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西園寺のキラキラ頭が遠ざかり、僕たちはホッと胸を撫でおろした。西園寺の姿が完全に見えなくなってから、玉井は肘で僕の脇腹を小突いた。
「お前の妹、おかしいんじゃないか⁉ いきなり蹴りいれにくるなんてありえない!」
玉井は激怒していた。
……ごもっともです。今回のことは完全に初美が悪い。僕は初美の代わりに玉井に謝った。
「初美のやつ、いつもそうなんだ。思いこんだら聞く耳なしで……。僕が後できつく言っておく。今回は僕に免じて許してやってよ、お願い」
ちょっと上目づかい。こうしたら許してあげようって気になってくれるかな。……え、ならない?
「気持ちの悪い顔するな。僕に免じてって。お前なあ……」
「なっちゃん、あたしからもお願い。誤解が解けたらきっと初美ちゃんと仲良くできると思うんだ。今回は確かに初美ちゃんがよくなかったと思うけど……許してあげて?」
瞳の言葉に、唇を尖らせて気難しそうな顔をする玉井。やっぱり瞳には弱いのかな。怒りのボルテージが下がっていくのがわかる。
「ん~、まあ許してやらないとは言ってないけど……」
瞳は玉井にすり寄り、手を握ってこっそりと耳打ちした。
「今日のランチ、優人くんにおごらせるから、ね?」
ちゃんと聞こえてるぞ~。おごらないよ! と言いたいところだけど、自分の妹のしでかしたことを思うと、そうも言えない。夏休みが始まったばかりなのに……僕の財政難はまだまだ続きそう。
「わかったよ、おごる、ごちそうするよ。だから機嫌なおしてよ」
僕は両手を広げ、降参のポーズ。その一言で玉井の表情は真夏の太陽のごとく、一気に明るくなった。
「本当に? 何でも食べていいんだな?」
玉井は小躍りしながら瞳の手をぐいぐい引っぱった。さっきまでの不機嫌が信じられないくらい、コロリと態度が変わる。
「瞳、早く着替えよう! もうそろそろお昼時だし!」
瞳は玉井にズルズルと引きずられていた。もっと水着姿を拝みたかったんだけど……ちょっとだけでもありがたいよね。眼福!
「優人くん、着替えてくるから待っててね! それと……」
次の瞬間、瞳の言葉が全僕を震撼させた。
「なっちゃん、結構食いしん坊さんだから~!」
僕は慌てて財布を取りだし、中身を確認する羽目になった。