで馬を買う!」とも言っちゃう。
「まぁ今日だけじゃなく、数日ここでベースを張って
ぼちぼちやろうぜ」とアスティは言うとへレスにも
それでいいかと聞く。
「うんうん。勿論もちろん」とへレス。
俺はふと思い出し結論を導き出す。
「カティの街からここまでで人間1人で銀貨1枚。
上級魔獣2匹分。」と悩む俺。
「うーん。やっぱり儲けって仕組みは上手く
均等に出来てるのかもな」と。
俺達は入り口付近のデカい木の所にベースを
張る事とし、簡易的だが大きめの布を張り
簡易テントを作る。
「荷物はアイテムボックスに入れておけよ。
この頃物騒になってるしな。」とアスティ。
「盗賊とかいるんですか?」と俺は布を広げながら
聞いてみた。
「最近な。街はよくなってるんだよ、格段に。
でもこういった道中はなぁ・・・。」とアスティ。
俺達は小手調べの為に夕刻まで入り口付近での
討伐を行う。入口だと群れからはぐれた魔獣が
いるだけでそれほど難しくはなかった。
というか、ほぼへレスの弓で倒されていく。
俺と師匠はへレスが撃ちやすい様に
適度な距離を保って前方に剣と刀を構える。
なかなか数が出てこない為に今日はこれまでとし、
ベースへと帰る。
食事をとりながら俺達は話し合う。
「へレス、明日からは群れをヤル事となる。
今日と違い、俺達のフォローになる。
前に出すぎず、俺達が撃ち漏らした魔獣に
とどめを刺す役だ」とアスティ。
「了解」といいながら食事をする。
俺は一抹の不安を感じた。
「集団戦に弱い」と言う、へレスの母さんが
言った言葉を思い出したからだ。
そして翌朝。軽く食事をとり、準備をし出発をした。
エナ鉱山の地形を知っているアスティを前に、
そして中央にへレス。後方から俺が歩いて行く。
アスティは立ち止まると「よ、いくぞ。
シン、前に来い」というと「突っ込むぞ!」と
声をあげる。
俺と師匠は約15匹ほどの魔獣に左右に並んで
剣を振る。
「上級が居る!少しずつ下がりながらやるぞ!」と
アスティが言う。
俺はその行動を何となく理解し同じ歩幅で
後退するが「取りこぼした!」とアスティ。
「へレス!頼む!」と俺は言うが・・・。
「今は無理!」と何故か真横から声がした。
へレスに向かう魔獣が3匹。下がりながら矢を放つが
魔獣が速い。
「やべええ!」と俺はへレスを襲おうとしている魔獣の
背後に入り刀を振る。3匹を何とか倒したが
背中に激痛が走る。「痛っってええええええ!」
「フォローする!引くぞ!」そう言いながらアスティは
剣を振りながら晋と背中を合わせる。
「残り8匹!」とアスティは声をかける。
俺はへレスの所へ行き腕をつかみ後退する。
一気に距離を取りへレスに
「ここにいろ!いいか!」と言いアスティの所へ向かう。
「後退です!距離獲りました!」と声をかけ
俺達は一旦入り口付近まで引いた。
「ん?へレス、腕をけがしてるじゃねえか」と
俺はへレスの腕を取る。
「え、シンだって!背中に!」と言うへレスを
無視しながら回復魔法を唱えるが!
そう!俺は唱えたんだ!傷がふさがる
イメージをして!「ヒール」と!
俺の右手は白く輝く。しかし。
・・・へレスの傷は塞がらなかった。・・・が!
「師匠。大変です。俺の右手がつややかに
なってます。潤いもあります」と俺は言う!
「なんじゃそりゃ!」とアスティは言うと
まずへレスの傷に回復薬を掛ける。そして
俺の背中にもドバドバと掛けてくれた。
「ありがとう!マジで!師匠!」と俺。
へレスは少し涙ぐみながら
「ご、ごめんなさい」とか細う声で言った。