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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
透視! 【八月七日 水曜日】
72/100

5

 二階はどうやら西園寺の家族たちが実際に生活している部屋ばかりのようだ。五部屋あるうちの三部屋は、使われていない客室、一部屋は書庫だった。


 そして最後の一部屋は西園寺の両親の部屋。西園寺の母親がロッキングチェアに座りながら本を読んでいた。

 ロッキングチェアなんてめったに見たことないけど、そこに座っている西園寺の母親の姿はなんだかサマになっていた。

 まだ西園寺の父親は帰宅していないのか、その姿は見当たらない。大企業のトップともなると、仕事は昼夜を問わないに違いない。


 壁際の棚に、西園寺家の家族写真が飾られていた。

 西園寺の両親、間には西園寺ありすがにこやかに笑顔を向けている。三人の後ろには執事の高遠や他の執事、メイドも並んで写っていた。

 西園寺の父親は、なんとなくだけど、花野に似ている気がした。


 西園寺の両親の部屋を後にし、今度は大階段から向かって左側を回る。

 グランドピアノのある音楽室、生花が飾られた和室や茶室なんかもあった。西園寺って本当のお嬢様なんだな……と今更ながら思う。


 残すところあと一部屋、一番南側にある角部屋だけだ。ここが西園寺ありすの部屋に違いない。


 茶色い木製の扉をスルリと通りぬける。そこにあったのは……いかにもお嬢様な部屋だった。

 天蓋つきのベッド、白を基調としたロココ調の家具。このイングリッシュハウスとはちぐはぐな内装だ。

 ベッドサイドにあるスズランを模したスタンドだけが、この部屋を唯一照らしていた。


 明かりはついているのに、誰もいないのかな? 壁にかけてある制服や空手の道着から、ここが西園寺の部屋だということは確かだ。

 てっきり寝ているのかと思ったけど、フリフリのレースがあしらわれたベットには誰も横たわっていない。こんな時間にお嬢様がむやみやたらに出歩くとも思えない。かと言って屋敷の中はくまなく探索しつくしたはずだし。


 この隙に……と西園寺の部屋を細部まで観察する。過去視の時のように物に触れることはできないみたいだ。

 見える範囲は一通りざっと見たものの……花野の懐中時計らしいものは見当たらなかった。


 なにしろここは大豪邸。もしかしたら隠し部屋がどこかに隠されているのかもしれない。ただ、部屋に触れることも叶わない身では、これ以上手の打ち様もなかった。

 もたもたしている時間はなかった。瞳の体力が限界にきたら、透視は打ち切りだ。

 この部屋に留まるより、他にめぼしいところを探した方が得策かもしれない。

 僕たちは来た時と同じく、部屋の白い扉を通り抜けようとした……。

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