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生誕、そして死滅

スッ(四本目を置いていく音)

――パンッ――


自身のステータスを確かめていると、ウオッチャーが軽く手を叩き、私を見る。


「さて、ステータスは出来たし…最初のスタート地点は〝森林〟で良いんだね?」

「えぇ、それで御願い」


その確認に、私がそう頷くとウオッチャーの身体の時計がグルグルと回転し始め…ソレに呼応して暗闇が〝崩れてゆく〟…。


「了解…それじゃあ初期のスポーン地点を〝森林〟で固定するよ…〝巣〟を作らないとスポーンの固定は出来無いから、最初はスポーンの固定から目指した方が良いかもね」

「親切にありがと、礼を言うわ」

「ハッハッハッ、君は律儀な子だねぇ…所詮案内人の電子頭脳体(システム・プログラム)だよ?」


別れの間際、私がそう言うとウオッチャーは笑いながら私を誂うようにそう告げる。


「別に、貴方が機械だろうと人だろうと関係無いでしょう?…私は私の利になる人、なった人に便宜を図るし礼を言うだけよ」

「……へぇ…自分本位な考え方だねぇ」

「?…ソレが悪い事なの?」


彼の言葉に私がそう答えると…彼は少し沈黙した後そう言い、何処が目なのかも分からない顔で私を見る…それはきっと気の所為だったかも知れないけれど。


「――フッフフフッ、いや、いいや?…うん、〝良い考え方〟だ、見方を変えれば自己中心、利己主義の化身ではあるが…其れ故に君は〝面白い演者〟に成り得るのだろう」


最後に見せた、彼の〝振る舞い〟には…何処か、計算された物ではない…〝自然さ〟を感じられた…様な気がした。



――パリンッ――


そんな事を考えている内に、私達を包んでいた暗闇は亀裂と共に破砕され…ウオッチャーはその破片と共に光に呑まれてきなてゆく…眩い光が、私を照らし…その眩さに目を閉じた、その瞬間…。





――ピヨ、ピヨピヨピヨッ!――

――ザワザワザワッ――


気が付けば私は、風の遊ぶ…日照りの暖かな森林の、獣道で…小さな球体状の粘体の姿を晒して立ち呆けていた。


「――さて、此処が〝ラクシア〟の世界…凄いわね…」


私の視界には、確かに現実の質感を持った電子の世界が広がっていた…土に触れる感覚、周囲の環境音、風が吹き荒ぶ音までも、鮮明に…〝極めて現実的〟な五感への刺激だった…ソレに、私が思わず見惚れていると。


――ヌゥゥッ――


その瞬間…私を照らしていた影が黒く塗り潰され…周囲が急速に暗く陰る…そして、背に感じた〝獣の息遣い〟に、思わず振り返ったその瞬間。


――グチャリッ――


「――は?」


 私は…のそり、のそりと道を進んでゆく猪の前足に踏み潰され…その生涯を終えたのだった。




――等と終わって堪るものですか。


――カチンッ♪――


踏み潰されたその瞬間…気が付けば今度は、獣道では有るが先程とは少し場所の異なる場所に出た。


「まさか…よね、覚悟してたとは言え始まって一分で踏み潰されるとは思わなかったわ」


だから最初からこの称号が有ったのね。


――――――

〈最弱の魔物〉

最弱と呼び声高い魔物の種に与えられる称号。


効果1:被発見時にヘイト(小)を獲得。

効果2:死亡時のデスペナルティを免除。

効果3:リスポーン後一定時間〝保護状態〟を獲得。


――可哀想に、この世界では君のような者は生きられない…だからせめて、来世に幸多からん事を祈ろう――

――――――


「――いや、 だからといって仕方無いとは言わないけれどね!?」


でもまぁ、昔からこの手の理不尽系はゲームでも現実でも有るし…私は気にしないけれど。


「――こんなの子供がやると泣いちゃうでしょう――」


そして、再びそんな事を考えていると――。


――タンッ――


「ッ!?」


背後から地面を蹴る音が聞こえ、振り返ろうとした瞬間…。


――グサッ!――


私の〝(心臓)〟を…角の生えた兎がその鋭利な角で貫いていた。


獅子神真央、2度目の死。



――カチンッ♪――


そして、その死から蘇った私は…直ぐにこの現実を認識し…思わずポツリと呟く。


「もしかして、私――」


とんでもない世界に足を踏み入れてしまったのではないか?…その疑問に答えが返ってくる筈もなく。


――ダッダッダッダッダッ!――

――グルルルルッ――

――グモオォォォッ!――

――カァァァァァッ!!!――


返答の代わりに、森全体が騒がしくなり殺気立つ…どうやら私はとんでもない場所に足を踏み入れてしまったらしいと改めて自覚する…。


「…取り敢えず、最初に目指すのは〝巣の作成〟からね!」


そして、現在の自分が優先するべき目的を確かに確認すると…粘体の身体、その第一歩を踏み出そうとする…しかし。


――ザッザッ!――


いざ、その一歩を踏み出した瞬間…私の目の前に〝ソレ〟が姿を現した。


真っ白な毛、愛嬌の有る身体…フワフワの手足、垂れた長耳…そして。


――ズオォォッ――


鋭く聳え立つ…〝骨の角〟と赤い眼光…そのフォルム、その形状を見間違えるはずが無い…その姿の獣こそ、己の2度目の死因となったあの獣――。


――――――

角兎(ホーンラビット)】LV3/10

HP:200

MP:150

――――――


忌々しき角兎だった。


「ここで会ったが百年目…って所かしら?」


――グニョニョニョニョッ――


私は、自身の身体から一本の触手を生成し…ソレをしなだれさせる…まだ細く短く、一本生やすだけで精一杯では有るけれど…コレが私が現在有する〝最大戦力〟だ。


「さぁ、この世界初めての戦い…練習台になってもらうわよ…!」


私がそう言うと、角兎は聞こえてか聞こえていまいか、わからかいが。


――タンッ――


睨み合いから一転、私を狩り殺す為に飛び掛かっきた…その行動に合わせ、私も一本の触手を、飛び掛かる速度とタイミングを合わせ、振り抜く。


そして始まったこの勝負……その、結果は――。

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