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プロローグ
「結局、君はどの私が好きだったの?」
神父からキスを促され、顔を近づけると彼女はそう言った。
その誓いの瞬間をフレームに収めようと友人たちがカメラを構えこちらを見ているのを感じた。
「いま、それ聞く?」
「だって気になったからー」
いつだって彼女はそうだ、久しぶりに思い出したあの日々。
たしかこの感じは・・・
肩を抱きながら思い出そうとした次の瞬間、僕の唇は彼女によって塞がれた。
驚いて目を見開き、彼女が一瞬ぼやけた。
大きく開いた目を細め、焦点が合いはっきりと見えた彼女の顔を見る。
( 時間切れ―)
声には出ていなかったが、口の動きだけでそれは伝わった。
チャペルに響いた小気味よいシャッター音が、あの頃の思い出を一枚一枚めくった。
ああ、そうだった。僕が好きだった君は・・・