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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
潜入! 【八月八日 木曜日〜八月九日 金曜日】
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10

 高遠さんの声を聞いた警備員たちが、続々と集まってくる。えっと……まずいよね、これ。


「よそ見するな!」


 塀まであと二十メートル……十メートル……。このまま逃げ切れる! そう思った時だった。


「そこまでだ!」

「きゃっ……!」


 木の陰から警備員の巨躯が飛び出し、黒猫の体に体当たりした。大男の体当たりに耐えきれず、黒猫の体は地面に倒れこんだ。


「さっきは……よくも!」


 侵入した時に倒した警備員だ!

 少し足元がおぼつかないけど、もうはっきりと目を覚ましている。しっかりと縛ったはずだったのに、自力で拘束を解いたみたいだ。

 倒れた黒猫に、警備員がすかさず襲いかかる。黒猫は吹き飛ばされた衝撃で体を強く打ちつけたのか、地面から体を起こせずにいた。


「黒猫!」


 僕は右足で踏みこみ、警備員との距離を詰める。両手を地につけ体を低くし、警備員の足を払った。


「貴様!」

「ごめんなさい!」


 全力で謝罪しながら、僕はぐらつく警備員の首元に手刀を打ちこんだ。


「むっ……」


 ドサリと警備員は地面に崩れ落ち、再び気を失った。仕方ないとはいえ、二度も叩きのめすのは申し訳ない気がした。本当にごめんなさい。悪いのは僕たちなのにね。

 黒猫は僕の動きに驚いたように、目を丸くしていた。ペタリと地面に座りこみ、腰を抜かしている。


「一応、僕も空手やってたんだ。もうずいぶん昔のことだよ。……戦わないって決めてたんだけどね」


 僕は苦笑しながら、黒猫の体を引っ張り起こした。蚊の鳴くような声で、黒猫はありがとうと呟く。

 僕の方こそ、いつもありがとうだよ。僕は足手まといになってばかりだったから。

 僕に起こされ、立ち上がった黒猫は、僕の顔……ではなく、その向こう側を睨んでいた。僕も黒猫の視線の先を追いかける。


「やっと追いつきましてよ」


 息が止まりそうになった。

 今の出来事で、西園寺は僕たちのすぐ後ろまで迫っていた。塀に設置された照明が一斉に僕たちの方を照らす。こんなの、塀になかったはずなのに……。

 照明の数はどんどん増えていった。どうやら平常時には隠されていて、緊急時に現れる仕組みのようだ。もうどこにも隠れようがなかった。


「どうやら警備員では太刀打ちできないお相手のようですわね。ならば、わたくし自ら手を下して差し上げましょう!」


 その言葉を言い終わるやいなや、西園寺は黒猫に襲いかかる。


「あぶな……っ!」


 黒猫に加勢しようとしたものの、予想外の人物に行く手を阻まれた。

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