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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
透視! 【八月七日 水曜日】
71/100

4

 僕は西園寺邸の真上にいた。


 暗くて視界が悪いにも関わらず、西園寺邸の広大さはよくわかった。学園の敷地が三つは入りそうな広さ……そう、とにかく広い。


 敷地のほとんどを占める庭は、かなり丁寧に手入れされている。イギリス人である母親の趣味だろうか、几帳面に整えられたローズガーデンだ。その庭の中心には噴水がある。

 噴水から離れたところには小さなガラス屋根付きの休憩所。可愛らしい、白いテーブルセットが備えてある。

 きっと天気がいい日は、執事に淹れてもらった紅茶でも飲みながら、優雅に過ごすんだろうな。そこでお茶会をする西園寺と高遠さんの姿が目に浮かぶ。


 屋敷の正面は、まるで高級ホテルのような造りになっている。物々しい大きな門からは石畳みの道が敷かれていて、入り口の前には五、六台は車が出入りできるであろう、ゆったりとしたスペースが広がっていた。


 もちろん、大豪邸を警備するための警備員が、門から等間隔に配備されている。それとはまた別に、巡回する警備員もいるみたい。ひっそりとした敷地内で、規則的に歩き回っていた。

 しばらく上空から敷地を見渡すと、正面玄関へと視界が移動した。


 玄関にも二人、警備員が立っている。監視の目を光らせる警備員の前に来ると、見つかったような気がして落ち着かなかった。


 屋敷は十九世紀イギリスの古き良きカントリー調といったところかな。柔らかなベージュの煉瓦造りで、屋根は暗い赤色だ。

 壁には青々とした蔦がところどころ絡みついている。大きな四角い窓がいくつもあり、開放的な雰囲気だ。

 このデザイン、日本に嫁いできた西園寺の母親が、故郷を感じられるようにってことかな。

 そのまま警備員の脇をすり抜け、邸内へと足を踏み入れた。


 ワインレッドの絨毯が敷かれただだっ広いホールを抜け、一つ一つの部屋を見て回る。とりあえず大まかな部屋の配置を覚えておく必要がありそうだ。


 一階は応接間、リビング、食堂、キッチンそして従業員のスタッフルーム。

 応接間には現西園寺コーポレーション会長である、西園寺康之の肖像画がかけてあった。大きな暖炉の前にはこれまた大きなソファ。

 暖炉に肖像画なんていかにもお金持ちっぽいよね。

 食堂の真ん中には白いクロスがかかった長いテーブル。端から端まで五メートルはありそうだ。テーブルの上には金の燭台が三つ置かれてあった。

 西園寺には兄妹がいないって言ってたよね。三人家族でこのテーブルは……なんだか味気ない食事になりそう。それも庶民の感覚なのかな。


 一階はこんなところだ。

 僕たちはホールに戻り、中央の大階段を上がった。上った先は左右に廊下が分かれていた。

 まずは向かって右方面を探索することにする。


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