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Asgard  作者: 橘花
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9.白の魔王

 9.Recordare



 ウッドベリーの東地区を翔ける一匹の大狼。


 数多の人間達を玩弄がんろうし、破壊の限りを尽くしていたオルトロスの右耳がピクリと反応した。



「…………」



 この喧騒の中とは思えぬほど悠々とした気配が一つ、現れたのだ。

 恐らく、では有るが黒円卓議会の別の同胞がこの街へ入ってきたのであろう。



(主人の件で何か動きがあったか)



「うわあああああああ!!!」



 オルトロスが動きを止め、気配のした方向を眺めているとそれを好機と踏んだのか、兵士の一人が叫びながら斬りかかってきた。

 目の前の化け物に仲間や領民が次々殺されていく中、怖気付かず勇猛果敢に挑むその様は称賛に値するだろう。



「うおおおおおおおおお!!!!」



 自らの恐怖に打ち勝つ為に奇声を上げながらも挑む姿は正に侍。

 男として、民を護る兵士としての最期の誇示を掛けた渾身の袈裟斬りは、オルトロスの頚に吸い込まれるように太刀筋を入れていく。


 ——だが、オルトロス本人はそんな羽虫の攻撃、歯牙にも掛けていなかった。


 ガンッ、と大きな岩を殴るような鈍い音と同時に、兵士の会心の一撃は容易く弾かれた。



「……え?」



 斬りつけたと思った兵士のその手は逆に痺れていた。


 しかし、それは当然にして必然の結果だった。

 Level—160もあるオルトロスに人間の攻撃など効く筈がないのだ。


 その剛毛は鋼のように硬く絹のように艶やか。

 その強靭な後脚力は一息で50mをも飛び越える。

 その嗅覚は1km先まで機能し、その動体視力で獲物を決して見逃さない。

 獣化している時のオルトロスには隙がなく、純粋な自力で言えば生態系の最底辺にいる人間など逆立ちしても勝てないのである。


 未だ唖然としている兵士をオルトロスは頭から一気に噛み喰らった。


 一瞬にして上半身を噛み千切りその場に吐き出す。


 咀嚼するなんて尾篭ひろうな事は断じてしない。

 何が嬉しくて種族人間ヒューマンの泥臭い肉なんぞ喰わなければならないのか。


 脳と云う司令塔と心臓という電源バッテリーを失った兵士の下半身は奇跡的なバランスで、その場に尚も立ち続けていた。

 満杯のワイングラスに注がれた葡萄酒のように血液が溢れ返り地面に血溜まりを形成していく。

 それを傍らで——見るとこもせず、オルトロスは近付いてくる気配の主を待っていた。


 ふわり、と舞い降りたと同時に少しだけ甘い匂いがした。



「オルトロス。一度城へ戻ります」


「…………」



 見る者総てを魅了する、凄艶な美貌を持った金髪の悪魔——リリスはオルトロスに声を掛けた。



「オルトロス」


「ならん」



 だが、告げられるは明確な拒絶。

 その胸中は本人しか判るまい、リリスも仮に自分がオルトロスの立場だったと考えると同じ事を言わない自信は無かったのだ。


 主の護衛であり剣であり盾である彼等にとって、此れ程にまで屈辱的な事は無い。

 主を守れない盾など不要、存在価値はゼロである。

 またリリスとて敬愛するご主人様を、その身を呈しても守らなかった彼等に少なからず苛立っているのは事実。

 だが同時に何らかの理由で守れなかったのも事実、だということも充分に理解していた。

 黒円卓議会第12席が全員、自らの主に対する忠誠心は疑う余地もなく本物なのだから。



「第一…………」



 オルトロスがゆっくりと口を開く。



「どのつら下げて帰れると云うのか!!!」


「————ッ」



 それは正に咆哮。

 狼の悲しき慟哭は大地を揺らし響き渡った。

 一瞬、リリスは気圧される。


 ——正論だ。


 武士的思考の持ち主であるオルトロスにとって、のこのこ帰って生き恥を晒す事は考えられなかった。

 しかし、どんな理由が有ろうとリリスにはオルトロスを連れ帰るのを諦める事は出来ない。



「ご主人様は……大丈夫よ。それに、ご主人様が望んでいるわ」



 リリスはゆっくりと、調子を少し変えて言葉を続ける。



「罰なり何なり……それはご主人様が目を覚ましてから考えなさい。今は城を守ること、それが今私達が出来る最良よ」


「……………………。」



 彼は思う。


 一体何が正しいのか。



「……………………判った」



 永き葛藤の後、オルトロスは漸く首を縦に振る。

 彼とて本心では理解しているのだ。

 今一番何をすべきかを。



「メフィストフェレスは?」


「知らぬ」



 リリスが一番危惧していたのはメフィストフェレスの存在であった。

 彼女のカルシファーに対する依存度は人一倍高く、また鬼という種族の性質上今回の件を必要以上に重く受け止めていると分かっていたからだ。

 丁度その時、何処からか爆音が響いた。



「!?あそこね……」



 その音の発生源は容易に彼女だと推測出来た。

 そしてリリスの危惧する事態は現実となっていた。



 ▼▼▼



 ——ウッドベリー城塞正門前——



「こ、こんなの聞いちゃいねぇ!俺は降りるぜ!」


「お、俺もだ!」


「おい、待たんか貴様ら!くそッ、役立たずの冒険者共め!」



 また一人逃げ出していく。


 領軍200と冒険者約200名。

 そして街民の有志千の計約1400は城門前に布陣していた。

 生き残った民は城内に避難しており、言わばこの城門前が最後の砦だった。

 だが、街に滞在していた雇った冒険者達の士気は低くく、目の前の光景を見せつけられて一人、また一人と蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。

 それは尤もで彼等には守るべきものは何も無く、ただ死ぬくらいなら逃げ出した方がまだ賢い選択だった。



「ぐっ————」


「あっ——」



 しかし、今し方逃げ出した二人の冒険者達は急にピタリと静止し——そして、破裂・・した。


 パァンと風船が割れたような渇いた音を発し、内側から血肉を豪快に撒き散らし霧散した二人の冒険者を見て、街民の一人が腰を抜かした。



「ば、ばけもの」


「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」



 今、その惨状を成し遂げた少女は何が可笑しいのか狂ったように高笑いする。



 メフィストフェレスは暴走していた。


 美しい白銀の髪の所々に括り付けられた呪符は、今や全て無くなっている。

 その呪符は本来、彼女のあまりにも強大な力を抑える為に付けられていた。


 メフィストフェレスは魔法を扱う事が出来ない。

 代わりに『妖力』と呼ばれる特殊な術を行使する事が出来る。

 だが、その力は他人をも巻き込む程強大で自制出来ない為、普段は呪符で封印してあるのだ。

 鬼であるが故の強靭な膂力、更には制御出来ない強大な妖力。

 後悔、憤怒、悔恨、嘆き、悲しみ、不安、様々な感情の爆発で不安定になったメフィストフェレスの封印は解かれ、一匹の化物が此処に解き放たれたのだ。



「『石戦車』を出せぇ!!」



 その声と同時に門前に出てくるのは三台の石の戦車。

 重さ約80t、全長7mの石のひつぎが姿を現した。


 近年、帝国が開発したとされる対魔法戦闘用の秘密兵器は偶然にして此処、ウッドベリーに置いてあったのだ。

 これはヴェルディ領領主、ハスカールの蒐集癖が幸いした。

 新型の兵器から怪しいものまで金に糸目を付けず蒐集する、彼の趣味が初めて役に立った瞬間だった。


 これであの化物に勝てる。

 領軍や街民らの士気は高まった。


 それもその筈『石戦車』の最大にして最高の強みは『魔法完全耐性』。

 火竜山脈で稀に採掘される特殊な鉱石を調合し造られたその装甲は、如何なる魔法も受け付けない完全無欠の要塞。

 その重さ故に機動力は棄てられたが、勿論、対人戦闘にも手は打たれていた。



「撃てえぇぇ!!」



 中央の石戦車に乗り込む指揮官の号令と共に打ち出されるのは無数の鉄の矢。

 石戦車一台一台の前面に空いた無数の窓は連弩を放つ隙間だった。

 機械と魔力を駆使した連弩の速度は凄まじく、一つの窓につき大凡5秒で約80、石戦車三台で合計1200もの鉄尻の矢がメフィストフェレスに一斉斉射された。



「油断するな!そのまま前進!押しつぶせぇ!!」



 だが、指揮官は其処で慢心する程愚かでは無い。

 機動力は棄てたとはいえ人間にとって充分脅威となる速度。

 それを持ってして目の前の化物を排除しようと前進する。


 しかし、それに対しメフィストフェレスはただ手を突き出すのみ。

 だが、それだけで1200もの鉄の矢は見えない壁に突き刺さるが如く、空中で静止した。



「ふふっ」


「ば、馬鹿なっ」



 矢は時が止まったかのように完全に空中で静止していた。

 目の前に広がるあり得ない光景に誰もが息を呑んだ。


 そしてメフィストフェレスは上げた手を振り下ろす。

 ただ、それだけで1200もの鉄の矢は反転し、全く同じ威力を以って斉射された。



「ぎゃっ——」


「うでがああぁぁ」



 咄嗟に反応出来る訳もなく、城門前の兵士達は次々と串刺しにされていく。


 即死ならまだいいが、肩口から腕を吹き飛ばされた者、両脚を射抜かれた者、破片で失明した者など中途半端に生き永らえた者達が血の湖で呻き声を上げる。

 城門前で地獄絵図が広がるなか——



「止まるなッ!潰せぇ!!」



 それでも尚、石戦車はメフィストフェレスを押し潰さんと迫っていった。

 だがその時、指揮官は両隣りで嫌な音を聞いた。



 ——べゴッ、と何か巨大な物が潰れた音がしたのだ。



 そして、信じられない光景を見た。



「な、な……」



 両隣りの石戦車が潰されていたのだ。

 上から圧力が掛けられたようにペシャンコに。接地する地面までもが陥没していた。

 完全に物理法則を無視した異常事態。



「何故だ!魔法はッ、魔法は効かない筈だ!!」



 彼等は勘違いしていたのだ。

 メフィストフェレスが行使しているのは強力な魔法だと。

 だが、実際はただの妖力で、石戦車の装甲などまるで意味を為さないのは当然だった。



「進めえぇぇぇぇぇぇ!!!」



 潰された石戦車を見て、目の前の少女はケタケタと嗤った。



 ——何だこれは。


 指揮官は混乱の極みにいたが、それを払拭するかの如く半ば半狂乱に叫ぶ。


 ——一体、何と戦っているんだ?


 最早退路は残されていない。

 進むより他に選択肢は無かった。



「ごっ!?」



 だが、メフィストフェレスは石戦車を難なく片手で受け止めた。


 慣性の法則を一切考慮しない急静止に石戦車の中の乗員はシェイクされる。

 そして彼女は両手で掴んで持ち上げた。

 重力すら感じさせる事なくふわっと石戦車は持ち上がる。



「アハハハハハハハハハ」



 そして、そのまま、投げた。


 城門に突っ込んだ石戦車は凄まじい轟音と共に門を破壊し地面を削っていく。

 逃げ惑う人々をすり潰し、そして漸く止まった。

 土煙が濛々と立ち込め辺りは静まり返った。



「終わりだ……」


「こんなの勝てるわけがない…」


「『魔王』だ!魔王が復活したんだ!」



 間一髪難を逃れた兵士達は武器を取り落とし、膝をつき、絶望する。

 ——だが彼等には懺悔する時間すら赦されなかった。


 空間が一瞬歪んだ。

 次の瞬間、人々はトマトのように頭の先からペチャっと潰れ、物言わぬ亡骸へと変貌した。

 辛うじて人の形と判る程度に、地面に引き伸ばされた皮が張り付いていた。



「きゃははははははははははははは」



 白の可憐な悪魔は無邪気に嗤う。

 その目は血走り、誰がどう見ても狂人そのものだった。



「に、逃げ——」



 誰か叫ぶ。

 堰を切ったように皆が散り散りに逃げていく。

 城内に家族のいる者、友人、上司、恋人、そんなもの関係なく誰もが自分可愛さに武器を捨て裸足で逃げ出していく。

 だが、無慈悲なる白い悪魔はソレらを指先一つで潰していく。



「〜んふふふ」



 愛くるしい笑みを浮かべながら、まるで機嫌良く掃除でもしている時のように鼻歌交じりに潰していく。

 彼女が指を振るう度に人間はぷちぷちと潰れていった。



「メフィストフェレス!!」



 そんな彼女に突如、背後から声が掛かった。



「チィッ……!」



 声を掛けたリリスは舌打ちをし、咄嗟に回避した。

 ——次の瞬間、リリスがさっきまで居た場所が大きく凹んだ。



「……暴走か」


「オルトロス。二人掛かりでいきましょう」



 元に戻り人化していたオルトロスだが、再び狼化する。

 全力全開で行かねば逆に此方がやられる。

 彼はそう確信していた。


 メフィストフェレスが腕を上げたのが合図となり、二人は一斉に動き出した。

 リリスはメフィストフェレス背後に一瞬で回り込み、頚に手刀を叩き込む。



「……え?」



 ——が、寸前の所で後ろ手に手首を握られ止められる。



(ぐっ、動かない……)


 リリスは万力にでも挟まれているような錯覚を覚えた。

 リリスとて同じ黒円卓議会の一員。

 しかし、一ミリ足りとも腕が動かないのだ。

 それ程に暴走した鬼の地力は凄まじかった。

 ギリギリと手首が悲鳴を上げ、骨が軋む。



(……捻じ切られる……)



「御免」



 と、短く告げてそこにオルトロスが突っ込んでくる。

 リリスごとメフィストフェレスを吹き飛ばし、その勢いは倒壊した家々を薙ぎ倒す。

 数十メートル進んだ所で漸く止まった。



「うっ……」


「大丈夫か」


「何とか」



 とは言うリリスだが、メフィストフェレスに握られた手首は粉々に砕けていた。

 しかし、一週間で治るだろう傷は怪我の内に入らない。

 リリスは無事な方の手で服を軽く払い立ち上がると、気絶しているメフィストフェレスを担ぎ上げた。



「貴方の方が大丈夫そうに見えないけど」


「……問題ない——ゴホッ!」



 返事と共にオルトロスは吐血する。



(内臓と肋骨がイカレたか)


 だが、主人の痛みに比べれば何の事もない。タダの擦り傷以下だ。


 オルトロスも実は気付いていたのだ。

 何故、主人——カルシファーが自分達よりLevelが低く力も弱いのか、その理由に。



「まあいいわ。戻りましょう」


「…………」



 ジルは一足先に城へ帰っている。


 半壊し、炎上した街を背にリリスとオルトロスは無言で駆ける。

 しかしその足取りは重い。


 不意に、リリスの背中で動きがあった。



「………」


「んっ……」



(マズい起きたか!)


 リリスは途端にあゆみを止める。

 負傷した状態でまた暴れられたら如何に二人掛かりと言えど、厳しい戦いになるだろう。

 最悪殺す事も視野に入れなければならない——リリスはそう考えていたが、それは杞憂に終わった。



「ごめんなさい……ごしゅ……じん、さ……ま」


「…………」



 夢でも見ているのか、メフィストフェレスはうなされていただけだった。

 メフィストフェレスを担ぐリリスの背は、彼女の涙に濡れていた。



 ▼▼▼



 ——アインザッツ城王座の間——



 アガリアレプトによりもたらされた報告は、黒円卓並びに下士官問わず城内を震撼させていた。



「貴様らが居ながら一体何をしていたんだ!!」



 今だ伊奘冉イザナミによって、カルシファーの治療が続けられる王座の間に怒声が響き渡った。


 激昂するは獄焔の化身イフリート。

 射殺さんばかりの鋭い非難の視線は、一足先に帰ったジルに向けられていた。

 


「…………」



 申し開きする事は何も無い、と言わんばかりの無言のジル。

 普段の飄々とした顔も今や無い。

 その態度を見てイフリートを纏う紅蓮の焔は一段と大きくなった。



「それにノコノコ五体満足で帰って「まて、イフリート」……」



 怒りに燃えるイフリートの言葉を遮ったのはルシファーだった。

 直後、空間が裂けルシファーが這い出てくる。



「喧嘩なら後でしろ。それに創造主様を襲った攻撃は私ですら予見出来なかった。何か特殊な、魔法でも妖力で何でもない爆発だ。……だが、威力は見ての通り。私はLevelに救われただけだ」



 そう言うルシファーの顔色はまだ悪い。

 まだ全快では無いのだろう。

 だが、驚くべき回復力だった。



(この強靱な身体も驚異の回復力も高いLevelも全て、創造主様の力を奪って得ただけだ。それだと言うのに私は……)


 ルシファーに諭されたイフリートは不満気ながらも引き下がり、防音結界の中のカルシファーを見た。

 敬愛する主の意識は未だ戻らず、伊奘冉が必死に治療を続けている。



「くっ………」



 イフリートは目の前の光景のあまりの痛々しさと、自分の何も出来ない不甲斐なさにやり場のない怒りを感じた。

 そしてそれは彼だけでは無い。



「——で、人間がやったのか?」



 と、普段無口なメタトロンが言葉を発した。

 滅多に感情を表さない彼女だが、今も抑えているとはいえその声は明らかに上擦っていた。



「ああ。獣人の子供をダシにな。親父は子供を庇って……」



 返答するジルの声も微かに震えていた。

 あの光景を思い出したのだろう握る拳からは血が滴る。



「愚かな」


「ゴミ共メ」



 殺気だけで人が殺せる——それは紛う事なき事実だろう。



 王座の間に充満した怒りの波動は、入口を守護する衛兵のリザードマンにも影響が及んでいた。



「——————ッ」



 彼とてアインザッツが誇る一介の戦士。

 種族人間ヒューマンの平均Level20を大幅に上回るLevel40にして、竜種の血を引く強靱な肉体を持つ屈強な戦闘種族リザードマン。


 ——だが、槍を持つ手はカタカタと震えていた。


 自らの背後にある王座の間から、身体中に纏わりつくような明確な殺気が漏れ出していたからだ。

 今すぐこの場を離れたい。

 そうは思うが身体を自由に動かす事すら出来ない。

 此の儘殺気を当てられ続けたら死ぬ、だが、図らずしてルシファーに助けられる事となる。



「——そこまでだ。創造主様の御身体にも障る」



 ルシファーは感情を押し殺し、静かに言った。



「全ては創造主様が御戻りになられてからだ。それまで勝手な行動は起こすな。リリスから聞いていると思うが、これは創造主様の言付けでもある」


「……無論私も彼奴らをただで済ます程、温厚ではない」



 最後にそう言い残しルシファーは再び空間の裂け目に消えて行った。


 リリスとオルトロス、そして気絶したメフィストフェレスが帰還したのはその後直ぐだった。

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