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月を持たぬ白薔薇と虐げられていた私が、王太子妃になりましたが、幼馴染の騎士が独占欲を拗らせています  作者: かなた


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結界の儀式

 王都中央、白亜の神殿。


 天井は高く、巨大な魔法陣が床一面に刻まれている。


 本日は、守護結界の強化儀式。


 王族と高位貴族のみが立ち入ることを許された、神聖な場だ。


 私は本来、立つ必要のない場所。


 それでも、王太子妃として“象徴”として参列する。


 魔力を持たぬ、飾りの存在として。


「始める」


 アルベルト殿下の声が響く。


 高位魔術師たちが円陣を組み、詠唱を始める。


 空気が震える。


 床の魔法陣が青白く発光し、光が柱のように立ち上る。


 王太子が中央へ進み、掌を掲げた。


 翡翠色の魔力が溢れ出す。


 圧倒的な光。


 さすがは王家の血。


 その力が結界へと流れ込んでいく。


 ――その時。


 ぱきり、と。


 嫌な音がした。


 魔法陣の一角が、赤黒く染まる。


「……異常反応!?」


 魔術師が叫ぶ。


 空気が一変する。


 光が暴れ、渦を巻く。


 結界が、拒絶している。


「何故だ……!」


 王太子の魔力は十分なはず。


 なのに、魔法陣が歪む。


 次の瞬間、激しい衝撃波が神殿内を打ち抜いた。


「きゃっ……!」


 足元が揺れ、私は倒れ込む。


 熱い。胸の奥が、焼けるように熱い。


 呼吸が苦しい。


 ――何、これ。


 魔力がないはずの身体の奥で、何かがうごめく。


 白い、眩い光。


 私の足元に、紋様が浮かび上がる。


「……え」


 ざわめきが止まる。


 魔法陣が、私に呼応している。


「馬鹿な……魔力反応が、彼女から……!?」


 あり得ない。私は“空”のはず。


 なのに。


 抑えきれない何かが溢れ出す。


「エリシア!」


 殿下の声。


 だが近づけない。


 私を中心に、結界が暴走している。


 光が刃のように飛び散る。


「近づくな!!」


 叫んだのは、レオンだった。


 次の瞬間、彼は躊躇なく飛び込む。


 暴れる魔力の中へ。


「レオン、駄目……!」


 光が彼の腕を裂く。血が滲む。


 それでも止まらない。


 彼は私の前に立った。


 剣を抜き、魔力の奔流を切り裂く。


「あなたに、触れさせない」


 低く、凍るような声。


 それは敵に向けるものではない。


 暴走する“力”に対して。


「……俺が守る」


 その瞬間。


 胸の奥の熱が、形を変えた。


 溢れる光が、彼へと向かう。


 優しく、包むように。


 暴れていた魔力が、鎮まる。


 まるで彼を、認めたかのように。


 神殿が静まり返る。


 魔法陣は、今度こそ正しく輝き始めた。


 結界が再構築される。


 王都を覆う透明な膜が、完成する。


 成功。


 けれど、視線はすべて、私に向いている。


「……エリシア」


 アルベルト殿下が、ゆっくりと近づく。


 その目は驚きと、そして確信を宿している。


「君は、魔力がないのではなかったのか」


 答えられない。自分でも分からない。


 ただ、はっきりしているのは、私の力は、王太子の魔力では暴れ、レオンに触れた瞬間、鎮まった。


 それが何を意味するのか。理解したくない。


 レオンが、膝をつく。


 傷だらけの腕。


「ご無事で……何よりです」


 騎士の声。だが、その瞳は震えている。


 私の力を受け止めたことで、何かを確信した顔。


「……どうして」


 震える声で問う。


「どうして、あなたなの」


 彼は、一瞬だけ目を伏せる。


「知りません」


 嘘だ。知っている。


 私も、うすうす分かっている。


 アルベルト殿下が、静かに告げる。


「調査が必要だ」


 冷静で、理性的で。


 けれどその奥に、わずかな影が差している。


 ――もし、この力が


 王家ではなく、騎士に呼応するものだとしたら。


 王太子妃としての存在意義は、どうなる。


 神殿の扉が閉じられる。


 噂は、瞬く間に王宮を駆け巡るだろう。


 “魔力を持たぬ姫”は、嘘だった。


 そして、その力は、近衛騎士に応えた。


 均衡は、崩れた。

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