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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
親睦! 【八月四日 日曜日】
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1

『どうせ優人くん、明日ヒマだよね、親睦を深めるってことで、三人で出かけようよ。なっちゃんも行こうよ!』


 一仕事終え、報告に帰った黒猫と僕に瞳が言った。

 え、休日なし? けっこう疲れてるんだけどなぁ。そして、どうして当然のように僕はヒマだと思われてるの?


『わかった。明日だな』


 って、黒猫さんオッケーしちゃうんですか! 少しは休ませろ! って言ってくれるものだと思ってたのに。黒猫は瞳に甘いんだから。


『……わかりました、行きます』


 ……今の僕は二人に逆らうことなんてできないんだ。


 *****


「親睦会って……これのことなのかなぁ……なんて」


 瞳と玉井が振りかえる。

 でも、僕を見たのはほんの一瞬のこと。僕の言葉が聞こえなかったのか、あるいは聞こえているのに無視しちゃってる?

 二人とも自分たちの眼前に広がっているきらびやかな水着を手に、ああでもないこうでもないと悩ましげ。


「……僕……荷物持ちってやつだよね?」


 本来なら今日、初美の買い物に付き合う約束をしていたんだ。

 昨日の晩の初美の怒り様ったら……怒髪天を衝くってのはまさにこのことっていう感じ。

 うっかり初美のことを忘れて、瞳の誘いに乗った僕が悪いんだけどね。自業自得ってやつ。

 とにかく跪き、土下座して、初美様の靴を舐めんばかりの勢いで謝り倒し、お土産に「ふわとろ生ぷりん」を買うという条件でなんとか許してもらった。もてる男はつらいんです。

 そういうわけで僕たち三人は、最近できたばかりの大型ショッピングモールに来ている。

 でも、親睦を深めよう! と言っていた割にちっとも親睦が深まらない。

 モールの入り口で二人と落ち合ってから、雑貨屋で買い物をし、さらに次はアクセサリーショップで買い物をし……。

 今度こそ親睦を深めるために僕も仲間に入れてくれるんだよね、と思いきや、特設会場の水着を見て、二人で大はしゃぎしているところだ。もちろん僕以外の二人の親密度はガンガン上昇中。


「優人くんはどんな水着が好みなの?」


 瞳さん、急にボール投げてくるくせ、どうにかした方がいいよ。しかも剛速球。言葉のキャッチボールっていうのはねぇ……。

 あ、そうそう、僕の水着の好みは露出が多いやつかな。参考までに。


「瞳、変態にそんな質問をするな。孕まされるぞ」

「誰が変態だ! っていうか人聞きの悪いことをサラッと言わないで!」


 瞳が僕と玉井の会話を聞いてくすくすと笑う。


「なっちゃんも優人くんも、なんだかんだ言って仲良しさんだね」

「そ、そうかな?」

「だ、誰がこんな変態なんかと!」


 お前も否定しろ、と玉井が僕の足を思い切り踏んづけた。


「~~~っ!」


 今の一撃効きました。悶絶する僕を見て、玉井は知らん顔だ。


「あたし、水着の試着してくるね、なっちゃんも行こうよ!」

「瞳、待ってよ! おい、変態、間違っても覗くなよ」

「覗かないよ!」


 どれだけ人を変態呼ばわりするつもり? 僕はこんなに紳士的だっていうのに……。せめて変態の後に紳士をつけてほしいな。変態紳士。うん、なかなかいい響き。

 僕はあらぬ疑いをかけられないように、試着室から少し離れたところで待つことにした。

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