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異世界が来い!レベル∞のリトライ英雄譚  作者: RUIDO
レベル.6 ミトス
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7-3 レベル6の尋問

「アレはなんだ」

 灰色の部屋。そこには八人の人間がいる。

 テレビには舘林清二たてばやしせいじが用意したDVDの映像が流れている。

 テレビ画面を遮るように立つ石動玄太いするぎげんたが立っていた。

 その目は目の前に座る六人に向けられている。

「石動の旦那、あたしらにも何がなんだか」

 石動の問いかけに答えたのは金巻かねまきだ。まるで、頭から油でも被ったようなテカテカした額には、玉のような汗が浮き出ている。

「じゃあ、ゲームとはなんだ」

 困ったように眉根を顰めた金巻に石動はずぃと詰め寄った。

 金巻は救いを求めるように周囲に視線を走らせた。運悪く目が合ったのは部屋の後方に座っていた樹美鈴いつきみすずだった。

 石動にとって、美鈴は事件のすべての発端ともいえる人物だ。口をへの字に結んだ金巻から視線を逸らし、石動は美鈴に視線を向けた。

「この前話したでしょ!」

 ガタン、と音をたてて星宮灯里ほしみやあかりが立ち上がる。

「じゃあ、なんのためにお前たちはゲームに参加している」

 会話として成立しない対話。石動が求めているのは、彼が発する言葉よりもずっと先のこと。

 暗闇に向けて歩いているような感覚。手探りで出口へと歩を進める。

「わ、わた、私たちは選ばれたんです」

 懺悔するような声を挙げたのは横山だ。車いすに腰を落ち着けて、挙動不審な目の動き以外、彼はピンピンしているように見える。

「誰にだ」

 神、というフレーズが、その場にいる全員の頭をよぎった。

 美鈴の隣に座る高杉陽太たかすぎようたはちらりと星宮を見た。

 九三回の昨日訪れたはずの今日(エンディングループ)を抜けた陽太は病院で目が覚めた。

 警察官に見守られながら、姉の凛子りんこと母親の美由紀みゆきに泣きつかれた。

 しばらくしてから手錠をはめられた美鈴と再会を許されたが、一時的なものだった。

 すぐに二人は留置場へと送られた。まるで、凶悪犯のような扱いだった。

 それから数時間後、石動に呼び出され、会議室のような場所で大量のモンスターが映った動画を見せられた。

 始まりの蛇(ベルゼブブ)名前のない騎士(デュラハン)神を名乗れぬ少女(イレギュラー)、三人を先頭に黒いローブの修道士達が後に続き、後列には見たこともないようなモンスターがずらりと並んでいる。

 映し出された映像は画質が荒く、少女の顔は見えない。だが、その姿は神を名乗る少女(ゲームマスター)とうり二つだ。

 陽太がループの外(オフライン)で出会ったリリスを連想させた。

「神とは何だ。お前らが指している神とは、誰のことを言っていやがる」

 石動が乱暴に投げた言葉に陽太は視線を向けた。

 顔を耳まで真っ赤にしている姿は鬼のようだ。一番前に座っていた金巻が子豚のようにびくびくしているのが、後姿からもわかった。

「お前は神を知らんのか」

 枯れ葉がこすれるような声を響かせたのは更田ふけただった。

 しわくちゃの顔を歪めて笑っている。

 これは傑作だ、とばかりに更田は声を大きくした。

「おい、くそじじぃ。俺が心優しい犬のお巡りさんに見えるんか?」

 ギロリと石動は更田を睨み付けた。更田は笑いすぎたせいで、盛大にむせている。

「どちらかという迷子の子猫ちゃんかのう」

 更田はゲラゲラと笑った。石動が堪えるように拳を握る姿を見て、舘林が慌てて制した。

「頼むから教えてくれ。アレはここに来るのか」

 ようやっと本題へとたどり着いた。

 誰もがそれを理解した。そして、同時に確信した。

「・・・そうか」

 全員の表情を見て、石動は残念そうに言葉を零した。

 沈黙。

 どうしたらいいのか、石動は口を閉ざして思考する。

 地方の小さな警察署だ。装備は不十分。それ以前に拳銃をまともに発砲した経験を持った人間もいない。

 石動ですら訓練以外で引き金を引いたことはないのだ。自分自身ですら戦力になるとは思えない。

 応援を要請するか。いや、どうやって説明する。

 化け物たちは海上にいる。その目的地が主要都市でもなんでもない夢ケ丘市であると説明したところで、信じてもらえるのか。

 ましてや、その根拠がここにいる六人の銃刀法違反者。共通点もない未成年を含めた怪しい集団。

 解析不能の銃器を所持した人間たちをどう信頼させる。神だなんだと喚き散らすカルト集団との繋がりも見えない。

「舘林、こいつらぶち込んどけ」

 考えることを放棄した。石動はふらついた足取りで入口へと向かった。

 ガタン、と音を立てて立ち上がったのは金巻だ。

「石動の旦那、あたしもお役に立てるかもしれませんよ?」

 なんとしても警察のお世話になることは避けたいのだろう。金巻は必要以上の汗を分泌させた。

「あたしの指輪は炎を操れるんですよ!弾なんかもいらないですから、あたしがいれば、勝てるとまでは言いませんが、足を引っ張るような真似はしませんよ!」

 石動は数秒間、金巻を見つめた。だが、すぐに視線を逸らし、別の人物へと視線を走らせた。

 他の者の目にも同じような焦りを読み取ったのだろう。石動はあきれたように吐息をついた。

「全員ぶち込め」

 ダンナァァアァ!金巻の悲痛な叫びが響き渡る。石動の背中を追いかけようとした金巻を舘林が道を塞ぐ。

 やがて、複数の制服警官が現れ、彼らを次々と廊下へと連れ出した。

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