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異世界血ート剣客 拙者・葵光剣は異世界に貢献するでござる!  作者: 鬼京雅
序幕・異世界転生 そして人妖戦争の終結
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異世界転生・新たなるアオイ・コウケンの始まり

清流鬼神流せいりゅうきじんりゅう流星斬りゅうせいざん!」


 青空のような色の腰まである長髪に、新選組の浅葱色あさぎいろのダンダラ羽織を着た和装姿の拙者・葵光剣あおいこうけんの一撃が流れる星のようにズザァ! と巨大な敵を真っ二つにしたでござる。一撃でその後に、デブゴブリンと知る妖怪を倒した。そして青い髪や羽織袴にかかる返り血を気にせず、大地を駆ける。

 幕末と呼ばれる時代の戊辰戦争に参加した拙者、葵光剣はその最後の戦いである蝦夷地えぞちで十八年の寿命を終わらせたでござる。

 いかな剣技も、いかに身体を鍛えようとも銃弾の前では剣士は無力でござった。しかし、後悔はしていないでござる。拙者は己が信念を曲げず剣一筋で薩長さっちょうを主力とした官軍を百人以上斬り倒した。

 そして、薩長の首魁・西郷隆盛さいごうたかもりに拙者は儚くも散ったでござる……ん?


「ほーほー? 拙者は死んだはずでは……」


「キャーーー!」


「!?」


 どこかで悲鳴が聞こえるでござる。


女子おなごの声……貢献し、助けねば!」


 拙者は愛刀・清流刀せいりゅうとうを持ち高速で駆けた。





「! これは!」


 そこには先ほど倒したデブゴブリンがおり、その妖怪に襲われている女子おなごを発見した。

 ……肩先まである髪が桃色でござるな。

 着ている衣服もやけに変でござるし、まさか外国の女子でござろうか?

 日本でも攘夷じょうい、攘夷と外国を駆逐する運動が盛んになり、日本中が沸騰し内乱状態になり戊辰戦争が勃発したでこざるが、まさか外国はこんな異形の妖怪まで存在していたとは知らなかったでござるよ……確かにこれでは天皇や将軍も外国を嫌うわけでござる。

 これは恐怖以外の何ものでもない――。


「おい、そこの妖怪! 拙者が相手でござる!」


「グア? お前が先に食われたいのか!」


「黙れ妖怪! ――清流鬼神流・螺旋斬らせんざん!」


 バッ! と飛び上がった拙者は回転の力を利用した斬撃でデブゴブリンを倒した。

 そして、桃色の髪の外国の女子の元へ向かう。

 しかし、何故か拙者は怒られたでござる……。


「大丈夫でござるか?」


「大丈夫もクソも無いわよ! ワザと弱いフリしてたのに、どうしてくれんの? あいつ倒すとタマにレアアイテムくれるんだから!」


「れああいてむ?」


 拙者には外国の言葉はわからぬでござる。

 そして怒る女子をなだめ、名を聞いた。


「私はサガラ・ミツバ。バクーフ大陸スザク王国の魔法少女よ」


「拙者は葵光剣あおいこうけん。幕府軍・土方隊所属の武士でござる」


「へ? 武士? つか何その格好? やけに長いスカートね。動きづらそう」


 何やらやたら拙者を見つめて来る元気な女子のミツバ少女殿と出会う。

 少女と女子は同じ意味らしいけど、ミツバ殿は少女という響きにこだわっている。

 と、拙者も気になる事が多くある。


「魔法少女とは何でござるかミツバ殿? それにその服は海援隊かいえんたいが採用予定だった英国のせーらー服という奴でござるか?」


「いや、意味わかんないし。魔法ってのはこういうのよ。アオイは田舎者?」


 ミツバ殿の手に怪しげな赤い粒子が収束され、ズババッ! と炎が放たれたでござる! そして岩が炎で焼かれ消滅した……。


「ほーほー。こ、これが……魔法でこざるか。魔術のようなものでこざるな。こんな技があっては攘夷じょういなどと言ってる場合ではないな……外人とはこんな力を持っていたでござるか……」


 サガラ・ミツバという魔法少女の恐ろしさを拙者は知った。

 しかし同時に、弱点も発見したでござる。


「魔法というものには発動までの時間差があるでござる。そこをつけば容易い」


「そうだね……!? 逃げるわよアオイ!」


「?」


 拙者達の背後にぬらり……という影が走り、ミツバ殿は拙者の手を引き必死で逃げる。

 しかし、その影は目の前に悠然と現れたでござる。

 外見は総髪の顔に深い皺がある初老の老人。

 緑の着流しの上に白い半纏をはおり、腰には鍔の無い刀を帯びているでござる。

 眼光鋭く、正に百戦錬磨の様相の老獪ろうかいな男だった。


「ミツバ殿。逃げられぬでござるよ」


「大妖怪ぬらりひょんよ! ここは逃げるしかないわ!」


「いや、倒した方が早いでござる。敵は逃がしてくれそうも無いしな」


「でも相手は大妖怪ぬらりひょん! 百年以上続く人妖戦争じんようせんそうの妖怪側のボスよ!? ヤバいって!」


「新選組隊規第一条。士道に背くあるまじき事。故にたとえ一人になっても拙者は逃げも、降伏も無い。新選組にあるのは剣のみ」


 チャキ……と拙者は清流刀を構えた。

 妖怪の仲間が現れたでござるな。

 しかもミツバ殿の話によると強力な妖怪が現れたでござる。

 ぬらりひょんという最強の妖怪らしい。

 しかし、拙者は負けぬでござるよ。

 そしてその大妖怪ぬらりひょんは言う。


「ワシを倒す……か。寝言にしては面白い事を言うな小僧」


「拙者は葵光剣あおいこうけん。貴殿はぬらりひょんと……言ったな」


「そうだ。ワシは大妖怪ぬらりひょん。人妖戦争の妖怪側の首領だぜ? 知らんのか小僧? モグリだな」


「ほーほー。拙者はこの国については知らぬ。目覚めたらここにいたからな」


「ジジイのような言葉使いだな。よくわからん小僧だ」


 ジジイであるぬらりひょんに拙者の口癖「ほーほー」を指摘され不快でござる。

 ジジイのような言葉とはかつて、拙者の尊敬する熱き氷の男・新選組副長・土方歳三ひじかたとしぞう殿が言った言葉でだった。


「土方副長のような事は言わないでもらいたい」


「ヒジカタ? 何だその土方どかた見たいな名はよ。土いじりなら砂場で子供とやれ――」



 キインッ! と一足飛びで仕掛けてきたぬらりひょんの刃を拙者は受け止める。

 横目でミツバ殿が距離を取った事を確認し、目の前の大妖怪に集中する。


(……近藤局長並みの鉄すら断ち切る凄まじい斬撃。しかし、土方副長のような汚さが無いでござる)


 相手を倒すはずの一撃が防がれれば、すぐに二撃、三撃目に移らねばならない。

 それには、人は刀を持っている事から反撃する者の場合、特に足元の攻撃が有効だった。

 上半身を意識してる者ほど、下半身はお留守なのでござる。

 そう、拙者は土方殿の戦いを見て学んだ。

 あの人の剣は近藤局長や天才剣士・沖田殿とは違い邪道だが、実戦では負けを知らない。

 なわけで、スッ……と拙者はぬらりひょんの足を蹴る。


「それ」


「何ぃ!?」


 体勢を崩した所に、裏拳を叩き込んだ。


「つえぃ!」


「ぐはっ……!」


 鼻から血を出すぬらりひょんは、ぬらり……と消えるでござる。

 魔法という魔術か? と思う拙者は周囲を警戒した。


(どこだ……どこにいる? 奴の気配は……)


「キャー!」


 一つの悲鳴が、拙者の心を熱く燃やした。


「ぬらりひょん! 女子おなごを狙うとは卑怯な!」


「戦いに卑怯も糞も無いわ小僧。ちなみにワシは女が嫌いでな。ほーれ!」


「キャー!」


 スパパッ! とミツバ殿の服が斬られたでござる。

 白く、美しいミツバ殿の肌が露になる。

 許さぬ……許さぬぞぬらりひょん……!? 


(な、何……だ? この渇きは――)


 瞬間、拙者は異様な喉の渇きを覚え、気づいたらぬらりひょんに一撃を加えていたでござる。

 手についた血に、異様な興奮を覚えつつも、遠くに吹き飛ぶぬらりひょんを忘れるように拙者はミツバ殿を介抱する。


「今度こそ大丈夫でござるか?」


「うーん。服はやばいけど、身体はほとんどだいじょうぶい!」


「ぶ、ぶい? まぁ大きな怪我が無くて安心でござる」


 よく聞くと、ミツバ殿の服は魔法少女服とも言うらしいが、やはりセーラー服でござるか。

 確か、海援隊という坂本龍馬さかもとりょうまの仲間達が白袴よりも外国の海兵が来てるセーラー服を取り入れるとか何やら言っていたかも知れぬでござる。勘違いかもしれぬが……?


(ぬ? サラシではなく胸に何やら胸当てをしてるでござるな。防具……とは違う。胸の形に合ったいい代物でござる。にしても、この娘は痩せてる割に乳が大きい。永遠のような谷底が拡がっているでござる……)


 と、そんな事を考えている場合ではないな。


「高くて新しいブラジャーなのに汚れちゃった。ま、洗えばいっか!」


「ブラジャー? 何やらわからんが、前向きな女子でござるな」


「生きてくには前を見なきゃね。でも、戦闘で汚れるから外しておこうかな。揺れが気になるけど」


 豊かな乳を丸出しにしようとしてるでござる。

 これは何と、度胸のある女子であるか……外国人とは恐ろしい……。


「いやいや、着けるでござる。男には刺激のあるものでござるから」


「ぬらりひょんは男好きで有名だけど、女でもオッパイ興味あるんだ?」


「拙者は女ではなく、男でござる」


「へ?」


 ブラジャーを着け終わるはずのミツバ殿の手からブラジャーが落ちる。

 ぶるん……と揺れる、白く大きな御椀型の胸が拙者の視界を支配した。

 しかし、ミツバ殿は気にしない……。


「嘘ぉ!? 男なの! つか、めんどくさいなぁ……まぁ、気になるなら着けるよ。あんたに見られても恥ずかしくないし。つか、女にしか見えないよ? だってそれスカートでしょ?」


「袴というものでこざーる?」


 拙者は袴をまくられ、褌もまくられ、色々と暴走してる場所を見られたでござる!


「うわっ! 凄い! 兄貴よりもデカイ! 本当に男だったんだ! そういや、兄貴も女顔だったな。元気してるかな兄貴」


 この女子おなごはとてつもない女子で拙者はどうにもならぬ……ある意味ぬらりひょんより強敵でござるよ。ほーほー……。


「ワシを忘れていたな小僧。油断大敵だ――死ね」


 瞬間――満身創痍のぬらりひょんが背後から迫っていた。

 不意の一撃に、拙者はミツバ殿を守りつつ後方に飛ぶ。

 そのミツバ殿はブツブツと何やら呟き、叫ぶ。


「阿修羅の業火……その身で味わえ! マグマドラグーン!」


 凄い!

 炎の龍でござる!

 こんな魔術は外国では当たり前なのだろうか?

 何はともあれ、ミツバ殿は炎の龍で援護してくれるでござる。

 いやはや、龍というものは初めて見た……素晴らしいでごなるな!


「ぬらああああああっ!」


 しかし、ぬらりひょんはその火炎龍を切り裂いた。

 魔力とやらを使い果たすミツバ殿は意識が朦朧としているでござる。

 炎の中から、悪意を体現する老人が現れ言った。


「その娘、若いワリに高位魔法を使えるようだがワシにはきかん。この大妖怪ぬらりひょんの作る妖怪帝国に魔力なんぞはいらんのだ」


 何やら独裁政治の国を作ろうとしているようなぬらりひょんを、拙者を殺した西郷隆盛と同じ世界を作り出そうとしていると感じ、言う。


「そこに、誠はあるでござるか?」


 拙者はミツバ殿を抱きかかえ言う。

 そして地面におろした。


「後は拙者に任せて休むでござる……」


 すると、やけにミツバ殿の血が旨そうに香るでござる。

 駄目だ……我慢が出来ない!

 自分を抑えられず、首筋を愛撫し、噛み付いた。


「おいおい、お前さんは妖怪じゃないだろう? 吸血鬼は妖怪の開祖だぜ……って聞いてないな」


 やれやれ……と言った顔でぬらりひょんは拙者を見ているが、拙者はぬらりひょんどころでは無かった。ミツバ殿の首筋に噛み付き、赤き血を吸う。


「血を……血をもっと……」


「はうぅ……」


 ミツバ殿は淡い声を上げ、ヨダレがたれる。

 それもペロリと拙者の体内に流し込む。


(……!)


 全身の筋肉が、神経の全てが刺激され、心臓の鼓動が早くなる。次第に青い髪が赤く変化し、血の赤になった。全身から奈落の底から発するような血の匂いが立ち込め、拙者の……いや、俺の全てが殺意に染まる。

 拙者の言葉使いが変わってるでござるな。

 何やら攻撃的になっているでござる。

 刀身に写る自分の変化を見て改めて思う。


(青い髪が真っ赤に変化し、全身の筋肉が震えている……。何とも言えない爽快感だ!)


 すると、この世界が俺のいた時代とは違う事を直感でわかってきた。

 そう、ここは異世界だ。

 そして俺はミツバに言う。


「腰にある髪留めを借りるぞ」


「あれ? 洗濯した時につけた洗濯バサミだ……」


 俺は洗濯バサミで後ろの髪をまとめた。

 そして、桃色の魔法少女ミツバのアゴを指で上げ、言う。


「ムカつくな。ミツバはムカツク」


「え? な、何よ突然!」


「ムカつくほど可愛いいぜ」


 カッ! とミツバの顔が赤くなる。

 どうやら、この娘はあの女に似ているな。

 俺の女の――って、まずはコイツを倒さないとな。

 俺は茫然とするぬらりひょんに振り向いた。


「……何だ小僧? 髪は赤く変化し、雰囲気がまるで別人……」


 そして、確実に変化する俺は言う。

 この世界の全てに――。


「人妖戦争の妖怪首領・大妖怪ぬらりひょん」


「何じゃ? 今更勝ち名乗りか?」


 清流刀を突き出し、宣言した。


「俺の異世界最強伝説へ貢献してもらうぜ」


 そして、俺達は激突する。





 ぬらりくらり……。

 緩急をつけ相手の攻撃を惑わす。

 それが、ぬらりひょんのぬらり歩行術。

 単純な技だけに隙が無く、攻撃が当たらない。

 はずだった――。


「全て見やぶやせてもらうぞ。清流鬼神流――明鏡止水めいきょうしすい



 清流の如く心を研ぎ澄まし、刹那の瞬間に鬼神となり敵を打ち破る。

 それが清流鬼神流の真髄である境地・明鏡止水。

 新選組の諸士調役兼監察方しょししらべやくけんかんさつがた、そして京都・大阪の闇を破る〈闇の武〉として活躍していた俺の流儀。受けてもらうぜ!


「つえぁ! はああああっ!」


「ぐっ! ぐはあああっ!」


 俺は一撃、二撃と連撃加えて行く。

 相手にならんな最強の妖怪とやらも。

 俺の力の前ではな!

 そして血を吐くぬらりひょんは叫んだ。


「転生した異世界の人間がここまで強いとは聞いてなかったぞ! それにそれは妖怪の力! まさか半妖はんようか!?」


「よくわからない言葉だな。まず転生って何だ?」


「死んだ人間が他の世界で復活する事だ」


「ほーほー。それでこの血の力に目覚めたって事か。あんがとよ、ぬらりひょん」


 血が沸騰するような高揚感と共に言う。

 そしてもう一つの疑問も聞いた。


「半妖は?」


「自分で考えろ!」


「そうか。なら後でミツバに聞く。どうしたぬらりひょん? 虎穴に入らずんば虎子を得ず。恐れずに来いよぬらりひょん。大妖怪の名が泣くぜ?」


「こおぉぉぉぉぞぉぉぉぉぉ――!」


 ぬらりひょんは納刀し、居合い抜きの構えに出た。

 一騎打ちの居合抜き対決――。

 抜刀から納刀までの軌跡が見えないと言われる俺の鬼神光きじんこうを見せる時のようだ。

 生まれ変わった人生大一番の技がこれになるのもまた、運命か。


 清流鬼神流閃速の型・鬼神光。

 意図的に心臓を止めて身体活動を弱め、そこから爆発的に高まる力を利用して斬る。

 才が無ければ心臓を止めた時点で死んでいる。


「行くぞぬらりひょん!」


「来い! 小僧!」


 一陣の風が吹きぬけ、ミツバの瞬きと共に全ては終わった。


「清流鬼神流・鬼神光!」


「妖気爆裂! ぬらくら!」


 ヒュン……と俺の赤い髪が揺れ、ぬらりひょんは白目を剥いたまま上空に舞う。

 清流鬼神流の必殺の一撃でしとめたでござる。

 大きく息を吐くと、桃色の髪を揺らしミツバが駆け寄って来た。


「アオイ……大丈夫?」


「あぁ……俺は……いや、拙者は大丈夫でござる」


 スウゥゥゥ……と赤い髪から元の青い髪に戻る。

 まさか、ミツバ殿の血が拙者を変えたでござるか?


(ほーほー!)


 ミツバ殿の乳が腕に当たるでござる。

 ……恥ずかしい――?


「殺気? 誰でござる――!」


 その方向の崖の上には、一人の男が居た。

 煙管を旨そうに吸う、紫の揚羽蝶が描かれた着流し姿の男がいるでござる。

 腰には朱鞘の刀を帯び、やけに洒落た感じのする男だった。


「あの人相……長州藩士ちょうしゅうはんし高杉晋作たかすぎしんさく? ま、待て――」


「うっ……」


「ミツバ殿!」


 急にミツバ殿が苦しそうにする為、拙者は怪しい男の追跡をやめてミツバ殿を介抱する。

 胸を触り、同時に脈を確認する。

 ……おそらくは一時的な疲労で、肺病ではないでござるな?

 かの天才剣士・沖田総司おきたそうじ殿も肺病で亡くなられた……あの方は剣士として拙者の目標でもあった。

 そう、あの人は……ぬ?

 やけに視線を感じるでござるな。

 目の前のミツバ殿は、拙者の手を見つつ言うでござる。


「私の胸、そんなにもみたい?」


「すまぬミツバ殿! 胸を触ったのは謝るでござる」


「ま、いいよ。別に減らないし。揉まれると大きくなるかもだしね。それに殿って何? 殿はいらないよ」


「わかったでござる」


 そして、拙者達は消滅するぬらりひょんを見届けた。

 大妖怪ぬらりひょんを倒した異様の拙者の力を、ミツバはこう言ったでござる。


「この世界では、最強無敵の戦士をチートって言うんだよ。だからアオイはチートだね」


「……チート。いや、血の力なので血ートでござるな」


「確かにその方が面白いかも。な、中々やるわね。顔もいいし……好きかもしれない……きゃ!」


 口に出ているでござるよ。

 顔を赤くして逃げたでござる。

 まぁ、好意を受けるかは別として、拙者はこの少女と過ごすでござる。

 というわけで、追わねばならぬ。


「待つでござる!」


「ちょっと! 追って来ないでよ!」


「拙者ではダメでござるか?」


「いや大歓迎よ! だって好き……って、あーもう! 私の世界に貢献してよアオイコウケン!」


「当然でござる。この葵光剣。この異世界に貢献するでござる!」


 異世界に転生したらしい拙者は妖怪に襲われた若い女子を助けた奇縁で血ートに目覚めた。

 幕末の最後の動乱の最中でこの時代に来てしまったのが心残りでこざるが、やってみるでこざるよ。

 転生一日目にして、百年続いた人妖戦争を終結させた拙者はその後、有名人になった。

 しかし、その裏を知るはめになるのをまだ拙者は知らない。

 そして、拙者・葵光剣はアオイと呼ばれる事になり、ミツバの住むスザク魔法都市に行ったでござる。


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