小さな魔女と大きなスライム
2本目投下ッ、暫しの休息の後執筆を再開する!
「――さぁて、この子どうしようかなぁ」
――と、言うのが私とこの子の邂逅な訳だけど…。
「――た、食べないで…!」
うん……無茶苦茶に怖がられてる、いやそりゃあそうでしょうけど…誰だっていきなり人を惨殺し始める魔物が目の前に来たら怖がるでしょうよ。
「とは言え、〝この子〟に死なれるのは困るのよねぇ…だから助けたんだし」
私は目の前の娘っ子を見ながら黙考し…人の死体と血を吸収する…ん?…〝あの娘を助けたのは彼女が無実だからじゃないのか?〟…ですって?…ハハッ、まさか。
「――〝魔術〟…超常の理法、今後の為に修めておきたいのよねぇ」
ほら、私にはそんな特別な力は無いわけだし…今後仮にその手の搦手でしか有効打が取れない相手と出会ったらと考えると、この機会は逃したくない…。
「この子から魔術を手に入れる為にも、此処で手放す訳には行かない」
けど、怖がられている…なら。
「全力で友好アピールをするしかない!」
ともすればどうするか?…そのヒントは既に得ている――。
○●○●○●
――ヌッ――
「ヒッ…」
怖い、怖い怖い怖い怖い。
目の前のソレがこっちに来る。
――ヌルゥ…――
切り払われた触手も、物の数秒で元通りになり…一息に人を貫いて惨殺した凶器が私へと近付いてくる。
「……ぃゃ」
後退りたくても、身体に力が入らない…生臭い血の匂いに吐き気がする。
(誰か…パパ…ママ……助けて…!)
――ギュッ――
恐怖で目を閉じる、助けを求めた両親が助けに来る事はない…恐怖に塗れた中で、自分の死が迫り来るのを感じ…諦めにも似た感情が湧いてくる…。
私は…ただ、パパと…ママに逢いたかった、だけなのに…。
暗闇の中に沈んで行く…この意識も、何れ消えてなくなるのだろう…そう、考えてから……〝数分〟経った。
「……?」
何時まで経っても、何も起きない…恐怖はやがて疑問になり…私は、遂に意を決して目を開く…そこには。
――プルプルプル――
私の目の前で、触手を振るいながらグルグルと私の周りを回る〝スライム〟が居た。
「ミ、ミッ!」
スライムは、私が目を開いた事に気が付くと私の前にやって来て…その触手をユラユラと揺らす…まるで、無害を表すかの様に。
「……食べ…無いの?」
「ミッ!」
私の言葉にそのスライムはフルフルと首を横に振り、それから赤色の失せた大地に触手を沿わせ…土をなぞる…其処には。
〝■■■?、■■〟
良く分からない文字が…刻まれていた。
「???…コレは…何?」
「ミッ!?…ミィィ…」
●○●○●○
「……食べ…ないの?」
「――よっし、友好アピールは成功!」
フッフッフッ!――これぞこの身体を活かした最善の友好策、その名も〝アニマルセラピー大作戦〟…感受性が豊かな子供ならば、この行動の真意を理解すると言う打算的知的戦略!
「後は此方が意思の疎通が出来る存在だと知らせる事で、此方に引き込む!」
言語は種族の壁故に意思疎通不可!…ならば古来より日ノ本に伝わる異文化意思疎通手段を使う。
――サラサラサラッ――
そう、地面に文字を書き意思疎通を測る。
〝大丈夫?、貴方〟
フッフフフッ…コレなら行けるッ、フッ…あまりの閃きに我ながら感心――。
「???…コレは…何?」
「――……何…だと…?」
まさか…〝日本語〟は通じない?…。
「――いや、諦めるにはまだ早い」
言語文字が通じないなら、もっと時代を遡ろうじゃないか!…。
えぇい、唸れ私の美的センス!――。
○●○●○●
目の前で、化物?…が伸びたり縮んだりしながら、沢山の触手で地面に線を引く。
「――!」
其処には、幾つもの簡単な絵が作られ…地面一杯に描かれたソレを、スライムが順になぞっていく。
丸い…多分、スライムを表す絵と、隣にはバツの引かれた家の絵。
移動するスライムの絵と、矢印の先には槍を持った鎧と、小さな人…恐らく、コレは私と私を追い出した大人達の絵…。
その絵を見て…私は、このスライムが私に何か説明しようとしているのだと理解する。
「貴方…私の言葉が分かるの?」
「ミッ!(コクッ)」
「私を…助けてくれたの?」
「ミ…ミィ(コクッ)」
スライムさんは、私がそう言うと動かしていた触手を私へと伸ばし…私の頭を、身体を…調べる様になぞる。
「ッ擽ったい…」
「ミィ…ミミミ」
それが暫く続き…気が済んだのか、スライムさんは私を触手から解放し…それから、再び地面に絵を描く…ソレは――。
私とスライムさんが…家を探して歩く絵だった。
「ミ?…ミミ、ミ?」
スライムさんがそう鳴きながら、私に触手を伸ばす…ソレは…きっと〝どうするか〟を選ばせているのだろう…私はその触手を見て…思考を巡らせる。
このまま、私一人でこの世界を生きていけるのか…何も知らない…戦った事も無い…私が…〝無理〟だ。
「――私を…助けてくれるの?」
「――ミミ(フルフル)」
恐る恐る、そう問うと…スライムさんは身体を横に振り…地面に絵を描く。
其処にはスライムさんと、私が並んで描かれ、其処から更にスライムさんは線を引き…スライムさんから私へ剣と御飯が、私からはスライムさんへ本と杖が向けられていた。
「…コレは…交換?」
「ミッ!」
「――でも、私は何も上げられる物は無い――」
「〝ミッ!〟」
その絵を見て、私がそう返すと…スライムさんが強く鳴き、首を横に振って私に触手を伸ばす。
「ッ……」
その声と、その仕草は…私の言葉を遮り、行動を求める様に私へ向けられ…その様子に、私はコレが〝大事な選択〟だと思い知らされる。
「……うん、〝分かった〟…!」
考える余地も無く…私はスライムさんの触手を握り返す…。
「私、頑張ってスライムさんに御礼する…だから、〝助けて〟くれる?」
「〝ミッ♪〟」
そして、私がそう言うと…スライムさんが楽しげにそう〝鳴いた〟…。




