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異世界血ート剣客 拙者・葵光剣は異世界に貢献するでござる!  作者: 鬼京雅
一幕・人妖戦争の闇 タカスギ・シンクウ一派との戦い編
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妖怪幼女・ろくろ首のロコ現る

 永遠の迷宮である迷路結界を抜け、滝の裏側を抜けて森の奥に到着した拙者とミツバは霧が立ち込める深い森に出た。ここから先が、大妖怪ぬらりひょんのかつての住家であり、現在はタカスギが支配するアジトでござった。おそらく、ここからタカスギの腹心達が現れる。ここからが、激しい戦いの始まりでござる。


「……」


 ここはやはり、討ち入りの衣装に変えなければならんな。

 キョロキョロと辺りを警戒しつつ、先ほどの滝壺にいた魚を取って焼いた、焼き魚の骨をくわえているミツバに拙者は言う。


「ミツバ、新選組の羽織を頼むでござる」


「ん? あいよ! マジックカプセルオープン!」


 バッ! と胸元から一つのカプセルを取り出し、それを魔法で開放する。

 すると、浅葱色あさぎいろにダンダラ模様の羽織が飛び出し、拙者はそれを羽織る。

 そして、額に葵の文字が刻まれた鉢金はちがねを巻き、討ち入りの格好になった。


「よし、これで討ち入り準備完了でござる」


 キリッ! と決める拙者に、ミツバは何故か魚の骨を口から落とし呟く。


「そんなん初めから着てればいいじゃない。面倒な事するね」


「気分でござるよ気分。この誠の文字が背中に入ったダンダラ羽織を着て、これからの戦いの気合を入れるでござる」


「よくわかんないけど、ゴー!」


「よくわかるけどゴーでござる」


 と、納得しないミツバが納得した事にして拙者達は進む。

 すると、深い霧の奥に人の姿が見える。


「ミツバ。拙者の背後に下がるでござる」


「ほーい」


 やがて煙管の煙の匂いが拙者の鼻腔をくすぐり、その人物が誰だかわかる。

 紫の髪に雲が描かれた着流し、朱色の煙管を吹かし気だるそうに笑う不可思議な男。

 人妖戦争の黒幕であり、スザク王国国王の一人息子――。


「タカスギ・シンクウ。お出迎えでござるか?」


「案外早く迷路結界から脱出した褒美だ。まぁ、今すぐは戦わないけどな」


 ケケッ……と笑いながら煙管を吹かすタカスギは言う。

 すると、そのタカスギの背後におかっぱ頭の少女がいるでござる。

 いや、幼女……でござるか?

 幼い顔の黄色い着物を着た日本人形のような妖怪女の子でござる。

 恐らくタカスギの側近であろうが、特に殺気も無く拙者達を見ている。


「どうしたアオイ? お前さんは幼女が好きなのか? それも妖怪ろくろ首の?」


「ただやけに幼いと思っただけでござる。いちいち色恋と一緒にするな」


「ケケッ! お前さんはキレるとわかりやすくて好きだぜ。優しい顔をした激情家ほど、倒した時の爽快感は計り知れねぇからな! なぁロコ?」


「そうロコ」


 コクリと妖怪ろくろ首であるロコは返事をした。

 そして拙者は言う。


「タカスギ。お主は妖怪とつるんで何をしている?」


「それは後で教えてやる。ロコにシュンやモンタ。俺の仲間達に、勝てたらな」


 ケケッと高杉は笑うでござる。


「妖怪最強のぬらりひょんを倒したのは凄い。けどもぬらりひょんはあくまで、昔の最強。これからは時代が変わるのさ。この俺が変えてやる」


 すると、黙っていたミツバが叫ぶ。


「この妖怪の里はもうキリン都市として命名されて、妖怪と人間は協調して生きる法律が出来たんだよ? それなのにまた戦争を起こすの? 国王の息子が法を破ってまで!?」


 ドン! とタカスギは草鞋わらじをはく足を踏み出し啖呵たんかを切るように叫んだ。


「スザク王国など知った事か! スザク王国の、バクーフ大陸全土の国家、全てが私法だ! この妖怪の里に無法を持ち込むなクズが!」


 それにミツバは黙り込む。

 そして拙者はどこかで聞いた言葉に戦慄していた。


(この台詞……確か、土方殿から聞いたかも知れぬ。確か……)


 拙者の時代に存在した高杉晋作たかすぎしんさくは箱根の関所破りをする時に、天下の大道に関所を設ける幕府の私法など知らぬ! と刑罰として獄門首にされる関所破りを白昼堂々としたらしい。もし、こやつがあの高杉と関係があるのならば、問題を起こす前に消えてもらわねばバクーフ大陸が歴史的な危機に陥る可能性があるでござる。


「……」


 新撰組・闇の武に属した頃の黒い感情が、拙者の心を支配する。


「高杉晋作。生かしてはおかぬ」


「シンサク? 誰かと勘違いしてるぜアオイさんよ。ケケッ」


 タカスギはそう言い拙者を笑うでござる。

 その笑みはやはり一度見た事がある。

 拙者の世界の風雲児に、この男は似すぎているでござるな。

 この世界では元は王族の人間とはいえ、バクーフ大陸全土に戦をふっかける男ならばここで倒すが吉でござる。


「ここで消えてもらうぞタカスギ」


「ロコ、相手をしてやれ」


「はいロコ」


 煙管の煙を吐き出し、タカスギはここをろくろ首のロコに任せるらしい。

 そうはいかぬ!


「待てタカスギ!」


「煙に巻かれちまいな」


 目の前を覆いつくす大量の煙管の煙でタカスギは姿をくらました。

 ここで逃げられたのは痛いが、このロコを倒せば道は開ける。

 もう逃げ場は無いでござるよタカスギ。

 ロコは草木で空間を鳥篭のように囲い込んだ。

 これでロコを倒さなくては脱出も進行も出来ない。

 そして、拙者とミツバはろくろ首のロコと対峙したでござる。





 草木が生い茂る鳥篭内にて、妖怪ろくろ首の血統を引く幼女、ロコと戦う事になったでござる。

 タカスギの居る場所まで雑魚を相手にしながら行くとなると、無駄な体力は使えない。

 ここは、ロコが戦いやすい空間であろう。

 シュンにモンタという腹心がどういう力を持っているかもわからない……ここはミツバに協力して――。


「無駄な血は使えないね。援護するよ!」


「かたじけない。ミツバの血は使うべき所で使うでござる」


「援護しても無駄ロコ!」


 ミツバと共に戦う事になった拙者は、葉の敷き詰められる足場を駆ける。

 何か余計な攻撃をされないように、一足飛びで仕掛けた。


「!」


 ロコは刀で拙者の一撃を防いでいた。

 微かにロコの首が伸び、攻撃直後で止まる拙者の身体に噛みつこうとする――が、


「アオイの血は吸わせないよ! フレアアロー!」


 と、ミツバの炎の矢が放たれたでござる。


「ロココのコ」


 それをロコはウネウネとした動きで回避し、先制攻撃の失敗を認めた拙者は後退した。

 足が滑ったのかロコは地面に倒れている。

 そして、そのロコの持つ刃に懐かしさを感じた。


「ほう、ソードではなく刀を使うか。これは面白い」


「何が面白いの?」


「アオイ後ろ!」


 その瞬間、ロコは拙者の背後に居たでござる。

 首だけのロコが――。


「くっ!」


 口から放たれたナイフを拙者は辛うじて回避する。

 どこから攻撃してくるかわからない暗器使いのようなロコとの戦いに、血が湧くでござる。


「口から刃物を取り出せるのか。中々の凄技でござるな」


「褒めても何も出ないロコ。ホントは出るけどドピュドピュと」


 そして森である周囲を見渡すミツバは言う。


「面倒だな……ここ全体を焼き払う?」


「いや、被害がここだけならいいが余計な場所まで被害が出るとどうにもならない。火の用心、マッチ一本火事の元でござる」


「そうすると、火炎魔法はあまり大々的に使えないね。氷とか水は好きじゃないんだよね。冷たいし寒いし!」


「はは……そうでござるな。まぁ、この空間を生かせるのはロコの特徴。けども突破口はあるはずでござる」


 この木々と葉に囲まれた空間は伸びる首を上手く使えば、ロコは死角から攻撃出来る。

 結構厄介でござるな。

 どこから首が伸びてくるかわからない状況を考えると、ロコの目を見続けなければならない。

 と、右手でVサインを右目の横で決めるロコの瞳がカッ! と光り――。


「アイビーム!」


 ピカッ! と目から怪光線を放ったでござる!

 スッ……と肩の羽織に焼き目がつくがギリギリでその光を回避した。


「くっ……何という奇襲技……」


「かわすとはやるロコね。ならばくらうロコ」


 すると、今度は両手でVサインをして両目の横で固定し、言った。


「アイフラッシュ!」


 今度は目が太陽のようにまぶしく発光したでござる!

 急な光を浴びた拙者は目を閉じ、視力の回復を待つ。


「く……目が見えない」


「なら死ぬロコ」


「感覚までは死んでないでござる」


「でも、仲間はどうかしら?」


「ミツバ!」


 ロコはミツバにアイビームを放つ。

 まだ視力が戻らぬ拙者はその光に対し、叫ぶ。


清流鬼神流せいりゅうきじんりゅう空覇斬くうはざん!」


 シュパッ! と空気の刃が飛翔しアイビームをかき消した。

 そして、拙者の視力も戻りだす。

 何とかミツバは無事のようでござる……かな?


「目がぁ! まぶしいよぅ!」


 ミツバはアイフラッシュの光で一時的に視力を失い、倒れる。


「大丈夫でござるかミツバ……」


「でーじょーぶ、でーじょーぶ!」


 何故か、かけてないメガネを探してるでござる……。

 ここからはミツバに期待せず自分一人で戦おう!

 そして拙者はロコに斬りかかるでござる。


「どんなビームを放とうがそのビームの先に顔がある! それがわかっている以上、もう終わりでござる――」


「残念無念。ビームを撃てるのは目だけじゃないんだロコ」


「!?」


 何と! 手からもビームを撃って来るでござる。

 しかし拙者はそのまま直進した。


「もうお昼寝の時間よ。ロコちゃん」


 背後から援護するミツバの疾風魔法がビームをかき消す。

 それに焦るロコは滅茶苦茶にビームを放つが、拙者には当たらない。


「無闇に動かなければ、ビームなどに当たる事も無いでござる」


「今度は真下から攻撃するかもよ?」


「そう言うならばとうにやってるはず。もう主は拙者に近寄る事はすまい。敗戦確定でござるからな」


「敗戦はまだ決まってないロコ!」


「ビームの軌道は一直線――いい加減見飽きた――」


 特攻しつつ無理矢理、身体を螺旋状に捻りビームの直撃を回避する。

 そのロコの背後にはミツバが居た。


「桃色女? いつの間に?」


「敗戦を認めた時にはいたわね。エアロストリーム……」


 大疾風魔法を放つ寸前のミツバが居てロコは動かざるを得ない。


「っ! 逃げるしかない――」


「前に逃げたら、拙者がいるでござるよ」


「!?」


 焦りのあまり動きが止まるロコは、拙者の間合いに入った。

 そして居合いを放ち、決着がつく。


「……ふう、まずは緒戦は勝利でござる。ん?」


 すると、倒れるロコの胸元から一冊の本が落ちた。


「軍隊ブック? ミツバ、これはロコの物でござるよな?」


「そうだね。もしかすると、軍隊に興味あるのかも。スザク王国の騎士団に入りたいのかもね」


「そうなると、人間と妖怪の共存社会も実現出来るでござるな」


 軍隊の基本などが書かれた入門書が落ちていたのでロコに返した。

 そして、ズズズ……と開いた木々の一角から、拙者達はタカスギがいるであろう奥へと進んだ。

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