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青色に輝く星を目指して 〜高校野球青春物語〜  作者: 神山ギン
第二章 最低の野球部
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第二章01 入部!


 野球部に入部することを決めてた俺は入部届けを顧問兼監督に持っていくために職員室の前にいた。別に悪いことはしていないのだが変な緊張感が出てくる。


「でもまさか野球部の監督が美玲ちゃんとはねぇ」


 驚いたのはこの遼平だけではない。俺もだ。物理の女教師が監督だなんて誰が想像するか。つーか監督できるのかよ。


「まあいいだろ、とっとと出しに行こうぜ」

「そうだな」


 俺たちは職員室のドアを「失礼しまーす!」と言いながら開け、綾小路美玲先生の机まで向かった。その先生はというとお茶を湯のみですすりながらほっこりしている。


「美玲ちゃんこれよろしく」


 遼平が先に入部届けを渡した。


「土塚くん野球部入ってくれるの?」

「俺だけじゃないっすよ」


 遼平は俺に肘を突っついてくる。わかってるって、ちゃんと出すよ。


「俺も野球部入ります」


 美玲先生、いやこれからは美玲監督だ。監督に入部届けを渡した。


「大河くんも……これで9人……」


 美玲監督は瞳を潤ませながら喜んでいる。いい大人が泣きじゃくるんじゃないかって不安になったが幸いそれはなかった。


「二人ともよろしくね」



 職員室を後にした俺たちを、イケメンこと藤咲春馬と、メガネくんこと真壁慎二が待っていた。そんなに心配しなくてもちゃんと入部届け出したから安心してくれ。

「これからよろしくな。真希人に遼平」

「やるって決めたからにはとことんやるぞ」


 妥協なんか許さない。限界まで付き合ってもらう。


「遼平もメガネくんも、とことん俺につき合ってもらうからな」

「あいよ!」

「はいっ! でもメガネくんって……」

「いくぜぇ!!」




 ーーと、意気込んで来たもの、このグラウンドにはジャージ姿の俺たち4人しかいなかった。


「どういうことだコラッ! クソイケメン! 誰もいねえじゃねえか!」

「野球部として練習するの来週からなんだよ、今はメンバーも揃ってないから自由参加って形になってって……」

「メンバーならいるだろ! 今っ! ここにっ! ナウっ!」

「落ち着けって……」


 落ち着いてられるか。どいつもこいつもやる気あんのか。


「おいメガネ!」

「はいっ!」

「すごい人たちがいるんじゃなかったのか? どこにいるんだおい!」

「いや、ですから今日はいないみたいですね……」

「”今日も”じゃあねえだろうな……!」

「いや、それはその……」


 まさか俺に嘘ついたんじゃねえだろうな。今からお前はメガネくんからメガネに降格だバカヤロウ。


「そもそも本当にすげえやつなのか? すごすぎるから練習に来なくても十分ってか、なめやがって……」 

「マッキー落ち着けって。とりあえず今日は俺たちだけで練習しようぜ」


 遼平が俺をなだめようとしてきた。クソイケメンとメガネは少し怯えてる。


「ったく、しょうがねえな……」


 遼平に野球の基礎を教えなきゃいけないからちょうど良かったのかもしれない。今はそう思い込んで納得するしかないな。


「そういやクソイケメン、監督もこないのか?」

「監督も来週から参加って言ってて……」


 俺の中で何かが切れた。もう怒髪天だよ。俺にサイヤ人の血が流れてたら確実に金髪になってるね。穏やかな心が激しい怒りで目覚めるよ。


「ちょっと行ってくる……」

「どこに?」

「決まってんだろ!」



 ーー5分後。


「袖を引っ張らないで! 大河くん!」


 無視だ無視。女監督がなんか言ってるけど知らん。


「シャツが伸びて胸が……下着が見えちゃいますから! ちゃんと行きますから引っ張らないでください!」


 聞こえねえ。とりあえず到着するまで引っ張るのを止めない。


「うわぁ……」

「あいつを怒らせたらやばそうだな」

「結構厄介だぞ」


 監督をここまで引張てきてようやく俺は掴んでた袖を放した。


「もうお嫁にいけません……」


 下着見られたくらいで嫁に行けないなら、同級生に裸見られてるしずかちゃんはどうなるんだよ。でも安心しろ、ちゃんと結婚してくれたやつはいたから。あやとりと射的しかできないポンコツだけど優しいやつだよ。


「指示をくれ監督」

「指示……ですか? なんの?」

「練習のに決まってんだろ」

「ヒィ!」


 何言ってんだこいつは。当たり前だろ。こいつ本当に監督なのか?


「マッキー、美玲ちゃん怯えてるって。とりあえず来てくれたんだから一旦許そうぜ、な?」

「そうだな……」


 少し強引だったけどちゃんと来てくれたからとりあえずいいだろ。遼平に免じて許してやる。


「じゃあ改めて監督、指示をくれ」

「はい。それは今勉強中です」

「勉強中か。わかっ……」


 いやいや、わからねえって。俺の聞き間違いか?


「今なんて……」

「ですから勉強中です。野球のルールや効率のいい練習方法とかその他いろいろ……」

「はぁ?」


 野球のルール? 練習方法? その他いろいろ勉強中? おかしいな、俺は間違ってなにも知らないけど野球やってる男の子が好きってだけで入部したとほざく新人マネージャーを連れてきたのか?


「安心してください! 勉強は得意なんです。先生ですから。それに大学も首席で卒業して……」

「なんなんだどいつもこいつも!! 監督がルール勉強してるってどういうことだぁぁぁぁぁぁ!!」


 頭がおかしくなりそうだった。いや、なっているかも。この女はなに勉強が得意ことを自慢してんだよ! 違うだろぉぉぉぉ!


「マッキー落ち着け、ヤバイのは俺でもわかるから」


 落ち着けるか。遼平でもわかるって相当だぞ。

 いったいこの野球部はどうなってんだ……



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