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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
秘密! 【八月二日 金曜日】
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1

 あれから僕には選択を決定するため、五日間の猶予が与えられた。

 一晩だけじゃ結論は出なかった。瞳のことを忘れるのは嫌だったけど、もう一つの選択肢もハードな内容だったからだ。

 瞳は僕に共犯者になることを要求してきた。危険な目に遭う二人の剣となり盾となれ、そういうことらしい。


 身代わり、おとり、生贄、スケープゴート。

 要するに、自分たちの存在を隠すための道具に……したいんだってさ。


 *****


『本日、都合により休業します。   店主』


 辻屋の前にはそんな張り紙が張ってある。でもそんなことはお構いなし。僕はそのまま店の扉を開けた。


「あ、きたきた~。優人くん、おはよう~!」

「遅い。いつまで待たせる気だ」


 もうすでに先客が来ていた。しかも二人も。僕が一番乗りして二人を待っていてあげようと思ってたのに。紳士たるもの、レディーを待たせてはいけないのだ。


「あんまり遅いから、アイス食べてたよ! あ、ここは優人くんのおごりね! 前、ごちそうするって言ってくれてたもんね~」


 そこは覚えてなくてもノープロブレムだったんだけどな、瞳さん。

 驚くことに、瞳の正面にあるアイスの器は二つ。二つもごちそうするなんて、僕、言ってません!


「毎度。会計は後でしてもらうとして……とりあえず、昨日の話の続きだ」

「うんうん、そうだね」


 アイスを食べた瞳はすっかりご満悦だ。僕はそれどころじゃないっていうのに……。


「こっちに来て。台所なんだけど、ここに入口があるんだ」


 入口? まだ何か秘密でもあるのかな?

 玉井は僕たちを台所へと案内した。コンロ際では夕子ばあちゃんが餡の仕込みをしている真っ最中だ。汗をかきながら、餡を焦げつかせないように必死で鍋をかき混ぜている。かなり必死なのか、僕たちが入ってきたことにも気づいてないみたい。


「夕子ばあちゃん、こんにちは。僕、手伝おうか? ほら、男手がいるだろ? 遠慮しないで!」


 お年寄りには親切にしなくっちゃね! 僕はそっと夕子ばあちゃんに手を差しのべた、が。パチンと夕子ばあちゃんは僕の手を強く払いのけた。

 あれ? お年寄り扱いしたのが気に障ったのかな? それとも、男手なんていらないってことなのかな?

 夕子ばあちゃんは僕の方を見向きもせず、淡々と仕込み作業を続けている。


「……お前さんが那智と仕事するのかい」


 夕子ばあちゃんの声色はこころなしか……トーンが低いように感じた。いや、こころなしどころじゃないね、がっつり低い。黄泉の国から這いでてきたんじゃないかってくらい低い。

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