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「確か……この辺りのはずなんだけど。隠し部屋がある場所」
黒猫は本棚に近寄った。ぐるりと部屋を見渡してみたけど、それらしきものは見当たらない。さっぱり隠し部屋の検討がつかないせいか、西園寺はこの屋敷にいないとわかっていても焦りが大きくなっていく。
黒猫の動きもいつもの冷静な動きではなくなっていた。微妙にせわしない。
「ない……この辺りのはずなのに……」
黒猫が探索の手を止めた。
「落ち着いて……冷静にならなきゃ」
そう言いながら、黒猫は下唇をきゅっと噛む。
なんとか力になりたい。そう思った僕は透視のシーンを必死で思い出してみる。あの時と今、違うところはどこだろう?
僕は透視をしたあの時、西園寺がいた位置に立ってみた。
あの日の西園寺の行動を真似てみよう。
本棚の前からベッドサイドに行き、サイドテーブルの水差を手に取る。ベッドに飛びのるわけには行かなかったから、そのままベッドの横に立った。本当はダイブして色々堪能したいのは山々ですが。
それから西園寺はどうしたのか。おばあさまと呟いて、写真立てを見た……。
「ない」
「え?」
そこにあるはずのものがなかった。
「写真がない……」
正確には、写真立ての中の写真がすりかわっていた。あの時、この写真立てには、西園寺のおばあさんが写ったものが飾られていたはず。
だけど、今、そこには清流を写した風景写真が飾られていた。
「写真がすりかわってる……? もしかしたらこれが鍵なのかな?」
「本当だ。よし、すりかわる前の写真を手分けして探すぞ」
黒猫は西園寺の机の中を漁り始めた。
写真が隠されていそうな場所……特にあの写真は西園寺にとって大切なもののはずだ。机の中に杜撰に突っ込んで置いたりするかな?
大切にしまっておける場所、かつ怪しまれない場所。
僕は本棚に歩みより、一冊の本を取り出した。表紙には英字でALBUMと書かれていた。
「アルバム?」
背後から黒猫が僕の手元を覗きこんできた。僕は表紙を開き、一枚一枚ページをめくる。最初のページにあったのは生まれたばかりの西園寺の写真だ。
幼児期、小学生、中学生……アルバムの中の西園寺は次第に成長していく。
「これ……!」
アルバムの最後のページ。そこには大切にしまわれた、おばあさんの写真があった。