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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
親睦! 【八月四日 日曜日】
37/100

5

 おおっ……お嬢様!ナイスでございます!


「部長っ……!」

「あなたに勝ち目はありませんことよ、初美。それにほかのお客様のご迷惑になっているでしょう?」


 西園寺が周囲の人だかりを指さした。初美はハッとしたように目を見開くと、そのままバツが悪そうにうつむいてしまった。


「皆様、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでしたわ。お買い物にお戻りくださいませ」


 西園寺は腰に両手をあて、高らかに言い放った。さすが、お嬢様、偉そうなポーズが様になってます。

 西園寺はシッシッとギャラリーを追い払うと、うなだれている初美に厳しい言葉を投げかけた。


「最初の一撃で攻撃を防がれたとき、あなたは相手の力量を推しはかるべきでしたわ。あなただって弱くはないのですから。そのあなたの不意打ちをやすやすと見抜くんですもの。この方も相当の手練てだれということですわ」

「部長……」


 論点が間違っている気がするのは僕だけ? ここは他人に迷惑かけたことをいさめるべきだと思うんだけど……ついでに言うと、僕にもかなり迷惑かかってるよ。お嬢様っていうのは往々にしてずれてるものなのかな。


「さあ、着替えて残りの買い物を済ませましょう。まだ買うものがたくさん残っているのではなくて?」


 西園寺は初美の顔を覗きこみ、優しく言った。初美は涙ぐんでいるのか、手でぐいっと目のあたりをこすった。それから初美が顔を上げる。その顔に浮かんでいたのはヒマワリにも負けない、満開の笑顔だ。


「そうですね、花火も買いましょうよ! すっごくでっかいやつ!」


 初美は指を折りながら、あれもこれも買わなきゃ……とまたもや張り切りモード。

 切り替えの早いやつ……まあそれが初美のいいところでもあるんだけど。僕は腕を組みながらう~んとうなった。


 初美と西園寺が自分たちの試着室へと帰ろうとしたその時。ああそうでしたわ、と西園寺が振りかえった。初美が暴れた後とあって、僕たちはビクッと体をこわばらせる。お手柔らかにお願いします。


「玉井さん、とおっしゃりましたか? ぜひ、どこかで一度お手合わせ願いたいものですわ。では皆様、ごきげんよう」


 玉井は体を硬直させる。

 本能的に西園寺は危険だと感じとったのかもしれない。西園寺に微笑みかえそうとしているけど、その顔は引きつっていた。……玉井、その笑顔はむしろ怖い!

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