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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
透視! 【八月七日 水曜日】
76/100

9

 *****


「優人くん、心配かけてごめんね。もう元気。大丈夫だよ」


 大辻にやってきた瞳は開口一番そう言った。なんとなくまだ顔色が優れないような気はするけど、ちゃんと休めたのか、足取りはしっかりとしていた。


 頭の中から西園寺邸の間取りが消えてしまわないうちに、潜入計画の最終調整をしようと言い出したのは瞳だった。

 玉井は一日休むように言ったけど、頑として瞳は聞き入れなかった。どのルートで潜入するのか、どういった方法でターゲットを盗み出すのかを話し合うんだって。


 辻屋に着くと、玉井はエプロン姿で店の手伝いをしていた。


「今ちょうど三時で忙しい時間帯なんだ。アイスクリームごちそうするよ、奥で食べながら待ってて」

「やった!」


 指定席についた僕らに、玉井がアイスクリームを運んできてくれた。瞳はそれをおいしそうに頬張った。ついさっきまでぶっ倒れていた人間の食欲とは思えない。


「優人くん、いらないの? じゃああたしがもらうね!」

「あ、あ~~~!」


 僕の許可も得ず、瞳は僕のアイスクリームをひょいと手に取った。

 食べ過ぎはよくない、うん。病み上がりの人はお粥でも食べてればいいんだよ、そうだそうだ。

 僕はスプーンを握りしめ、瞳のアイスクリームを奪いかえそうと戦闘態勢に入る。


「あんたたち、いつもうちの店でそんな調子なのか? よく飽きないな。アイスクリームくらいいくらでも出してあげるから、そんな意地汚いことするな、瞳」


 玉井が新しいアイスクリームの皿を持ってやってきた。エプロンはいつの間にか脱いでいた。


「店の方、落ち着いたから。しばらくは父さんだとばあちゃんだけで店回せそうだ。私の手伝いはもういいってさ」


 玉井は僕たちのテーブルに腰をおろし、瞳と僕がアイスクリームを食べ終わるのを待ってくれた。二人の器からアイスがすっかり消えてなくなった後、僕たちは例の秘密部屋へ向かった。

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