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初勝利と再確認

――カチンッ♪――


そんな音と共に、私は目覚める…そして。


「何だこのクソゲー!?」


その声は、誰にも届く事はなく…森の中を木霊した…〝惨敗〟である。


「嘘でしょ、序盤の雑魚敵にも通じない攻撃って何よ!?」


こういうのって最低限ダメージが通るものじゃないの!?それが――。


――ペにょんッ――


「…えぇ?」

「キュウ?――キュッ!」

「グハーッ!?!?」


まさか1ダメージも入らない何て事がある!?


「――ハァァッ!……想像以上にハードだわ…!」


溜息を吐き捨て…私は再び動き出す…また立ち呆けて踏み潰されるのは御免だ。


「最低限、最低限攻撃手段を見つけないと話に成らないわコレ…!」


そうしてまた一歩、歩を踏み出したその時。


――バサッ!――


「クァァッ!」

「……は?」


私は、空から振り下ろされた鉤爪に踏み潰されてしまう。


――〝ブチッ〟――


その瞬間、私の中で何かが切れる音がした。


「フッ、フフフッ…フフフフフッ♪」


腸から湧き出す感情が、私に笑顔を与えてくれる、沸上がるようなこの感覚…懐かしい〝怒り〟の感覚が楽しい。


「――弱肉強食…弱肉強食ですって?…フフッ、良いわ…素敵なルールじゃない」


成る程、ならば私が悪いのだろう…所詮ゲームだと侮った私の落ち度なのだろう。


――スゥゥゥッ――


怒りが込み上げ、その感情を燃料に私の身体は最高の集中力を手に入れる。


「――目的は単純に行きましょう、最優先は〝巣〟の建築…洞窟でも何でもいい、完全な安全地帯を手に入れましょう…ただし」


そのお陰だろう、私は自身の背後から近付く〝敵〟の足音を聞き取り、振り返る…。


「接敵した瞬間に生存は捨てて嫌がらせに走りましょう」

「キュウッ」


其処にいたのは忌々しい〝角兎〟…コレは偶然の邂逅だったのだろう、そのこの子の瞳にも確かな驚きが僅かながらに現れ出る…しかし、私を取るに足らない存在だと認識した瞬間に、その瞳には小さな捕食者としての〝敵意〟を感じる。


「単純な機動力は私の不利、私の攻撃手段は皆無…だから今生でやる事は――」


接敵から一分と経たず、角兎が私に肉薄する…この子の戦い方は分かっている。


「〝攻撃手段の確立〟ね」


脚力に物を言わせた突進、頭を丸め、角を真正面に添える頭突きの構えを見た瞬間、私は一息に跳ぶ。


――ポヨンッ!――


その跳躍が大した高さを稼ぐ事は無かったものの、私は角兎の軌道から逸れる事に成功する。


「角兎の攻撃手段は頭突きの一辺倒、単純な動きだから軌道は読みやすい…ただ」


――ポヨンッ!――


着地と同時に角兎との位置を測る…今の一瞬で既に3メートルの距離…完全に私の射程外に離れられている。


「機動力の問題で、大きく避け過ぎると攻撃出来無いのが難点」


とは言えまさか避けられたとは思わなかったのか、角兎は周囲をキョロキョロと見渡し…そして、改めて私を視界に捉えると、今度はやや敵意を強めて、此方の動きを観察している。


「――でも、イイコト思い付いた♪」


私は、今までの情報を元に作り出した選択肢の中から、一つの〝策〟を選び…その実行に移す。


――グニィッ――


身体から一本の触手を生やす…その変化に角兎は警戒心を抱き始め…私の次の動きを、その丸く愛らしい黒い目で捉える…けれど、私の触手は角兎への攻撃に行使する訳じゃない…いや、ある意味では攻撃と言えるかも知れない。


――フルフルフル♪――


そう…〝精神的攻撃〟…〝挑発〟である。


「ほらほら、鬼さんこッちら〜♪」


自身の身体全体で、相手を挑発する…無意味に触手を振り、身体を揺らし…小さく跳ねる…すると、そんな私の行動が〝挑発〟であると理解したのか、角兎が再び飛び掛かかる。


――ポヨンッ――


「アハハッ、ざーんねん♪」


その一撃を、ヒラリヒラリと躱していく…気分はさながら闘牛士(マタドール)ね…相手は兎だけど。


「キュウゥッ!」

「あら、御怒りかしら?」


怒りにそう唸る角兎に私はそう言い…着地する…この位置なら、都合が良いわね…後は駄目押し――。


――ヒラヒラッ♪――


最後の挑発で、完全に相手を動かせば――。


「なら掛かってきなさいな、おチビちゃん♪」

「――キュウ!」


――タンッ!――


挑発に乗せられて、角兎が頭突きを見舞わせる…減速の気配も無く…角兎は私目掛けて突き進む…本当に。


「〝単純〟ね、貴方は♪」


私はそう言いながら、再び飛び上がる…コレで勝敗は決した…なぜかって?…。


――ボキッ――


「ギュウッ!?」


角兎の頭突き…その進路上には…立派に根を張り、大地と一体になった樹木が聳え立っていたのだから。


「幾ら立派な角が有っても、前が見えなきゃ使えない武器ね?」


樹木に勢い良く衝突した角兎は、その立派な武器を圧し折られ…それだけに飽き足らず、その衝撃頭を割り…角兎は息絶える。


《角兎を倒しました、経験値を獲得します!》

《戦利品を獲得、〈角兎の一本角〉を入手しました!》


頭の中で鳴り響く〝勝利の声〟に私は僅かな充足感を覚える。


この日、この瞬間…私は、この世界で初めて勝利したのだった…。


「――角兎との戦い方は一応確立したわね…とは言え油断出来無いわ」


しかし、そんな余韻に浸る余地も無く…私は直ぐにその場から離れ、木陰に身を隠す。


「私自身の手で倒した訳じゃないもの」


――ザッ…ザッ…ザッ…――


角兎の死体が放つ血の匂いに誘われてか、直ぐにその場には別の獣…痩せこけた狼が現れ、私が倒した獲物を横取りする。


「…何れ、この子も倒せる様にならないと…ね♪」


食事に集中するソレを背に、私はヒソヒソとその場を後にする。


「それじゃあ本来の目的に戻って…〝巣〟を作るのに良さそうな場所を探しましょう♪」


そして、寄り道から帰還すると、木陰を這い…本来の目的である〝巣作り〟に戻るのだった。

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