ash / (untitled)
ash
風邪薬を飲んで
セルフサーヴィスの墓場へ向かう
コールタールのような思いやりで舗装された道は
ぶよぶよの魂でごった返し
立ち並ぶ露店では首の無い子供たちが声をはりあげる
樹皮を剥ぎとる
ぼくは葬儀の中で眠りこけていた
樹液はぼくの指先にこびりつき
石鹸で何度洗ってもとれない
君は素足でスキップしている
耳元でささやかなくても
ぼくは諳んじて
刻印をなぞる
それもまた奪われるのだけれど
眼を購うために眼を支払い
耳を購うために耳を支払い
あいまいな記憶を次々と売りとばしては
役立たずの思い出を次々と買い入れる
首の無い子供たちは
救いを求める手だての無い死体を解剖するように
冷然と事を運ぶ
雨はいってしまった
ぼくは泥の中にとり残され
昼も夜も鏡に半身を映す
もう一方の鏡面で
ぼくは幸せでいるだろうか
君はすすけた窓を覗いている
墓場では
規格通りの天国をあてがわれて
墓標たちが歓喜の歌を叫ぶ
つぎはぎだらけの空は
かつて生きていた人々に蝕まれ
今ではもう
つまらない善意のように醜い
(untitled)
ゆるやかに傾斜している
君はバランスをとりながら
ぼくから遠離ってゆく
ぼくは台所の床に寝そべって
冷たいミルクを夢見ている
腐臭に酔いながら
汗だくになって穴を掘る
爪が剥がれても
泣きじゃくりながら
死体置場に帰りたくないばかりに
血まみれになって
まだ小さすぎると
汗を拭いもせず
一心不乱に
雲を切りとって
そっと冷蔵庫にしまっておいたけれど
それは雨になって
ぼくはお母さんに叱られてしまった