表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月を持たぬ白薔薇と虐げられていた私が、王太子妃になりましたが、幼馴染の騎士が独占欲を拗らせています  作者: かなた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/15

プロローグ

――魔力がすべての国で


この国――ルクセリア王国は、魔力によって成り立っている。


城壁を守る結界も、夜を照らす魔力灯も、遠く離れた土地と交信する水晶通信も。

すべては、生まれ持った魔力の量で決まる。


 魔力は血に宿り、家格を証明するもの。

 高位貴族ほど魔力量は多く、王家はその頂点に立つ。


 ゆえに王族の婚姻は、常に“魔力の強化”を目的としてきた。


 より強く、より純粋に。


 それがこの国の常識。


 それが――正義。


 だからこそ。


 王宮の大広間で私に向けられる視線は、美しくも冷たい。


 魔力灯が天井いっぱいに浮かび、青白い光が床の大理石に反射している。

 貴族令嬢たちはドレスの裾から淡い魔力を滲ませ、宝石のように輝いていた。


 その中心に、私は立っている。


 エリシア・ルヴァルディア。


 公爵家の一人娘。

 そして王太子の婚約者。


 ――魔力を持たない欠陥品。


「信じられます? あの方、公爵家なのに魔力ゼロですって」

「測定水晶が壊れたのではと再検査までされたとか」


 小さな笑い声。


 悪意は薄い。ただの事実確認のように、彼女たちは言う。


 この国において、魔力がないことは“欠陥”だ。


 いくら血筋が高貴でも、どれほど容姿が整っていても。


 それでも私は、王太子の隣に立っている。


 理由は単純だ。


 ルヴァルディア公爵家は、軍事と財政を握る名門。

 王家にとって切り離せぬ存在。


 そして近年、隣国ヴァルディナ帝国との緊張が高まっている。


 帝国は魔導兵器の開発を進めているという噂がある。

 王国としては内政を安定させ、貴族の結束を固める必要があった。


 だからこの婚約は、政治的に最も“美しい”。


 血筋と家格の均衡。


 ――魔力を除けば。


「エリシア」


 穏やかな声が響く。


 振り向けば、そこに立つのは王太子アルベルト殿下。


 金糸のような髪に、翡翠色の瞳。

 その周囲だけ、空気が和らぐ。


 殿下は、生まれながらに膨大な魔力を持つ。


 王家の象徴。


 光のような存在。


「大丈夫ですか」


 私の手を取る所作は、丁寧で、慈しむようで。


 見せつけるためではない、本心からの気遣い。


「問題ございません、殿下」


 微笑みを浮かべると、殿下はほんのわずかに眉を下げる。


「あなたは、あなたのままでいい」


 その言葉は、何度も聞いた。


 慰めなのか。

 励ましなのか。


 それとも、覚悟なのか。


 私はまだ、わからない。


 ――王太子妃は、国母となる存在。


 本来ならば強大な魔力で結界を補強し、王の力を支える役目を担う。


 けれど私は、それができない。


 だからこそ王宮内では、密やかな議論が続いている。


 “側妃を迎えるべきではないか”


 “魔力の強い令嬢を第二妃に”


 それらの言葉は、まだ表には出ていない。


 だが確実に、存在している。


 視線を感じる。


 背筋が、わずかに強張る。


 近衛騎士団の列。


 その中で、ひときわ目を引く青年が立っている。




 レオン・クラウゼル。


 伯爵家嫡男であり、史上最年少で近衛騎士となった天才。


 濃紺の騎士服に、王家の紋章。


 鋭い蒼灰色の瞳が、まっすぐに私を見ている。


 あの瞳を、私は知っている。


 幼い頃から、ずっと。


 魔力測定の日。


 水晶が何の光も放たなかったあの日。


 誰よりも悔しそうな顔をしたのは、彼だった。


『関係ない』


 あの日、まだ少年だったレオンは言った。


『俺が守るよ』


 けれど今、彼は王太子の騎士だ。


 私ではなく、王家に忠誠を誓う存在。


「殿下、次のご挨拶のお時間です」


 静かな進言。完璧な声音。


 何も滲ませない。


「そうだね」


 殿下は私の手を引く。


 歩き出す直前。


 一瞬だけ、レオンと視線が絡んだ。


 その瞳の奥に。


 押し殺した感情が、渦を巻いている。


 嫉妬か。後悔か。それとも......


 王宮の天井には、巨大な魔力結晶が浮かんでいる。


 王家の象徴。


 それは、強い魔力を持つ者の存在で輝きを保つ。


 もし王の血が弱まれば、結晶は曇る。


 国は不安に包まれるだろう。


 だからこそ王太子の婚姻は、国家の問題だ。


 そして私は、その中心にいる。


 魔力を持たぬまま。


 白薔薇のように、ただ美しいと称されながら。


 この国で、最も不完全な王太子妃。


 けれど......


 まだ誰も知らない。


 この婚約が、この三人の選択が。


 王国の未来すら揺るがすことになるとは。


 静かな光の下で、運命は動き始めていた。


初めまして、かなたです!


王子様系婚約者と嫉妬系幼馴染の作品です。

ぜひ皆様に楽しんでいただけたらと思います!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ