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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
潜入! 【八月八日 木曜日〜八月九日 金曜日】
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14

 茶色の瞳に、ひどい顔をした僕が映る。


「なあ、お前、瞳のことどう思ってるんだ?」

「こ……こんな時に何を言ってるんだよ!」

「最初はさえない奴だと思ってたけど、お前、いいやつだよな」


 黒猫がくくく、と笑った。笑うだけでも傷が痛むんだろう。笑った後、痛みを耐えるかのように短く息を止めた。


「私、わかってたんだ。お前はきっと共犯者になるって。瞳はさ、お前の記憶を消したくなかったんだ。お前に忘れてほしくなかったんだ」


 警備員が僕たちを捕まえようとにじり寄ってくる。懐中電灯の灯りがちらついて、集中できない。


「共犯者になることが条件って言ったけど、途中からそんなこと、どうでもよくなっていた。私たちの力を……私の大切な相棒を理解してくれるやつが味方になってくれるなら、それでよかった」


 黒猫は僕の手をぎゅっと握った。


「お前を盾にする気なんてないよ。瞳にはお前が必要だって、わかってるから」

「何を……!」


 黒猫の手の平が熱くなる。光の粒が……僕の体に集まり始めた。


「だ、だめだよ! そんなのだめだ!」

「瞳の側に、いてやって」


 どこか寂しそうな、それでいてとても穏やかな顔だった。黒猫はそのまま目を閉じた。


「この力、人間で成功したことないんだよな。失敗したら……ごめん」


 僕の体が空に溶ける。僕の存在が薄れていく。五感が失われ、思考さえも曖昧になる。しっかりしていないと意識を手放してしまいそうだ。

 僕たちの異変を見て、西園寺たちが何か叫んでいた。だけど、何を言ってるんだろう。僕には聞こえなかった。

 ぼやける視界の中、黒猫の口が動いた。声は聞こえなかったけど、きっと黒猫はこう言ったんだ……。


「――座標交換(リプレイス)

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