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政治経済エッセイ

「原発」や「太陽光」の不都合な真実

作者: 中将

◇2040年の「発電構成割合目標」が決まる



筆者:

 本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。


 今回は、24年12月17日に発表されました第7次エネルギー計画の原案について個人的な意見を述べていこうと思います。



質問者:

 今、どういう発電の割合で、ゆくゆくはどういった未来図を政府は描いているのでしょうか?



筆者:

 2023年度の発電量の構成割合は石炭28.2%、天然ガス29%、石油9%を合わせた化石燃料で66%、

 自然エネルギーは太陽光11.3%、水力7.5%、風力1.1%、地熱0.3%、バイオマス5.9%を合わせて26.1%

 原子力7.7%。


 という内訳になっています。


 これを第6次計画(2030年目標)では化石燃料41%、自然エネルギー36~38%、原子力20~22%、


 今回の発表された第7次目標では化石燃料3割~4割、自然エネルギー4割~5割


 特に太陽光を22%~29%程度とこれまでの2倍以上の割合にしようとしています。

(読売新聞の12月23日の記事では“リスクシナリオ”として実用化の遅れなどで太陽光の割合を14%火力発電を4割としています)


 原子力については割合を2030年目標の「20%」と同じぐらいとしたものの「原発依存度を可能な限り低減する」とする文言をなくし、再稼働の加速や次世代革新炉の開発を進め、再エネと同様に最大限に活用する姿勢を明確にしたものとなります。

(“リスクシナリオ“でも20%と変わらず)


 また、温暖化ガスの排出削減目標については30年度に13年度比で46%減とする現行目標から、35年度に同60%減、40年度に同73%減に引き上げるとしています。



◇原子力は「絵に描いた餅」



質問者:

 まず原発は約3倍も発電量を増やすそうですが、そんなことが可能なんですか?



筆者:

 現状の原発の状況を見るとかなり難しいように思います。


 各々原子力発電能力が違うために稼働基数は参考ですが、

 現状動いている原発は13基で、新規制基準に合格しているのは4基、基準に満たない原発は16基となっています。


 そのために休んでいる原発をフル稼働しても、3倍に届きません。


 そして、当然ですがフル稼働する見込みは無いですし、稼働をしても地震や津波などでまた再停止するリスクもあります。


 現状の「原子力20%」というのは「絵に描いた餅」としか言いようがありません。



質問者:

 原発は発電コストや環境負荷が低いそうなので動いたらいいと思うんですけどね……。

 


筆者:

 それについても本来であれば試算し直す必要があると思うんですよ。


 政府の試算では、「発電コストのうち燃料費の占める割合は15%」


 とあり、残りの85%は運転しようがしまいがかかる固定費のために、一度建設した原子力発電所は、運転させないと費用ばかりがかかる――


 という考え方が一般的です。


 ところがこの試算は「発電時コスト」であり、発電後の使用済み核燃料の処理についてのコスト、環境負荷に対する処置のコストが全く考慮されていないんですよ。



質問者:

 あ……「発電時においてはコストが低い」ということですか?



筆者:

 そうなんです。

 

 特に燃料ウランを発電に使い終わった後の「使用済核燃料」の処理に苦労します。


 この高レベル放射性廃棄物が、放射能レベルが地中に元々ある天然ウラン並みに下がり、人体に安全と言えるレベルになるには、何もしなければ10万年かかると言われています。


日本原子力学会が2019年にまとめた提言では、


「再処理工場で高速炉を繰り返し運転することで、生じる廃棄物の放射能レベルを大幅に下げ、300年程度で天然ウラン並みにできる可能性がある」


 と主張されていますが、


 300年後には現在、生きている人すらもいないので検証は全く不可能です。


 よく「国債は将来へのツケ」とか言いますけど(僕は全くそうは思わないが)、

環境負荷も入れると「使用済核燃料の方がよっぽど将来へのツケ」だと僕は思ってしまいます。


 本格稼働していない六ケ所再処理工場には、建設費だけで3兆円超が投じられていることからも「発電時後のコスト」が尋常では無いのです。



質問者:

 上にあった「次世代革新炉の開発」と言うのは期待できないんですか?

 


筆者:

 これは「移動式小型原子炉」や「核融合」のことを指しているのだと思いますけど、

 いまのところは原子力発電所が最初出てきたときのような「夢のような話」で彩られていますけど、「使用済核燃料」のリスクは多少なりとも付きまとうと思いますよ。


 原子力発電は発電だけでなく、建設から廃炉・使用済核燃料の処理まで含めてコストとして考えなくては非常に危険であると僕は考えます。


 そして原子力を短絡的に「3倍に増やそう」という発想はもっと危険です。

 今一度、踏みとどまって考え直すべきでしょう。



◇「太陽光を増やす」ことの危険性



質問者:

 思ったよりも深刻そうですが、今より2倍の発電量にする太陽光発電についてはどうなんでしょうか?



筆者:

 太陽光発電につきましては、工場の屋根など環境に負荷がかからないところなどにパネルを貼る分にはまだいいと思っています。


 しかし、現状は農地転用や山を切り開いて太陽光パネルを敷き詰めることによって発電量を増やしていっているのが現状です。


 比較的どこにでも貼ることが出来るペロブスカイト太陽電池(まだ開発中)は2040年の発電予想のうちの1割しかなく、「基本的には太陽光の領域を広げる」方向性が見て取れます。


 無理やり山を切り開くなどした場合、交付金を12社停止するなどの措置を24年11月から実行し始めました。

そのために、今後「強引に太陽光の領域を広げる」ことは難しくなるのではないかと思います。


 勿論、環境にとってはとてもいいことですけどね。



質問者:

 またしても「発電時のみ環境負荷が無い」状態なわけなんですね……。



筆者:

 しかも、コストについては「再エネ賦課金」と言った形で電気量に上乗せされています。


 ちなみにこれまでの傾向では「再生可能エネルギーが増えれば増えるほど再エネ賦課金が上がる」という傾向があるので、実を言いますと「太陽光が増えれば増えるほど電気代が上がる」というシステムなのです。


 ちなみに2024年度の再エネ賦課金の単価は「3.49円 / kWh」なので3人家族の戸建て世帯では年間16,000円ほどの負担です。


 これが2倍になれば単純計算で年間32,000円の負担になります。



質問者:

 え……太陽光2倍にするって実は「電気代値上げ宣言」でもあるわけなんですか!?



筆者:

 現行の再エネ賦課金に関連する制度を抜本的に変えなければ残念ながらそうなります。

 これは国が再生可能エネルギーを固定買取制度で買い取っているためです。


 また、太陽光発電のためのパネルの廃棄の際には鉛、セレン、カドミウムなどの有害物質があり、2040年代には産業廃棄物の最終処分量の6%に及ぶという試算もあります。


 更に火災の際には水で消火すると感電リスクがあるために、消火作業は困難を極めるそうです。(水で消化できないわけでは無いようです)


 これらのことをどの程度の方が知っているのか? と思ってしまいます。



◇「水素火力発電」を推進するべき



質問者:

 原子力も太陽光も問題があるとなると、電気のためには化石をモクモクと燃やしていくしか無いんでしょうか……。



筆者:

 現状においては地熱発電がエコではありますが、公園などの下に資源が眠っており中々開発が難しいです。


 そこで、「水素火力発電」をまず僕は推したいです。

 水素火力発電ですと炭素を含まないために二酸化炭素が出ないとされています。

 しかも現有の火力発電所を活用できるそうです。


 ただし、水素には調達・輸送・大量生産に課題がありコストが割高になってしまう事から、今のところ実験止まりで大規模実施には至っていません。



質問者:

 「火力発電は悪」「太陽光発電は善」みたいなイメージがありますけど、全然そんなことは無いんですね……。



筆者:

 固定観念はやめた方が良いと思いますよ。報道による印象操作だと思います。


 あとは人工石油(合成燃料)が期待がされます。


 水素と回収したCO2を合成することで生成される液体燃料でこれが実施が成功しても環境負荷が低いことが期待されます。


 23年3月28日にEUではこれまで、電気自動車の普及を脱炭素化に向けた中心戦略として掲げ、内燃機関エンジンを利用した自動車の販売を制限する方針でした。そんな中、「合成燃料」と呼ばれる燃料の利用を前提に、2035年以降もエンジン車の販売を許容する動きが出てきています。


 2023年9月にはサウジアラムコ、ENEOS、出光の3社がそれぞれが持つ液体燃料や内燃機関に関する技術・知見を活かし、次世代型低炭素燃料である合成燃料の導入を加速させることに合意しました。


 「負の遺産」である原子力の開発ではなくこれらの開発に政府は力を注ぐべきだと考えます。



◇日本全体が「原子力村化」している

 


質問者:

 しかし、上の電源を推進する話や主電源の一部にするという話は全く無さそうだったんですけど……。



筆者:

 日本全体が「原子力村」と呼ばれる官民一体の利権構造が出来上がってきているためだと思います。


 しかも現代人の誰もが必要としている電気を「盾」することによって「反論しにくくなる」と言った性質を持つようになっています。


 更に「情報を絞る」ことで国民側に選択肢を与えない作戦を取り、

 企業側と国の利権・癒着ができやすい性質があるのです。

 

 特に原子力と太陽光は露骨に推進されていますから、導入から廃棄まで莫大な利権が存在しているんでしょう。

 

※原子力村とは原子力発電業界の産・官・学や地元など特定の関係者によって構成される特殊な村社会的社会集団。及びその関係性を揶揄・批判を込めて呼ぶ用語のことです。



質問者:

 根が深い問題なんですね……。



筆者:

 ただ一つ誤解しないでいただきたいのは、

 僕は「原発や太陽光を直ちに根絶して火力発電に移行せよ」と言っているのではないんです。


 合成燃料や水素火力発電はコストが非常にかかるまだ技術開発の段階ですし、「移行期間」と言うのは必ずあります。


 ただ、上記の僕が挙げた「適切な情報」を得た上で国民が判断しなくてはいけないことなのにも関わらず、

 情報を絞られて「そら太陽光だ! やれ原子力だ!」と2040年の目標となっていることに大きな問題を感じているという事です。



質問者:

 確かにきちんとした情報を国民の皆さんが持っていれば、

 意見も変わりそうですよね……。



筆者:

 情報を得た上で国民の多くが同意しているのであれば僕は文句を言うことはありません。


 でも、現状は全く違うのではないか? 表面的な2次元的な情報のみではないか?


 と思ってしまうのです。


 これらは移民問題や経済政策、社会保障などでも共通して言えることだと思いますけどね。


 多角的な3次元的な視点の情報を政府やマスコミは提供してくれることを望みます。


 そしたら僕もエッセイから“卒業”できるというものです(笑)。


 という事でここまでご覧いただきありがとうございました。


 今回は、2040年に3倍になる原子力、2倍になる大要綱について個人的な問題点を挙げさせてもらいました。


 今後もこのように政治と社会問題について個人的な意見を述べさせていただきますのでどうぞご覧ください。

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― 新着の感想 ―
同じ太陽光でも太陽熱のほうならば場所も発電時間も倍以上のコスパかつ使用する素材も廃棄するときも安全なものでできるので、作るならそっちにしろとは思いますよね(基本ほとんどの人が存在を知らないけど・・・)
話がそれてしまうのですが、化石燃料で発電された電気を充電して走る電気自動車って、どれくらいの割合でガソリン車と比べて環境に良いのかなぁって思ってしまうのです。
2024/12/23 20:13 退会済み
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