過酷な鍛錬
――ユサッ、ユサッ…――
『〝―――〟』
「ん…んん…」
眠る私を誰かが揺すり起こす。
『――ナ――キテ』
「ん…誰…」
寝ぼけ眼に私はそう言い、私を起こすその人物に目を向ける。
「――オキタ、レイナ」
その人物の姿を見た私は…その姿をマジマジと見詰め…その人物、魔物が私に語り掛けるのを見た瞬間…急速に冷え込む頭に血を巡らせ飛び起きる。
「ッ!?」
「オハヨウ、レイナ」
驚きに言葉を失う私を脇目に、その魔物はそう言うと…大きな草の葉を地面に敷き、森の樹の実や焼いた獣の肉を私の前に並べて行く。
「角兎ノ肉、食ベルトイイ」
「……す、ライム…さん?」
「ウン、ソウダヨ」
そして、私にそう言い自分の食事を始める暗い赤の肌をしたスライムさんに問うと、スライムさんは頷き、私に言う。
「昨日ノ夜、進化シタ…声モ、真似デキル」
「ッ!…おめでとうスライムさん!」
「ウン、コレデ、簡単二話セル」
●○●○●○
―――――
【マオ・ディザイア】
【マーダースライム】LV1/20
HP:750/750
MP:800/800
満腹:100%
筋力:F+
速力:F−
物耐:F
魔耐:G+
知力:F
信仰:G−
器用:F−
幸運:G
【能力】
〈再生〉LV3、〈触手〉LV7、〈生存強化〉LV4、〈突進〉LV2、〈跳躍〉LV3、〈雑食〉LV4、〈模倣〉LV1
【称号】
〈兎狩り〉、〈小鬼狩り〉、〈野蛮な獣〉、〈貪食〉
――――――
進化の内容を改めて確認する…強化内容は物理寄りで、基本HPは【ビッグスライム】だった頃に比べて減った感じね。
(まぁ、【ビッグスライム】は見た目的にもタンク寄りの進化先だしさもありなんって感じね…)
その分攻撃力は上がってるし…何より手に入れた【能力】が、中々どうして面白い。
――――――
〈模倣〉 レア度:★★★☆☆
能力系統:任意型
殺害し、取り込んだ生物の姿を模倣する能力。
効果1:一時的に種族とステータスを変動させる。
効果2:同レベル以下の看破を無効化し、同レベルの看破の効果を軽減する。
レベルアップ時:模倣の精度が上がり、看破される確率が低下する。
――――――
(コレの面白い所は、〝模倣〟する事で一時的にステータスを変えることが出来るという点)
今はまだその効果を発揮する事は難しいでしょうけど、行く行くは強力な武器になる。
(まぁ、今はレイナとの意思疎通がより簡易になった事が収穫ね)
お陰で、此方からレイナに指示を飛ばせる。
(残り3日…それまでにレイナの魔術を鍛え上げる)
最低限一人で戦えるよう鍛えないと、おちおちイベントにも参画できない。
「レイナ、話しが有るの」
レイナの食事風景を見ながら今後の予定を組み立てる…そして、レイナに次の方針を説明するのだった。
●○●○●○
――ザッ…ザッ…ザッ…――
「あの…本当にやるんですか?」
私は早朝、目の前で佇むスライムさんにそう問い掛ける。
「ヤル、必要ナ事」
私の問いに、スライムさんはそう言い…触手を伸ばす。
「一人デ戦ウ、ソノ為ニマズ練習…一度デ良イ、私ニ魔術ヲ当テテ」
そう、私達は今…私の鍛錬の為に相対していた。
「でも…スライムさんを傷付けたくない」
「ソレデモヤル、強ク成ルニハ実践シカナイ…ソレニレイナ、勘違イシテル」
私がスライムさんにそう言うと、スライムさんはそう言い…その場から消える…その瞬間。
――ドサッ!――
私を後ろから何かが引き、足を引っ掛けられて私は背中から倒れる。
「キャッ!?――」
驚き、思わずそんな声を上げる…そんな私の顔の横を鋭く赤黒い触手が掠め…私の目の前にスライムさんが現れる。
「ワタシハ、レイナノ味方ジャ無イ…飽ク迄モ〝取引相手〟…ワタシハ貴女ヲ保護スル、ソレハ貴女ガワタシニトッテ、価値ガ有ルカラ…貴女ハ魔術ヲ学ビ、ワタシニ教エル…身ノ安全ト引換ニ…取引ノ内容ハ忘チャダメ」
「ッ…」
スライムさんは…私にそう淡々と伝えながら、私の瞳の奥をジッと見詰める…何を考えているのか分からないスライムさんの声と視線に…私は心臓を握られたような恐怖に駆られる。
「――教エテ上ゲル、世界ハ〝対価と代償〟デ出来テイル、対価ヲ支払イ損ネレバソノ代償ハ必ズ取リ立テラレル…当然、貴女ガ学ビ、強クナル意思ガ無ケレバ…私ガ貴女ヲ保護スル理由ハ無イ」
私の元から離れながら、スライムさんはそう言い…再び距離を取る…そして。
「立チナサイ、レイナ…貴女ノ〝価値〟ヲ、私ニ証明シテミセテ」
今度は確かな敵意を持って…私に立つように促す。
「ッ―――〝魔弾〟…!」
その視線に、私は…逆らう事等出来なかった…。
○●○●○●
――ドゴッ――
「――〝魔弾〟!」
レイナの手から、魔弾が放たれる…。
「威力は悪く無い…だけど〝遅い〟わね」
しかし、その弾丸は穿つべき的である私の脇を通り過ぎ…地面に深い穴を開ける。
「動きも単純で一定間隔…コレだと相手に隙を突かれるわよ?」
「ま、〝魔力壁〟!」
着地と同時に、触手を1つ…レイナへ振るう…すると、レイナは寸前の所で魔力壁を展開する。
「――良い反応、でも行く行くは相手の動きに余裕を持って対応しなさい…相手の動きを良く見る事が大事」
「は、はい!――〝魔弾〟…!」
レイナにアドバイスを送りながら触手を戻し、魔弾を回避する…ふむ。
「レイナ…もう少し頭を使いなさい…この訓練の目的は?」
「ッ…スライムさんに魔術を当てること…!」
「そう…〝ダメージを与える事じゃない〟…目的に合わせて魔術の使い方を変えなさい」
「…だったら…!」
魔弾を回避し、次の攻撃を繰り出そうとした…その時、レイナの魔力が少し大きくなり、その手には先程よりも多くの魔力が手に集まっていた。
「〝魔弾〟…!」
そして…再びレイナの手から〝魔弾〟が放たれる。
――ドドドドッ――
〝無数〟に…。
「ッ…良い使い方」
(一発一発の魔力の量は少ないけど、代わりに弾数が多くなった…やっぱり、魔術は応用が利く)
――ドッ!――
面攻撃が私の周囲に広がる中…私は大地に触手の槍を突き立て…その勢いで真上に跳ぶ。
「ッ――〝逃さない〟」
宙に逃げた私へ、レイナはそう言い…魔弾の矛先を上に向ける。
「――惜しい」
その攻撃を交わしながら…再び触手を繰り出す。
レイナが攻撃し、私が反撃する…その攻防はレイナの魔力が尽きるまで続いた。




