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渇望の乙女と地獄の道

――パチッ――


ログインと共に目覚める、外の日差しが差し込んだこの場所は心地良く、ゲームでなければこのまま眠り落ちてしまいそうに成る程だ。


「――ま、流石に今はそんな事しないけどね!」


飛び起きて直ぐ、外界に向かう…そう、私は急がなければならない…なぜなら。


「〝進化〟する…その為には獲物を探さないとだものね!」


今日、この日が沈むまでの間に…昨日戦った〝影色狼〟とやり合えるだけの〝力〟を着けるつもりで居るのだから。


――ヒュンッ――


触手を駆使して木々の間を飛び回る…事ある毎に使っていたからか、もう既に充分動き易くなった。


「――御目当ての獲物は…〝居た〟」


木々の間から、ソレを見つけ出し…そのまま上空からソレを仕留めに掛かる。


――ゴンッ――


「ギュッ!?」

「良し、一撃で殺れたわね♪」

『角兎を討伐しました、経験値を獲得しました!』


そう…目当ての物とは〝角兎〟である…〝角兎はもう狩らないんじゃなかったのか?〟って?…フフフッ、確かに…基本的にはもう、角兎を狩る必要は無い…けれど、今日…今回、この一匹に至っては〝角兎〟は経験値や狩るコスパの悪さ以上の価値を持つ…ソレは。


「フフフッ…コレで御目当ての物は手に入れた…後はコレを丁度いい場所に運んで――」


角兎の…〝死骸〟で有る。


このゲームを開発した人間は、随所に性格の悪さを滲ませている…余程捻じくれた陰険な人間なのだろう、このゲームもその性質を色濃く受け継いでいる。


その中でも、私が特に注目したのは〝ある要素〟だ…ソレが仮称〝死臭システム〟…。


このゲーム、倒した獲物の死体が残る…死体を漁ると、戦闘終了後に手に入るドロップ品以外にも素材を手に入れる事が出来…それだけでなく、我々魔物にとっては貴重な食料源にも成る大事な要素だ…しかし、この〝死骸〟にはその腸の奥よりもドス黒い罠が仕掛けられていた…ソレが〝死臭システム〟による、周辺魔物の誘引効果だ。


コレが曲者で、欲を掻いて死骸を漁り続けてしまうと横合いから奇襲を受けて殺されてしまう…だから昨日の私はなるべく手早くしがいを処理していたのだけれども…。


「〝此処〟なら、丁度良さそうね♪」


私は引き摺ってきた死骸を、森の少し開けた場所に起き…其処で待つ…そう、私は敢えてこの死骸を放置する…理由は単純、昨日までは厄介で悪辣な仕掛けだったこの〝死臭システム〟を逆手に取るのだ。


「――フフフッ…どんどん腐って、沢山血の匂いを出してちょうだいね」


死骸は日に焼け、血の匂いを立ち込めさせ…ソレが、風に乗って四方八方に拡がってゆく…そうするとどうなるのか?


血に飢えた獣は、餌を探す魔物はその臭いに誘き寄せられて此処にやって来る…其処を〝刈り取る〟のだ。


「…勿論、相手が多いと私が不利になるし…基本は格上が相手だから油断は出来無いけれど…〝安全択〟だけじゃ強くは成れないわよね」


リスクとリターンを天秤に掛ける…私の目的を考慮するなら、この程度のリスクで臆しては居られない…。


「どうせやるなら目指すでしょ…〝最強の魔物〟…それなら、寧ろハイリスクを乗りこなして行かないと♪」


そうこうと言っている間に、森に吹く風が止む…嵐の前の静けさと言えば良いのか…周囲からは嫌なほど物音がしない…不気味な沈黙だけがこの場所に満ちている…。


「……〝居る〟わね?」


不意に、私は視線を感じ…その方角に視線を送る…すると、その茂みの奥から、枝葉を踏み砕いて〝ソレ〟はやって来た。


――――――

灰色狼(グレイウルフ)】LV9/10

HP:500/500

MP:400/400

満腹:5%

――――――


其処に居たのは、あの日あの初勝利の後に現れ、私の獲物を横取りした〝狼〟の同種…どうやらこの子も同じく匂いに釣られて来たらしい。


「レベルも良い具合に格上ね♪…狼だから群れられると困ると思ったけど…逸れなのかしら?」


兎も角、最初の獲物…戦いの試金石としては全然悪くない…寧ろ都合が良い位の相手だ。


――グニョニョッ――


「たった一体相手に梃子摺る様じゃ、コレから先が思いやられるもの…フフフッ♪」


向こうも匂いの先にある〝(死骸)〟と〝()〟に気が付いたのだろう…その視線には純粋な殺意と敵意が放たれ…今直ぐにでも喰いかからん程の怒気を感じる。


「貴方もやる気充分みたいね?…それじゃあ始めましょうか♪」


そして、私達が…互いに距離を詰め…その交戦範囲内に足を踏み入れた…その瞬間。


――ダッ!――


「グルァッ!」


灰色狼は牙を剥いて私に遅い掛かった…でも。


「〝遅い〟…!」


私は既に、ソレ以上の速さを体感している…だからその下位互換な灰色狼の攻撃には、余裕を持って立ち回れる。


――ポヨンッ――


一撃を軽く飛んで躱す…最小限の動きで灰色狼の爪を躱し…横合いを捉え、そのまま着地の瞬間灰色狼の横腹に突進する。


――ドンッ――


その一撃は、灰色狼を蹌踉めかせ…確かに彼のHPを削る。


――――――

【灰色狼】

HP:480/500

――――――


そのダメージは確かに軽微だったけれど…純粋な私の〝身体能力〟から発せられた、純粋なダメージだった…。


「フフッ、ウフッフフフッ、アハハハハッ♪」


ソレを目にしたその瞬間…私は嬉しさのあまりに笑みが溢れ出す。


「戦える…ちゃんと戦えているわねッ…コレなら貴方を倒せる、〝殺せる〟わ…!」


蹌踉めく狼の身体に、私は触手を伸ばし、その首に触手を絡みつかせる。


「〝掴んだ〟…さぁ、逃さないわよ…このままじっくり削り殺してあげる!――〝楽しい地獄〟を創りましょう!」


そうして、私達の…地獄の釜口を開く戦いが始まった…。

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