翼が無くても飛べますか?
ちょっと遅くなりましたが投稿でござい。
0時に辺りにもう1本有る…かも。
――パチッ――
「さぁ…第一目標は達成したし…次の目標は〝自己強化〟ね」
晩御飯を食べ、1、2時間程の小休止を挟んで…私は再びゲームの世界に舞い戻る。
「――いよいよ、新しい〝戦技〟を試せるわ…フフフッ」
もう既に幾つか使い道を考えある…その検証に、手頃な〝相手〟が欲しいわね。
「早速探しましょう…どうせその辺を歩いていれば見つからるでしょう」
そうして、私は自身の巣を這い出し…再び危険な外界へ一本歩みだした…のだけれども。
――ズル…ズル…ズル…――
「……全ッ然見つからない!?」
既に日が傾き始めたからか、それとも単に私の運が悪いだけなのか…散々邪魔してきた角兎含め、ピタリと生物達の活動が見受けられなくなったこの森に、私は思わずそう叫ぶ。
「角兎の一匹も見当たらないってどういう事!?…この世界って生き物の活動時間とかの概念もあるの?」
……有りそうね。
「ハァ…じゃあ良いわ、別の使い方を試しましょう」
私は溜息を吐いて思考を切り替え、本来の目的とは少しだけ違う検証を開始する。
ステップ1、先ずは触手を一本生成します。
――ニョニョニョッ――
ステップ2、次に適当な高さの枝に〈掴む〉を使いぶら下がります。
――プラーンッ――
ステップ3、そのまま身体を前後に揺らして勢いをつけ――。
――ユラユラユラッ!――
ステップ4、タイミングを合わせて掴んでいた触手を離す!
――バッ!――
するとどうでしょう、勢いに乗って私の身体は前へ投げ出され、空に放物線を描いて飛んでいくではありませんか!
「うんうん!――検証は成功ね!」
コレなら地面を這ったり、飛び跳ねて進むよりずっと速いわ!
「後はコレを続けられれば――!」
落下と同時に触手を再び生成する。
――ニョニョニョッ!――
そして、その触手で跳んで行った先に有る手頃な枝を掴む――。
――スカッ――
「……あ」
つもりだった…しかし悲しいかな、私の触手は次に掴むべき枝に手を伸ばすも届かず、自由落下に抵抗出来ずに大地へとダイビングする。
――ベチャッ――
「――ハァッ!!!」
リスポーンと同時に飛び上がる…宛ら居眠り中に落下する夢を見た学生の様に…いや、現実に落ちたんだけどね。
「これは高所恐怖症にはトラウマ物だわ…うん、でもまぁ使い道は全然有る…要練習ね」
図らずも拠点の機能が生きているのかを確認する事にはなったものの、私は気を取り直して再び空中移動を始める。
「思ったより触手の伸縮性は無い…レベルが上がればまた別何でしょうけど、今は精々3メートル程度が限界ね!」
だったら、飛距離は短く…掴める場所が多い道を飛んで行けば良い。
「そう言えば〈跳躍〉はジャンプ力が上がる他にも落下ダメージを減らせるんだったかしら…【能力】の入手方法も後で調べておかないとね」
そうこう考え事をしている内に、熟れてきたのか動きがスムーズになってくる…とは言っても、移動しながら遠くを観察するのはまだ難しいのだけれども。
「――取り敢えず、今はこの〝移動法〟を安定化して、獲物探しに集中しないと…おちおち【能力】の検証もままならないわ」
兎も角、私は私の目的の為に森の中を散策する。
○●○●○●
「ひえぇぇッ、誰かお助けぇ!」
――ポヨン、ポヨンポヨンポヨンッ!――
可愛らしい悲鳴を上げながら、草を揺らしてスライムが飛び跳ねる。
「キュウゥッ!」
「可愛いのに怖いよぉ!?」
そんなスライムを、一匹の角兎が追い掛け回し…傍目に見れば何とも和やかな追い掛けっこが森の中で繰り広げられていた。
「うぅぅッ、僕悪いスライムじゃないのに!――ただ可愛い動物と戯れたかっただけなのに、何で目の敵にされてるのさぁ!?」
…尤も、当事者の彼…ないし彼女には笑い事ではないのだが。
そのスライムの名は【エリス】、彼(便宜上彼と呼称する)もまたこの世界に降り立った〝彼方の獣〟の一人であった。
「キュウッ!」
「可愛い――ぃぃ!?」
そして、彼もまた…多くのプレイヤーと同じ様に、この世界の…残酷なまでの〝摂理〟を理解していなかった。
「ひえぇぇんッ、誰か助けてー!!!」
そう、この世界は弱肉強食…こんなにも小さな兎一匹でさえ、恐るべき捕食者の本能を秘めている、冷酷で無駄のない生命の坩堝であった…それを、彼は理解する事となる…そう。
――タンッ――
自らの死と言う、無慈悲な結果によって。
「キュウッ!」
「イヤァァァ!?!?!?」
着地の隙を、角兎が刈り取る…落下を始めた彼には…迫り来る兎の頭突きを躱す術が無く…ただ迫る死に悲鳴を上げる事しか出来なかった…だが。
――ヒュウゥッ――
「――ミッ!」
そんな彼の死の運命は、唐突な〝乱入者〟によって…掬い上げられる事となった。
「ァァ――へ?」
叫んでいた彼の身体が、強い力で横に引っ張られる…ソレに驚くのも束の間に、彼を掴んでいた〝触手の主〟は、彼を放り投げるとその触手を収縮しながら着地する。
――ポヨンッ!――
「ミッ…ミ、ミィ」
其処に居たのは…一匹のスライムだった…そのスライムは放り投げた彼を一瞥し…困惑している様子の彼が混乱しているのを見ると興味を無くした様にその視線を角兎へ向ける。
「キュウ…!?」
その、唐突な乱入者の姿に角兎は警戒を顕にする…しかし、その存在がスライムである為か、その警戒の中には確かな敵意があり、撤退しようという様子は無い。
「ミ、ミッ♪…ミッ♪」
そんな角兎の様子に、そのスライムは嬉しそうに鳴き――。
――グニョニョッ――
触手を生やして、臨戦体勢を取った。




