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愛玩ファントム 〜真夏の夜のエトセトラ〜  作者: 山石尾花
正体! 【七月三十一日 水曜日】
12/100

3

 *****


 僕のクラスは高等部二年三組。教室に着くと大半のクラスメイトが集まっていた。僕は窓際にある後ろから三番目の席に荷物をおろした。ここが僕の席だ。


「朝から浮かれてるな、親友」

「そうかな、むしろちょっと疲れたよ、親友」


 僕に声をかけてきたのは親友の佐々木吉行。黒縁めがねで、いかにも優等生です~ってやつだ。

 初めて同じクラスになったのは中学二年の時だった。いつだって冷静沈着。頭もよくて、渋りながらも宿題のノートを見せてくれる神様のようなやつだ。本当、感謝してます、佐々木様。

 ……一つ気に入らない点というと、俗に言うイケメンってところかな。イケメンめ!


「お前、夏休みの宿題、ためんなよ。今回はノート見せてやるつもりねえからな」


 吉行が僕の前の席に座った。眼鏡の向こう、眼光が鋭い。


「え~、そんなこと言うなよ。夏休みは忙しいんだよ」

「最初から、見せてもらう気満々だな! ちゃんとやれ、死ぬ気でやれ」

「神様、仏様、吉行様~~~! どうかお願いします、見せてください~」


 僕は吉行の足元に土下座した。男ならプライドを捨ててもやらなきゃいけないときがあるんだよ!


「やめろ! そんなこと言われてもぜってえ見せねえからな!」


 吉行は足元の僕を追い払おうと、シッシッと手を払った。離れるものか、意地でも離れるものか! 僕の悠々夏休みライフは吉行のノートにかかってるんだから!


「あのさ、朝っぱらコントするのはいいんだけど、号令聞こえてるの?」

「え?」

「あ?」


 呆れ口調で花野が僕たちに告げた。吉行と二人、グルリと教室を見回す。起立せずに馬鹿話をしているのは僕たちだけだった。


「あ、あれれ~?」


 教壇に立っている担任が咳払いをして僕たちを睨みすえた。はげ散らかした頭は上気し、汗の玉が光っている。


「終業式の後、お前ら二人だけで教室の掃除をしてから帰れ」


 担任からの最後通告。僕と吉行は顔を見合わせた。


「はい」

「はい」


 朝からほんとについてない。疲れは三倍増になって僕の肩にのしかかった。


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