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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
親睦! 【八月四日 日曜日】
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2

 見回すとあたりは人だらけだった。最近流行りの店が出店するとあって、オープン前から話題になっていただけはある。

 特設会場も若い女性客だけでなく、カップルや親子連れでにぎわっていた。この近くには海水浴場もあって、たいてい地元民はそこで夏を過ごす。

 僕だって夏に海くらい行ったことはある。だけど、一人で行くと、楽しいはずの海が……なんだかちょっと悲しくみえるんだよね。全部爆発しちゃえばいいのにって思うんだ。なんでだろう。


 ……なかなか二人とも出てこないなぁ。僕はポケットから携帯電話を取りだし、画面を見た。二人が試着室に入ってからもう十五分が経とうとしていた。


「あれ、お兄ちゃん?」


 ふいに後ろから声をかけられる。そういえば、こいつも買い物に出かけるって言ってたっけ。


「初美……と西園寺」

「ご機嫌よう、初美のごみお兄様。こんなところまで妹のストーキングですか」


 相変わらずです、お嬢様。初美に近寄る男は兄といえども容赦がない。……って!


「うぁ……っ!」


 初美と西園寺の姿を見て、僕はこの上なく間抜けな声をあげた。今までの人生で、こんな素っ頓狂な声は出したことないってくらい。

 よりによって、どうしてそんな水着姿の時に声かけるんですか! ご褒美ですか? ごみお兄様にささやかなご褒美ですか⁉

 僕の様子を察して、西園寺は雪女のような冷酷極まりない笑みを浮かべた。


「このごみ虫が、初美の水着姿を見て欲情するなんて。社会的に抹殺して差し上げましょうか」


 西園寺はその豊満な胸を反らせて、初美の前に立ちふさがった。

 西園寺の財力をもってすれば社会的抹殺なんてたやすいもの。お願いですから、これ以上僕の存在を否定しないでください、くせになりそうです!

 やっぱり超がつくほどのお嬢様だと、発育にもその差が出るのだろうか。 西園寺の弾力的な体にシンプルな黒のビキニがよく似合っていた。胸元は金色のリングでとめられていて、胸の谷間が覗いている。むちむちに弾けそうな巨峰みたい。


「お兄ちゃんこそこんなところで何してるの? それよりさ、これ海に着ていこうと思うんだけど、似合う~?」


 西園寺の後ろから初美がひょっこり顔を出した。

 初美は青と白のストライプ柄のビキニを選んだみたい。初美も西園寺に負けず劣らずなかなかのスタイル。西園寺がハリのある体つきである一方、初美の体つきは柔らかさ重視といったところかな。お皿の上で揺れるプリン、そんな感じ。

 食べ物で例えるっていうのは重要だよね。性欲は食欲とつながってるっていうし。


「そこの変態。焦って紳士ぶっても無駄だぞ。……冷静に分析してるのバレてるから」

「ふふふ、優人くんだって男の子だもんね~、女の子が水着姿で立ってたら見ちゃうよね」


 いつの間にか僕の背後に試着を終えた瞳と玉井が立っていた。

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