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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
潜入! 【八月八日 木曜日〜八月九日 金曜日】
95/100

17

 その刹那、膨大な質量の光があたりを満たした。

 光にも圧力があるんだ、僕は初めて知った。胸元のあたりを押しのける感覚。

 僕が掴んでいた鏡から、青白い光があふれていた。

 目を細めて鏡を覗きこむ。水面がさざめくように、鏡の表面は揺らめいていた。そしてその向こうには……。


「黒猫!」


 光る鏡に映しだされていたのは、黒猫の背中だった。

 まだ捕まってなかったんだ!

 だけど、安堵したのもつかの間。なんとか逃げ続けているものの、どうやら黒猫は西園寺邸の応接間で追いつめられているみたいだ。

 膝をついて肩を上下させている黒猫は西園寺と高遠さん、そしてたくさんの警備員に囲まれていた。絶体絶命じゃないか!

 僕は波打つ鏡面に手を伸ばした。ヌルリとした感触、そして僕の手が鏡を通過する。

 僕は黒猫に向かってもう一度叫んだ。


「黒猫!」


 僕の声が届いたのか、黒猫は弱々しく後ろを振りかえった。


「お前……」


 翳っていた黒猫の目に、光が戻る。僕の姿を認め、信じられないといった様子だ。

 僕は黒猫に思いっきり手を伸ばした。


「い、一体どうなっているのです!」


 鏡の向こうの西園寺が慌てふためいていた。何事にも動じない、あの高遠さんでさえ呆然と突っ立っている。

 僕自身も何がどうなっているのか聞きたいところだけど……わかっていたのは、あの手を掴めば黒猫を助けられるっていうことだけだ。

 黒猫は必死で僕の手を掴もうと、力を振り絞る。僕はさらに鏡に手を突っこんだ。


「させませんわ!」


 西園寺が黒猫目がけて、駆けよる。

 僕が黒猫を捕まえるのが先か、西園寺が黒猫を捕まえるのが先か。

 もうちょっとで黒猫の指先が触れる……あと二センチ、一センチ……!

 西園寺と黒猫の距離も縮まる。一瞬のことなのに、何分もかかっているように感じた。


「く……届けぇっ!」

「逃がしませんわ!」


 僕と西園寺が黒猫に触れたのは同時だった。

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