時計頭の案内人
本日2本目ぇ、次回は早速本作のキャラメイクやステータス関連を…本作はステータスを活かせると良いなぁ。
――コンッ、コンッ、コンッ、コンッ――
テーブルの上を、ペンシルが踊る…普段長々と続く辟易とした勉学の暇を潰す為に、下らない戯れに耽っていたが…今日に限っては、その暇すら私の無聊を満たす戯れにはは成りはしない。
「……♪」
全く予想外な事に、三大欲求を満たす以外では対した感情も湧き得なかった私の心も、僅かながら未知への期待を抱く程度には真っ当であったらしい。
「……フフッ♪」
今日は金曜日…待ちに待った、と言う程では無いものの…新たな世界に踏み出す日である。
「……」
私は隣からの視線に気づくこと無く…此方を捉え、授業に集中しない生徒を晒し上げんとする極悪教師の視線にも気付く事無く…早く家に変える事で頭の中身は埋め尽くされていた…。
――ガチャンッ――
「ただいまぁ」
「あら、おかえりなさい真央…そう言えば今朝貴女宛に何か届いてたわよ?」
「ん、ありがと」
帰宅後、母からの言伝を聞きながら不要になった社会に溶け込む為の〝外皮〟を脱ぎ捨て、適当な物に着替える…そして、早速お目当てのものを拝見しよう自室に向かうその道すがら――。
――トトトトッ――
「てぇりゃぁぁ!!!」
向かいから迫る〝人影〟の奇襲を受け止める。
――ビシッ!――
「ぎゃふん!」
飛び掛かる人影の、赤紫色の頭頂部に一撃…チョップを撃ち込むと…その人影はそんな音を立てて地面に崩れ落ちる。
「廊下は走らないの、美怜」
「ね、姉ちゃん…相変わらず良い一撃…あ、頭が揺れるぅぅ…!」
妹…獅子神美怜を尻目に、私はそそくさと2階に上がる…そんな私が目新しいのか、母が私に問い掛ける。
「あら?…何か有ったの真央?」
「うん、ちょっとゲームをやろうかと思って」
「え!?――あの食っちゃ寝しかしたことのないお姉ちゃんがゲーム!?」
「失礼な…とは言わないわよ」
騒ぐ妹と、そんな妹に説教する母を背に…私は階段を登り…自室の扉を開く…其処には。
――ズラッ!――
昨日動作を確かめ、丁寧に掃除した電子機器達がベッドに揃えられ、万全の起動準備を終えて私の帰りを待っていた。
「――それじゃ、早速ソフトを入れて――」
ベッドの機材に今朝届いたソフトを挿入する…すると、電子機器達は一斉に蒼く輝き、その輝きで私を誘う…どうやら起動の準備は出来たらしい。
「後は…このヘッドギアを着けて…横になれば…よし、〝起動〟」
音声入力と共に、機械が作動し…私は急速に遠退く意識の浮遊感に、睡眠に似た感覚を覚えながら…その意識を手放す……そして。
――ブンッ――
気が付けば…私は〝暗闇〟に立っていた。
「……」
周囲を見渡してみる…黒、黒、黒…奥行きがあるのか無いのか、そも立っているのか浮いているのかも分からないような空間に少しの間立っていた…だが、その空間に疑問を抱く前に、空間に〝文字〟と〝映像〟が広がる。
『〝創世に混沌在り〟――』
その文言は、このゲームの前置きに合った文言だろう…広がる光景にも多少の見覚えがある…恐らく、世界への没入感を高める為の演出…なのだろう。
「スキップで」
だが、私が求めているのはゲームであってストーリーでは無いのだ…当然スキップを選択する…すると。
『えぇ〜…折角準備したっていうのに〜!』
そんな声と共に、空間がヒビ割れ…その中から一人の男…男?が現れる。
「んもう、最近の〝役者〟は皆そろって最初のムービーをスキップするんだから!――この映像に幾ら掛けたと思ってるのさぁ!」
その男?はそう言いながら怒る様に頭から湯気を出し、ステッキを着いてやって来る…何故その人物の性別に疑問を抱いたかと言うと。
「……人?」
その人物は、凡そ私の知る〝人間〟とは似ても似つかない造形を持っていたからだ。
「勿論、何処をどう見て人じゃないと?」
「その〝頭〟だと思うけど?」
私の疑問に疑問で返す彼に、私はそう言い…改めて男の異様をその目で捉える。
その人物の大半の要素は人だった…如何にも紳士然とした衣装に佇まいだ、けれど…嫌なほど身体に取り付けられた〝時計〟の装飾と、本来人の頭蓋が有るべき場所に構築された歯車と盤面で構成された〝十三の刻を刻む時計〟の頭は…成る程、その人物を人間かと疑うに足る道理だと、私はそう思う。
「む…人種差別かい?…感心しないねレディ、昨今じゃLGBTやポリコレがそこかしこに散見される時代だよ?……時計頭の人間が居たって別に不思議はないだろう?」
「――確かにそうね」
「納得するんだ」
そんな彼の言葉に私は理解を示し、引き下がると彼は驚いた様に顔…時計を回転させて呟く。
「ゴホンッ、失礼〝Mrs.マオ〟…少々仕事から脱線してしまった!――改めて自己紹介を!…私は〝案内人〟…君達〝プレイヤー〟を世界に送り込む為の存在、君達の支援者だ!――どうぞ、よしなに♪」
「うん、宜しくね〝Mr.ウォッチャー〟…私は獅子神真o―〝マオ・ディザイア〟…好きに呼んでもいいよ」
それから気を取り直した彼がそう自己紹介すると、私も同じく自己紹介をして彼に問い掛ける。
「それで、早速ゲームを始めたいのだけれども」
「――ドントウォーリー、心配無用…キチンと案内人の務めは果たすとも…時間の心配は無用だ、〝思考加速システム〟による時間感覚の乖離は正常に機能している…現実ではまだ数分の時も重ねていないとも…だから焦らない焦らない」
彼はそう言うと私の目の前にテーブルを創り出し、其処に腰掛けるよう私に促す。
「ともあれ早速始めていこう…小粋なジョークも交えてね?…紅茶はいかが?、それとも珈琲?…砂糖にミルク、御茶のお供にクッキーは?」
「全部頂くわ、砂糖とミルクは増々でね」
そうして私達は御茶とお菓子を摘みながら、ゲームを始める準備を行うのだった…関係無い事だけど、ゲームの世界でもお菓子や御茶は美味しいのね。




