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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
親睦! 【八月四日 日曜日】
38/100

6

 西園寺のキラキラ頭が遠ざかり、僕たちはホッと胸を撫でおろした。西園寺の姿が完全に見えなくなってから、玉井は肘で僕の脇腹を小突いた。


「お前の妹、おかしいんじゃないか⁉ いきなり蹴りいれにくるなんてありえない!」


 玉井は激怒していた。

 ……ごもっともです。今回のことは完全に初美が悪い。僕は初美の代わりに玉井に謝った。


「初美のやつ、いつもそうなんだ。思いこんだら聞く耳なしで……。僕が後できつく言っておく。今回は僕に免じて許してやってよ、お願い」


 ちょっと上目づかい。こうしたら許してあげようって気になってくれるかな。……え、ならない?


「気持ちの悪い顔するな。僕に免じてって。お前なあ……」

「なっちゃん、あたしからもお願い。誤解が解けたらきっと初美ちゃんと仲良くできると思うんだ。今回は確かに初美ちゃんがよくなかったと思うけど……許してあげて?」


 瞳の言葉に、唇を尖らせて気難しそうな顔をする玉井。やっぱり瞳には弱いのかな。怒りのボルテージが下がっていくのがわかる。


「ん~、まあ許してやらないとは言ってないけど……」


 瞳は玉井にすり寄り、手を握ってこっそりと耳打ちした。


「今日のランチ、優人くんにおごらせるから、ね?」


 ちゃんと聞こえてるぞ~。おごらないよ! と言いたいところだけど、自分の妹のしでかしたことを思うと、そうも言えない。夏休みが始まったばかりなのに……僕の財政難はまだまだ続きそう。


「わかったよ、おごる、ごちそうするよ。だから機嫌なおしてよ」


 僕は両手を広げ、降参のポーズ。その一言で玉井の表情は真夏の太陽のごとく、一気に明るくなった。


「本当に? 何でも食べていいんだな?」


 玉井は小躍りしながら瞳の手をぐいぐい引っぱった。さっきまでの不機嫌が信じられないくらい、コロリと態度が変わる。


「瞳、早く着替えよう! もうそろそろお昼時だし!」


 瞳は玉井にズルズルと引きずられていた。もっと水着姿を拝みたかったんだけど……ちょっとだけでもありがたいよね。眼福!


「優人くん、着替えてくるから待っててね! それと……」


 次の瞬間、瞳の言葉が全僕を震撼させた。


「なっちゃん、結構食いしん坊さんだから~!」


 僕は慌てて財布を取りだし、中身を確認する羽目になった。

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