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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
透視! 【八月七日 水曜日】
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1

 夜の神社は少し不気味だ。


 境内までの参道を一人でトボトボと歩く。纏わりつく暑さの熱帯夜。風はほとんどなかったけど、時たま肌をザラリと撫でつけるような風が吹いた。


 参道を覆う木々がそよぐ。単なる葉擦れの音とわかっていても、四方八方をガサガサとした音に取り囲まれると、得体の知れないものに見張られているようで不安になる。僕はブルッと身震いした。どうしてこんな夜更けに神社なんかに……思わず玉井に愚痴を言いたくなる。


 高遠さんに送ってもらった直後、玉井から連絡があった。

 瞳の力を使って、西園寺邸を透視することになったんだって。

 過去視の時のように、触れたらなんとかなる、というわけではないらしい。それなりに条件が整っていないと現在を透視することは難しいんだとかなんとか……まあ、僕にはそこのところ、よくわからないんだけどね。

 不参加は認められないって、やっぱり玉井は強引だ。


 ここまでいろいろなものを見てきて、僕は誰が正しいのか分からなくなっていた。いや、正解なんてないのかもしれない。


 あの懐中時計が西園寺にとってどう大切なのかは知らない。

 でも、高遠さんから西園寺の過去を聞いて、僕は思ったんだ。きっとあの時計には西園寺の思いもこもっているんだって。ぐるぐると思考が堂々巡りする。


 僕はやや混乱しながら、白河神社の境内に足を踏みいれた。案の定、正面の本殿には先客がいた。ワンピースを着ているせいか、幽霊みたいに見える。洋服がチェック柄じゃなければ、絶対僕から声なんてかけないね。


「こんばんは、玉井」


 玉井はチラリと僕を見ると、またすぐ目を伏せた。


「瞳は?」

「まだきてない」


 深夜零時に本殿前に集合ということになっていた。ぶっきらぼうな玉井の一言の後、無言の時間が流れる。僕はソワソワしながら腕時計を何度も見返した。


「私が頼んでおいたもの、持ってきてるんだろうな?」

「うん、見つけたよ。ちゃんと持ってきてる」


 ほらね……と玉井にそれを見せようとした時、ちょうど零時になった。

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