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~少年の記憶 1~




 ボクが今視えるのは、建物が壊れて出来た石の山と大地を広がる雪、それだけ。

この光景は・・あぁそうだ。ボクは、


「・・・行か・・・ないと・・・・」



木は燃え切って真っ黒になり雪がそれを覆い隠す。

白く塗りつぶされるキャンバスの上を僕はゆっくり歩き出した。足を止めれば僕も真っ白になって消えてしまうんじゃないか。不安と焦りが原動力になって急げ急げと急きたてる。

でも、どこへ行けばいいの?今進んでいる道の先には何があるのか分からなくても止まれない。止まっちゃいけないんだ。



この村にはたくさん人がいたはずなのに、どこに行ったのかな。ところどころで盛り上がった雪があるけどあれは何だろう。想像したら体がブルブル震えてきて、掘り返すのはダメだって言ってるみたい。



手足の感覚が消えた。でも体が震えているのは分かる。寒い、痛い。寒い、痛い。

全身を針で刺されているみたいだ。イヤだ、死にたくない。パパ、ママ、どこにいるの?

お隣に住んでたおじさんが白く塗りつぶされちゃったのを行く先で見つけた。ピクリともしないおじさんの顔がボクを見る。止まるとああなるんだって思った。歩き始めた時より遅くなっていた足に力を込める。



「あっ・・・!!」



斜面を下っていたら足がもつれて転んだ。顔が痛い。顔なんてあったんだ。体の上には頭があるだなんて当たり前か。はは・・・。


頑張って体を起き上がらせる。腕を曲げ足を地に着けて、もう少しだ。・・ふぅ、あぁこれでまだ止まらずにいられる。止まるのはこの寒さが、痛さが消えたときしか許されない。自分が許さない。



神様は僕に『しれん』をくれたんだ。生きようとするボクにほら、先を見る目と進む足を残してくれた。

”あんなこと”があったのに怪我一つないじゃないか。体を起こす際に腕があることを思い出した。動けなくなったら腕を使うことができる。神様はいつもみんなに同じくらいの『きぼう』を分けてくれているってパパ言ってた。



 空を見上げれば雲。もうその口から白い絵具を落とさないで。僕を白に染めないで。

視線を前に戻すとかなり遠くでぼんやりと白く光っている。あそこだ、ボクはあそこへ向かうんだ・・・。





--





 あれ?ボクどうして地面に寝そべってるんだろ。んんっ!・・・足が動かない。気づかない間に寝ちゃった。ママがいつも早く起きなさい!って怒ってた顔が脳裏をよぎる。


起きてるよママ、でも動かないんだ。頭がボーっとする。熱でもあるみたい。もう今日は寝て・・・

・・・ダメだダメだ!止まっちゃダメなんだ!ここはベッドじゃない。


体と地面で潰されていた腕を無理やり引っこ抜き、這って進む。

まだ光は・・・いた!消えないでいてくれた!もうちょっとだ、もうちょっとで・・・。






--





・・・・・・・・・。



「お休みのところすみません。あなた、まだ生きていますね?」


・・・・誰?


「喋らなくても結構。ちゃんと声は届いていますよ、雪が教えてくれています」


雪?雪が話すはずない。ボクを苦しめる冷たいもの、それが雪なんだ。


「彼らも大勢の人を凍えさせてしまって、とても悲しんでいるようです。君もまた動かなくなってしまうんじゃないかとね。分かりませんか?目を開きなさい。目の前には光が溢れているはず」


・・・ホントだ、眩しいけど見てて痛くない。雪よりも真っ新な白。こんな色見たことないや。


「普段の発光と違う・・君はわたしより雪の精に好かれているようです。いいでしょう、あなたに生きる術を与えます。この極寒の大地で生きるために」


あなたは誰?魔法使い?ボクはまだ生きていられる?


「君にとっては・・・魔法使いかもしれません。安心してください、ここに来るまで君が何をしていたか彼らが話してくれました。うるさいくらいにね。一人で生きていけると思うまで面倒を見ましょう。」



ありがと、魔法使いさん。もう眠いんだ・・・ここで止まっても大丈夫だよね・・・。




「えぇ、おやすみなさい。白のご加護が君を救って下さいますように」







シェリとの対比みたいな話になってしまった(偶然)




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