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恋は幼き  作者: みびみやこ
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私が彼を嫌いな理由


風が嫌いだ。下を向いていても、容赦なくぶつかってくる。睨もうと振り向くと、既にどこかへ消えている。まるで彼だ。

青空が嫌いだ。どんなにそっぽを向いていても、こちらを見ろと言わんばかりに輝いている。諦めて見上げると、既に雲や雨が邪魔をして遠くなる。まるで彼だ。


私にとって彼は、風であり青空だった。幼き頃の私にとっては、彼は好きなものその物だった。体を吹き抜け爽やかな気分になれるような、落ち込んでいてもそれを吹き飛ばし、明るい気持ちにさせてくれるような、それが彼だった。

「泣いてるの?どうしたの?」

「お母さんから、しかられたの、私がピーマンたべなかったから、大きくなれないよって、やだっていったら、じゃあもういいって」

「そっか、、ぼくもピーマンにがてだよ。だけど、ぼくたべるよ」

「どうして?」

「たべものにも心があるんだ!お父さんがいってた!ピーマンもありかちゃんが食べてくれないと泣いちゃうんだよ!」

「ピーマンが、泣くの?」

「うん。食べてほしいよー、って!だからピーマン食べよう?」

「、、でもお家、飛び出してきちゃって、帰れないよ」

「ぼくも一緒にありかちゃんちにいってあげる」

「ほんとう?」

「うん!おててつなごう!」

「うん!!」

母とのつまらない喧嘩で家を飛び出した5歳の頃。手を繋いで帰った懐かしい思い出。今でも情景が浮かぶ。私はあの頃とは変わってしまった。


あれから10年後。幼馴染だった私と彼は別の高校に進んだ。時間とは残酷で、次第に彼のことは頭の隅に追いやられ、彼のことを完全に忘れたのは、高校生になって最初の秋を過ぎた頃だった。

「亜梨花~さっきの授業のノート貸して?」

「もう!また、あんた寝てたんでしょ?」

如月亜梨花、高校2年生。つまらない高校生活、それなりの友人関係、なんとなくの日々を送るそこら辺にごろごろ転がってる女子高生。自分が勉強やスポーツやその他諸々の才能の持ち主ではないと、受験の時気づいて早2年。高校は適当にオープンキャンパスに行った中から適当に選んだ。適当に選んだ高校で、適当な生活を送る毎日。

「寝てたんじゃないよ!ぼーっとしてただけ!」

「ルカ、それ寝てたのと変わんないから」

「おーねーがーいー。あっ!やば!バイトの時間じゃん!ごめん帰る!明日ね!!」

「忙しすぎでしょ(笑)じゃあねー」

神田ルカ。去年から一緒のクラスの友達。一昨日彼氏ができたらしい。バイト代をデート費にあてるため、シフトを入れまくり始めたそう。正直、羨ましい。誰かのために、自分が働いたお金を使うとか私にはできない。

高校生になったら自然と彼氏ができて、恋愛ができるんだって思ってた。恋愛漫画の主人公ってだいたい高校生だし、みんなハッピーエンドだし。

「あー、彼氏ほしいなー」

1人で歩く帰り道でつぶやいた。なんか、本格的に寂しい奴みたい。

「ただいまー」

「おかえり、ありちゃん。ごはん用意できてるから、早めに食べちゃいなさい!」

「はーい、ありがとお母さん」

私のお母さんは近所のスーパーのパートで働いてる。少し前に腰を悪くしてから、バリバリのキャリアウーマンを卒業した。でもなんだか今のほうがお母さんも楽しそうで。私は悪くなった腰に感謝している。お父さんは、まあまあな規模の会社のどっかの部署の部長をしている。わが親ながら尊敬する。

「でも、娘はこんなんなんだよなぁ」

「ありちゃん、どうかした?」

「いんや。ハンバーグ美味しい」

「よかった!初めての和風ハンバーグ緊張したのよ!」

どこにでもいる女子。優秀な両親の血を引いてると思えない。特段、勉強とか私生活とか口出しされないし「亜梨花は好きなように生きなさい」といわれるが、申し訳ない気持ちなのだ。

「あっ、そういえば。佑介くん卓球の全国大会にでるんだって!ありちゃん知ってた?」

「佑介くん?」

「ありちゃん、幼馴染でしょ?」

「・・あー、あの佑介?全国?」

「佑介くん、高校は卓球のスポーツ推薦で進学したって話だしね」

「・・・あー・・そうだっけ。推薦で進学だったっけ」

「そうそう」

佑介・・。久しぶりに聞いた名前だ。私の幼馴染。私の、嫌いな、幼馴染。

「今日スーパーにたまたま三井さんが来られて!久しぶりだったから、佑介くんのことで盛り上がったのよ!」

「そっか、ごちそうさま」

「ハンバーグのお皿は、油をふき取ってから水に入れてよ」

「はーい」

「それと、佑介くんにおめでとうって送りなさいね」

「えっ」

「佑介くんの連絡先知ってるでしょ?全国大会頑張れ。くらい送ってあげなさいよ。なんか嫌な事情でもあるの?」

「・・そんなわけじゃないよ。送っとく」

自分の部屋に入り、布団に寝転んだ。中学3年生の頃を思い出す。あの「自分は凡人」だと自覚し続けた日々のことを。


「A高校は、如月には厳しいんじゃないか」

「えっ・・。でも行きたい高校なんです!お母さんが言ってた高校で・・」

「うーん・・。正直に言うと相当厳しいぞ?先生もできるだけサポートするけど・・厳しいと自覚して勉強に臨まないと。E校とかが如月に合ってると思うんだが、どうだ?」

「・・・」

進路を決める時期。母と同じ高校に行きたかった私は、二者面談でその高校の名前を出した。嫌な顔をされた。

「はぁ」

「亜梨花ー!!」

「?・・佑介」

「後ろ姿見えたから!二者面談、どうだった?A校希望なんだろ?」

「・・無理だって。E校はどうだって言われた」

「E校?・・まじかよ」

「・・佑介は?T校希望でしょ?卓球の強豪校」

「俺は・・・俺もそんな感じ!!」

「そっか・・」

「まぁ元気出せって!アイスおごるからさ!」

「・・うん。ありがとう」

あぁ佑介もなんだ。自分だけじゃないんだ。って思った。でも後日、友達から佑介はスポーツ推薦でT校に決まったと、しかも二者面談時には既に話をされていたと聞いた。

「ねぇ佑介どういうこと?あの時私に、無理だったて言ったじゃん」

「・・ごめん。あの時亜梨花、落ち込んでたし言えなかった」

「そんなの言い訳だよ。いつかばれるんだし、なんであんな嘘ついたの?傷つくだけじゃん!」

「・・ごめん」

「・・最低」

それから佑介の部活のない日に一緒に帰っていた日々は無くなった。


これが私が佑介を嫌いな理由。なんでもないことに思えるだろう。でも私は傷ついた。携帯電話に佑介の番号はない。いつのまにか消してしまったのだから。



今回も恋愛ものです。まだあんまり恋愛要素出せてません。これから出していきます。

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