番外編 女神の眠りのそのあとで その3~ぐだぐだな旅~
「こいつと旅に出るなんて、妙なことになったものだ」
「妙なんて言うなよ!親友だろ!」
「親友じゃない」
「じゃあ相棒で!」
「………それは………。」
(照れてる…、けど、口に出したら殴られるな、こりゃ)
……こうして俺たちのぐだぐだな旅は始まったのだった……
☆☆☆
「何このクソデカい荷物……」
「荷物係は雇われのお前の仕事」
「くそっ……重い……」
「魔力を流せ」
「えっ……は?軽くなった!?」
「地属性の重力制御を仕込んでおいた(ふふん)」
「すげぇ軽い……うわっ!」
「大きさは制御できない。風の影響は受けるぞ。気をつけろ。」
「先に言えー!」
☆☆☆
「次の街まではまだか」
「どうした?顔色悪いぞ」
「トイレにいきたい」
「なーんだ、そのへんの林でして来いよ」
「なん……だと……!?」
☆☆☆
〜夜、宿屋にて〜
「今日行ったあの魔法陣って結局なんだったんだ?」
「風魔法……乾燥と循環、つまり古代の倉庫だな……」
「そういうのも調べてるんだなー……モグモグ」
「食べながら喋るな。つまりあそこは昔の穀物か何かの保管場所で……」
「ソレイルはもうちょっと喋ってないで食べろ。」
「十分食べた」
「少食だなぁ……モグモグ」
☆☆☆
宿の主人「すいません……今日は一部屋しか空いてないんですよ」
「えっ」
「ベッドの数は?」
宿の主人「1つ」
「……」
「……」
………
「譲れ」
「今日はさすがに疲れた……」
「雇用主さまだぞ」
「相棒だろ」
「お前のほうが範囲も背もデカい……」
ぎゅうぎゅう
☆☆☆
「………」
「………」
「出来た!土壁!」
「ようやくマトモな発動が……長かった」
「なんだよ〜、お前土壁使えないくせに〜」
「調子に乗るな。焼くぞ」
「ごめんなさい本気の炎は怖いです止めてください」
「大体簡易魔法陣を利用すれば俺にも土壁は……」
「うん、本当にごめんな……」
☆☆☆
〜夜、野宿にて〜
「今日は雨もふらなさそうだし……土ドーム!テントのかわり完成!」
「後は俺が結界を張る」
「それ、大丈夫なのか?雨は通しちゃうんだろ?」
「体感しろ」
「あれ?近づけない?あれ?」
「触れると感知付きの便利さだぞ。甘く見るな」
☆☆☆
「それで?猫を探して引っ掻かれて子供を捜索して誘拐犯に間違われかけ、挙句に下水掃除で泥だらけ、と……」
「だってみんな困ってたんだ!」
「……善意のバカはこれだから……頭が痛い。」
「でもありがとうって言われるのは嬉しいぞ!」
「盗賊に騙されかけた奴が何だって?」
「世の中、裏切るより裏切られるほうがマシ、じゃないか……?」
「バカ(善人)め……さすがにどうかと思う…」
☆☆☆
〜酒場にて〜
「酒の発酵はな、意外かもしれないが土属性がかなり影響する。暗く深く静かにその場を保つ。魔方陣はこうだ。暗さを落として、静かに……」
「お前酔うと面倒くさいな」
☆☆☆
「お前は何が好物なんだ?俺は鶏肉たっぷりのシチュー!」
「知ってる。俺は……皮のついた果物か、多量に置かれている野菜に安心感を感じる」
「安心感じゃなくて好きな食べ物の話だよ!」
「……?特に物を食べたいという気持ちはない」
「この偏食少食め……」
☆☆☆
〜野宿の用意〜
「よし、薪集めたぞ、火頼む」
「ん。」
「便利だなぁ……俺も魔法もっと覚えたい。」
「7〜8歳から13〜14歳までみっちり家庭教師に教え込まれるか学校に行って、その後も行けるなら上級魔法院で研究漬けだぞ。」
「……やっぱりいいや……」
☆☆☆
「なあ、3属性持ちって天才なんだろ?」
「天才というか天災だ」
「?」
「言い換える。災害だ。」
「さいがい」
「視界を闇に閉ざし炎を風に乗せて戦場を作る。地震を起こして津波を起こして日照りで全滅させる。精神と肉体を超広範囲で回復させ続ける無敵の軍団が作れる。言わば化け物だ。……魔法の才能は、呪いだな……」
「お前にとっても、呪いだったか?」
「……今は解けてるよ。」
「そっか。」
☆☆☆
「なんだそれ。光るキノコ?」
「発光キノコだ。光るぞ。」
「見れば分かる……というかそれどうするんだ?」
「リュミエールに贈る」
「次期公爵にそんなモン贈るな!!!」
「そんなモンとはなんだ。光と地の複合属性を持つ大変珍しいキノコだぞ。つまり、地の属性しか持たないお前より上だ。」
「キノコ以下!?」
☆☆☆
「この町の壁材は……ああ、南より大分石が多くなるんだな、採取」
「人の家の壁削るなよ……と言うか飯は……」
「柱の構造が面白いな……メモだ」
「先に何か食べようぜ〜…」
「屋台とかさっきあっただろう。行ってこい。」
「一応護衛なんだよ、忘れんな。……なあ、飯……」
「……仕方ないな。付き合ってやる」
「やった!お前は何食べる?」
「オレンジでいい」
「もっと食え!」
☆☆☆
〜極寒地域にて〜
「今日はオーロラの観察をする!」
「寒い……」
「オーロラは基本的には光と風の魔力が合わさっている。光の男神と風の女神の伝説にもあるな。」
「寒い……」
「水の男神の影響によっては逆さオーロラとかも見られるらしい……今日のタイミングはかなりいいぞ……」
「なあ、寒くね?」
「………寒い。」
☆☆☆
「よーし!みんなー!鬼ごっこだ!」
孤児院の子供たち「わーい! にげろ! こっちだよー!」
「……あいつは本当に子供に好かれるな……ん?」
孤児院の子供たち「……おねえちゃん、なんのごほんよんでるの?」
「……お兄ちゃんだ。……魔法に興味あるのか?」
孤児院の子供たち「うん!」
「なら簡単な魔法陣でいいなら教えてやろう……」
「あいつ意外と子供に好かれるなー」
☆☆☆
「何作ってるんだ?」
「魔法陣。リュミエールに贈る」
「お前が作ったやつなら大丈夫だろうけどさ……一応どんなの作ったか聞かせてみ?」
「光と水の複合魔法陣だ。起動すれば障壁を張り、傷を癒やすぞ。」
「お前光と水ってピンポイントで使えないのに……作れるのか?」
「魔法陣の事だからな。作るだけなら任せておけ。」
「すげーな……」
「そうだろう?(ふふん)ちなみに起動テストはお前にやってもらう。」
「結局俺か!」
☆☆☆
「だから何回も言った」
「はい……」
「あいつは怪しいし、首を突っ込むなと何回も!」
「はい……」
「このトラブルメーカー!盗賊に騙されて3日間牢屋に入る気分はどうだ?」
「本当に申し訳ありません……」
「お前は近衛騎士だろうに……巻き込まれる俺の身にもなれ。」
☆☆☆
「なるべく少なくしてるとはいえ、荷物増えてきたよなー。無限に入る魔法の鞄!とかないのか?」
「ない。そんなものあったら世界の物流の革命だ。……広げる魔法陣は…、重力操作は……。」
「なんか考え出したぞ」
………数時間後………
「それで、どうなった?」
「無理だった。」
☆☆☆
「お前、腰を落ち着ける気とかはないのか?」
「もてない俺への嫌味か」
「いやもててただろう……旅に出る前に、クロエとか、リヴィとか……」
「いい客だったってだけだよ!リヴィは妹みたいなものだし!」
「はぁ……」
「なんだよそのため息!」
☆☆☆
〜風邪っぴきその1〜
「大丈夫か」
「大丈夫じゃない……(ゼーゼー)」
「健康が取り柄のお前が珍しい……(額にタオルを乗せる)」
「ごめん……このタオル絞って……」
「しまった……」
(ゼーゼー)
「(俺が光を使えたら直してやれたのにな……)睡眠」
「(すや……すや……)」
「……スープでも作るか」
☆☆☆
〜風邪っぴきその2〜
「大丈夫か?」
「(ゼーハーゴホゴホ)大丈夫に見えるのか……」
「と、とりあえず飯は作ってみたから……」
「(ゴホゴホ)肉ばっかりじゃないか……」
「で、でも肉は栄養あるし、元気になるぞ」
「今は……食べられる物を……」
☆☆☆
「今日はお前が釣った魚を煮付けにしてみた」
「お前旅に出てからじわじわレシピ増えてくな……」
「面白い」
「どういうところが?」
「正確な下ごしらえ……地域によって調味料の分量で味が僅かに変わる。焼き時間によっても結果が変わる……ふふ」
「研究から離れろ!」
☆☆☆
「深く、深く、死に近いほど……安らかに、眠れ……」
「おお、眠った……これでこの人は大丈夫なのか?もうあんなに恐慌して生きていかなくてもいいのか?」
「まかせろ。安らぎを与えるのは……俺の役目だ。」
「これで一般常識もあれば完璧なのにな……」
「今何か言ったか」
「イイエナニモ」
☆☆☆
〜旅はつづく〜
「次はどこに行く?」
「見たことのないものを見に、だ。」
「最初からブレないなー」
「お前は……いいのか?俺の当てのない旅に付き合わされている」
「今更だな!……本当に今更だよ、俺はお前の相棒!どこだってついてくさ!」
「近衛騎士だろう」
「そこは相棒って言ってくれよ〜」
「五月蠅いな。……両方だ。これでいいか。」
「相棒~!!!」
「………言わなきゃよかった」
……妙な旅だ。
だが――悪くない。
旅は、まだまだ続いていく。




