6-6 レベル5の失われた明日へ
一週間が経ち、グランドクエストを行った日付へと変わった。
グランドクエスト、とは表示されなかった。
次の標的と表示されたのは、暗闇に燃える竜の一匹だけだ。
「これなら何とかなるな」
藤堂大悟はふふんと上機嫌に鼻を鳴らした。その姿に安堵したように舘林清二も、うっすらと笑みを浮かべた。
高杉陽太だけが、難しい表情を浮かべていた。
「藤堂先生もいるんだ。大丈夫だよ」
一番経験が浅いにも関わらず、舘林は大人びた口調で言った。やはりどれだけ死を体験したとしても、大人からしてみれば、子供は子供なのだ。
小難しい表情を浮かべていれば、根拠のない無責任な言葉を発する。それと比べれば、藤堂の方が愚かすぎるほどに素直だ。
陽太は安心した、と目だけで伝えると舘林は満足そうに微笑んだ。
そう簡単に警戒心を解くわけにはいかない。
「ガキはガキらしくバカみたいに笑ってろ」
すぐに眉間に皺を寄せた陽太を見て、藤堂はバカみたいに笑った。
藤堂は自信満々だ。確かに藤堂が持つ大剣大五郎丸は驚異的な破壊力を持っている。だが、それは鈍器であって、刃物ではない。
一撃で仕留める。あるいは、行動不能にする効果がなければ、隙がデカイだけのまさしくナマクラである。
舘林の拳銃を元にした武器も未知数だ。舘林自身が戦いに慣れているようにも見えない。戦力として計算するには、頼りなさすぎる。
自分を棚に上げているが、陽太の武器も頼りがいがあるものではない。
夜を這う蜥蜴の肌ですら、傷つけることは出来なかった。鈍器としても刃物としても使えない。
改めて、月野卓郎の存在のありがたさを感じる。
彼の意味不明な呪文はさておき、その魔力は絶大だった。自身を無限の砲撃などと名乗るだけはある。
今回のメンツでは攻撃の要と呼べる人物がいない。
「そろそろだな」
時計の針は一三時を指している。グランドクエストの時点では、もうじき暗闇に燃える竜との戦いが始まる。
グランドクエストと酷似したクエストであるのなら、同じ時間に闘いが始まると藤堂は踏んでいる。
藤堂はよっこらせっと立ち上がり、壁に立てかけてあった大五郎丸をひっつかむ。
それに倣って舘林もまた拳銃の収められたホルダーを体に巻き付ける。
新しいパーティでの初陣だ。陽太もまた籠手を嵌め、鞘に収められた剣を掴む。
「ぱぱっと終わらせて、俺たちの時間に戻るぞ」
舘林の家を出て、藤堂は言う。部屋に鍵を掛けていた舘林が遅れて二人の後を追いかけてきた。
疑問符を浮かべる舘林に陽太は時間軸の収束について話した。
他のプレイヤーと合流する着地点。それぞれのプレイヤーが同日に行われたクエストをクリアすると翌日に同じ時間軸へと結びつく。
昨日訪れたはずの今日を抜ければ、失われた明日を取り戻せる。
三人はそう信じて、歩を進めた。




