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第1話 プリティサイダー 見・参!

いふいふのリビルド。

 体育館。

 柔道の試合をしている。

 女子が二人。激しく組み合っていて、顔は見えない。


「ふっ」


 一方の人物が踏み込み、巧妙な足捌きで躱し、背負投げ。

 電光石火の衝撃に、ぶっ倒れる相手。


「一本! それまで!」


 審判が言う。

 と、おもてを上げる勝ったほうの女子。


「ふう……」


 顔が見える。肩ぐらいまでの髪が揺れる。

 ボーイッシュな、中肉中背の女子だ。

 爽やかに汗を拭う。



 ■



 体育館裏。

 階段に座る先ほどの女子と、その周りにたむろすゴツい女子たち。


「スゴイっすよ兄貴! 見事な足捌きっした!」


「さっすが兄貴! 連勝連敗、オールラウンダー!」


「こ、今度ウチの部活にも来てくださいっす! 兄貴!」


 『やすめ』の姿勢で立つ取り巻きが、口々に言う。

 先ほどの勝利の女子が、表を上げる。

 その傍らには、ペットボトルの炭酸飲料が置かれている。


「いや、いいって。俺も暇だったし……だがなぁ」


 と、鬼気迫る表情になる。

 取り巻きたちをギロリと睨む。


「『兄貴』は止めろ。てめえら、しばくぞ」


「ヒイ」


 恐れ慄く取り巻き。女子らしい仕草で、互いに手を合わせ縮こまっている。


「じゃ、じゃあ『姐御』っすか?」


 と、一人が言う。


「うーん。姐御かあ。ちょっと可愛げがないな」


 頭を掻く姐御。


「普通に名前でいいよ。めんどいし」


「じゃあ、リョウさん……?」


「ん。及第点だな」


「り、リョウさんは、ちな性自認どっちっすか? なんか自分のこと俺って呼んでるし」


「あ? いや俺はそんなややこしいセンシティブなもんになった覚えはないよ。普通に女だぜ?」


「はあ……」


 呆然とする女子たち。

 と、その一人が手を挙げて言う。


「そうだ。あっし知っとりますよ。リョウパイセン、小学校の卒業文集に『将来の夢はお嫁さんです。白馬の王子様が』って……」


 ドゴーン、と突っ込む音がする。

 姉御──リョウが飛び出し、その発言者を引っぱたき、壁に激突させた音だ。


「え? 小学六年生で?」


「それって結構やばない?」


「まじかよ……リョウさん割とファンシーだな」


 取り巻きがヒソヒソと噂する。

 と、リョウがギロッと睨む。

 ピシッと整列、敬礼する女子。


「とにかく、俺のこたあいいんだよ。で、今度はどのクラブの助っ人をやりゃあいいんだっけ?」


 リョウがまた階段に座り込む。

 と、たくさんの挙手。


「はいはい! 是非ウチのサッカー部に!」


「いえ、次はウチのバスケットボール部よ!」


「違う! おいの相撲部でごわす!」


 リョウはふう、と息を吐く。

 宥めるように手を振りつつ、傍らの炭酸飲料に手を伸ばす。

 それをグビグビと一気飲みして、容器をクシャッと握り、ポイとそこら辺に投げ捨てる。

 転がるペットボトル。

 と、彼女は挑戦的な笑みで言い放った。

 そのサイダーに濡れた八重歯がチラリと覗く。


「いいぜ。全部やってやんよ」



 ■



 シズルランド。

 地球ではない。空が暗雲に立ち込めている。


「シュワ、シュワ〜〜ッ」


 小動物みたいな影が何かから逃げている。

 フェアリードリンクだ。

 奇妙な鳴き声を発しながら、森の中をその小さい体躯で懸命に走る。


「待てよ、ハハハ!」


 追いかける男。人間ではない。

 と、崖に出た。

 迷った末、決死の覚悟で海へ飛び込むフェアリー。

 それを驚愕しつつ覗き込む男。


「チッ。逃げ足の速いやつだ」


「あら、逃しちゃったの。だっさー」


 と、後ろからマダムみたいな女性が歩み寄る。

 すぐ後に、双子の兄弟も追いつく。


「あーあ。やっちゃったー」


「やっちゃった、やっちゃった!」


 男はムッとした顔をする。


「うるせえ! 大したことねえよ」


「いいえ。怠慢ですよ」


 紳士の声が響き渡った。

 四人は、バッと振り向く。

 と、揃って叫ぶ。


「エゴダスター様!」


 男、マダム、双子の四名はバッと膝をつく。

 皆、敬意を示している。

 が、そこには誰もいない。空っぽの森。 


「も、申し訳ありません! この失態は、必ずや補って見せます! だ、だからどうか……」


 男はひれ伏しながら言う。

 若干の沈黙、緊張。


「ふむ。いいでしょう。ただし、ご存知の通り。しくじったら、あなたがたはいつでも『ゴミ』になるんですからね?」


「ははあ!」


 と、全員恐縮する。

 男は汗を流し、戦慄している。


「時に、あなたたち。人間界用のポイステーが完成しましたよ」


「!? では……!」


 紳士の声だけが響く森に、四名はガバと顔を上げる。

 待望の瞬間、といった目だ。


「そう。時は来ました。さあ、行きなさい。《底無しの欲望(スパークルエナジー)》を掻き集めるのです!」


「『Я(ヤー)』!」


 四名が敬礼する。何かの合図らしい。

 紳士──エゴダスターの不気味な笑いの声が森に響き渡る。



 ■



 温泉旅館。

 玄関の襖を開け、入るリョウ。

 チラチラと周囲を伺い、コソコソと抜き足差し足忍び足で中を進む。


「こら。ただいまくらい言いなさい」


 と、女性の声が掛かる。

 ギクッとするリョウ。振り返る。

 着物姿の女性。女将だ。


「……お袋」


「まあ! まぁたそんな男の子みたいな呼び方して。もっとお淑やかにしなさいって、いつも言ってるでしょう。ほら、『ただいま』は?」


「るっせえな。んなもんいちいちお前に指図受けることじゃあないんだよ。だいいち、オシトヤカってなんだよ。ふざけんな。俺は跡継がないって散々言っただろ?」


「はあ? あんたねえ、仮にも旅館の娘がそんな口ぶりで……」


「だぁから、娘じゃねえって! 仮にもでもタコにもでもねえ! 俺は、旅館とかじゃなく、普通の……」


「まあ! また『俺』なんて言ってるわ。ちょっと躾が甘かったかしら? そんなヤンキーの真似事なんてしないで……」


「るっせ! てめえには関係ないだろ」


「いいえ、あります。私は女将として、次期女将のあなたを更生させてみせます、リョウちゃん」


 立ち去ろうとするリョウ。

 その腕をガシッと掴んだ女将。

 いつの間にか、後ろの客間や調理場から、女中たちがそのやり取りを覗いている。


「……だから」


 リョウが下から睨み上げる。

 八重歯の牙を剥き出しにして、威嚇。

 睨まれる女将は少し狼狽する。


「俺は、ここを継がねえ」


 低い声で言い放つ。青くギロッと光る目。

 と、バッと腕を振り払い、スタスタと階段を上るリョウ。

 残される女将。

 若い女中さんがオロオロと見ている。


「まぁた、やってるねえ!」


 と、客のオヤジが酒瓶を持って笑いながら客間の襖から身を乗り出す。



 ■



 温泉。

 カポーン、と湯に浸かるリョウ。

 他の人間はいない。貸し切り状態だ。


「ふう……」


 女湯の暖簾の前には『清掃中』と書かれた看板がある。

 どうやら、リョウが設置したらしい。


「ったくあのババア。何が次期女将だ。寝言は寝てから言えっつーの。大体、古いんだよ跡継ぎって。耄碌したか、クソババア」


 と、ブツブツと独りごちる。

 頭に畳んだタオルを乗っけている。

 そのタオルごと、襟足の髪の毛を湯に浸からないように上方で押さえている。

 露天風呂だ。真っ暗な夜空に、満天の星が。

 その景色を見上げて、ふと黙るリョウ。

 手で頭のタオルを押さえているので、滑らかな白い脇が露わになる。


「俺は……」


 と、その腕を上げて星を掴むポーズ。

 ボーッとした表情。

 その脳裏に取り巻きたちの尊敬の目がフラッシュバックする。


(すごいっすよ兄貴!)


(リョウさんカッケーっす!)


「ふ」


 と、リョウの口角が上がる。

 が、すぐに母親──女将の怒った顔、悲しげな顔を思い出す。


(なんで、あんたはそうなの?)


(どうして、そんなふうになってしまったの……)


 リョウの口角が再び下がる。

 フ、と伸ばした腕が掠める。星は天に浮いたままだ。


「……うん?」


 と、そこへドンブラコ、とキーホルダーのようなものが流れてくる。

 ドリンクキーホルダーだ。

 ソーダの形をして、小さいがなかなか綺麗だ。


「なんだこれ? 誰かの落とし物?」


 リョウがゲットする。首を傾げる。

 と、ジャバッと立ち上がって、伸びをする。


「うーん。のぼせちまうまえに上がるか。さて、明日は何部だったかな……」


 てちてちと風呂を上がるリョウ。

 その手にキーホルダーが握られている。



 ■



 二階。リョウの部屋。深夜。

 ファンシーなウサちゃんの時計は0時を回っている。

 リョウはちゃぶ台に向かっている。勉強中。

 数学の問題。鉛筆で、与式を微分して定数αの範囲を求めている。

 と、あくびをかいて、にわかに寝転ぶ。

 その手にはドリンクキーホルダーが。

 ソーダボトルの形をしたライトブルーのそれは、窓の月明かりに照らされてキラキラと輝く。

 と、何かを思い立ったようにムックリと起き上がる。

 学校のカバンを引っ張る。

 その取っ手部分に、キーホルダーを取り付けた。

 揺れるキーホルダー。中のライトブルーの液体も揺れる。


「ふふっ」


 微笑むリョウ。その顔は女の子の表情だった。



 ■



 同時刻、深夜。例の体育館裏。

 リョウが投げたペットボトルの容器が、暗い紫色に妖しく光る。



 ■



 翌日。昼。学校。教室。

 『二年C組』と書かれた看板。

 授業中。教師がロシア二月革命について講義している。

 うっつらうっつら、船を漕ぐリョウ。昼休みが終わり、五時間目だ。

 やがてその眼が閉じられる。

 寝ているリョウ。

 机に突っ伏し、よだれが垂れている。

 と、遠くでドーンと大きな音が鳴る。

 ビクッと驚いて起きるリョウ。


「ふぁ?」


 と、周りを見渡す。

 なんと、教室全員(教師含め)がシエスタしていた。

 目を丸くするリョウ。


「な、なんだこの状況……」


 椅子から立ち上がる。

 と、再びドーンと大きな音。

 窓を見遣る。空が暗雲に立ち込めている。

 そこには巨大な怪物がいた。


「なんだあれ!? つか……」


 と、気づく。眼を擦る。

 怪物がいるのは、旅館の方だ。

 一溜め置いて、言う。


「俺の家!?」


 カバンを持ち、走り出すリョウ。

 そのカバンには、あのキーホルダーが付いてある。

 他の全員は依然として眠っている。

 リョウは教室を後にする。



 ■



 温泉旅館。

 ママチャリで辿り着いたリョウ。

 庭で女将が倒れている。


「お袋!」


 駆け寄る。

 抱きかかえ、安否確認。眠っているだけだ。

 と、怪物が歩いている。


「なんなんだ、あの化物は……」


 怪物は、潰れたペットボトルの形をしている。

 かなりの質量があるらしく、歩くたびにドシンドシンと地響きが鳴る。


「ゴーミゴミゴミ!」


 怪物が笑う。奇妙な鳴き声だ。

 リョウに気づく。途端、怒ったようになって寄ってくる。

 旅館との距離が縮まる。


「な!? ざっけんなコラァ! こっち見んなこっち来んな!」


 リョウは女将を庇いながらシッシと払う。

 が、怪物の歩みは止まらない。


「う……クソッ」


 迷った挙げ句、立ちはだかるリョウ。

 両手を広げ、仁王立ちになる。


「ここは俺の家だ。来んなら容赦しねえ」


 低い声。威嚇するように唸る。

 と、ペットボトルの怪物が殴る。

 咄嗟に女将を庇いながら避ける。

 半壊する旅館。『涼』と書かれた看板が割れ、宙に舞う。

 その風景がリョウの眼に映る。


「あ……」


 と、リョウの脳裏にフラッシュバック。

 女将と過ごした日々、思い出、記憶。

 幼い頃から暮らしてきた旅館。


(回想)


 魚を捌く幼女リョウ。難しい顔をして、後ろで女将が微笑みながら見守っている。その隣に父親の姿もある。


 客のオヤジたちと戯れるリョウ。人の良さそうなオヤジの膝の上に乗っかる。それを見て止めようとする女将。『申し訳ありませんウチの娘が』『いいってことよ』みたいな感じだ。


 花瓶を割って怒られているリョウ。父親に廊下で立たされている。それを見る使用人たちが『またやったか……』みたいな呆れ顔。幼女リョウは半泣きだ。


 家族と笑い合うリョウ。従業員や常連客から愛されているリョウ。


 と、画面が灰色に変わる。父親の遺影。

 畳の上で、骨壺を抱き、うなだれる女将。

 それを襖から見ている、ランドセルを背負ったリョウ。高学年くらいだ。

 女将はおもてを上げ、リョウに言う。


「ごめんね。ごめんね……リョウ」


 リョウの灰色の瞳が何かに打たれたように瞑られる。

 と、再び脳裏に、飛び散った『涼』の看板のフラッシュ。


(回想・終)


 俯くリョウ。その表情は見えない。

 その横に『涼』看板がガッと吹っ飛び落ちる。


「ゴミー!」


 再び怪物がパンチを振りかぶる。

 と、リョウからまばゆい光が放たれる。

 拳が光に弾かれ、怪物の目が眩む。

 庇っていた女将を安置し、ユラリと立ち上がるリョウ。

 目を開く。青い瞳になっている。

 唸るような激怒の声が上がる。


「いいぜ。お前もやってやんよ!」


 リョウは叫ぶ。

 と、カバンのキーホルダーが飛び出す。

 それがリョウの身体と融合し、泡に包まれる。

 ドリンクキーホルダーがサイダーに変化し、それを飲み干すリョウ。

 口を拭い、八重歯が覗く。

 変身シークエンス。


「シュワッと弾けて漲るパワー

 プリティサイダー 見・参!」


 リョウが口上を述べる。

 決めポーズ。


「!?」


 リョウは驚く。自分の身体を見る。

 制服姿ではなかった。

 ライトブルーの柔道着のようなズボン。

 それを腰で留めるように巻かれた青帯。

 そしてなにより、上半身裸。


「にゃああああああああ!?」


 咄嗟にうずくまる。胸を隠す。

 そのバストは、結構な大きさだ。


「何だよこれ!? へ、変身した!? つーかなんで裸!? 俺のサラシは!?」


「変身したシュワ、すごいシュワ〜〜!」


 と、どこからか変な声が聞こえた。

 腰を見る。

 帯に変なキーホルダーが引っ掛かっている。

 が、さっきの形とは異なり、少し大きくなって、しかも喋っている。


「な、なんだお前!?」


「シュワはサイダーのフェアリードリンクシュワッ。ポイステーたちをやっつける為に、地上に降りてきたんだシュワッ」


 その奇妙なキーホルダーは、リョウの腰元でピョコピョコと動いている。

 しゃがみ込むリョウは、新出単語のオンパレードに混乱する。


「な、なんで俺は裸なんだ!? それに、プリティサイダーって何だよ! なんか口から勝手に出てきたけど! ふざけんな、なんで俺がこんな目に……」


「あいつをやっつける為シュワッ」


 と、キーホルダー──シュワは怪物を指す。

 怪物は形勢を立て直し、再度攻撃に出る。


「どぅわ!?」


 変な叫び声を上げつつ、避ける。

 と、ありえないくらいの跳躍で斜方投射される。


「ちょ、これ着地……」


 ズザーッと地面に叩きつけられる。

 全て自らの動作で起こったことだ。


「痛ってえなこのやろ! ……って、アレ? あんまし痛くない?」


 ガバッと起き上がるリョウ。

 自分の身体の変化を確かめるように、ためつすがめつ触り、ワキワキと手を握る。

 と、己が上半身裸なことを思い出し、赤らんで再び胸を隠す。


「それがプリティサイダーの『力』シュワッ。さあ、思う存分にやっつけるシュワ!」


「あ゙!? なんでだよ。なんで俺が倒さなきゃなんねーんだよ! 何が何だかよくわかんねーけど、無関係だろ、俺!?」


「ゴミー!」


 と、またアタックする敵。反射で避けるリョウ。


「うわ!」


 すぐに要領を得たらしく、今度は着地できた。

 街に出た。

 すると、他の人々も教室の皆と同じく眠っている。

 リョウはその後も華麗なステップで避けつつ、シュワに話す。


「おいお前! あのゴミゴミ言ってるやつは何なんだ?」


「お前じゃなくて、シュワは『シュワ』シュワッ。あれは『ポイステー』シュワッ」


「ポイステー? んだよそれ。つか、シュワシュワって……」


「『シュワ』! シュワッ」


「……名前がシュワで語尾がシュワで一人称までシュワなのか? ややこしいな全く。つかお前も何者なんだよ。最近のロボットってすげえな」


「ロボットじゃないシュワッ。『フェアリードリンク』の『シュワ』だシュワ!」


「何わけわかんねーこと言ってんだ。……うわ!」


 と、ポイステーに吹っ飛ばされる。

 横受け身をとるリョウ。コンクリートにぶつかり、落下し、座り込む。


「くそ。何そんなにせかせかしてんだ、あんニャロ。短気なやつはモテねーぞ」


「シュワ〜〜。怒ってるみたいシュワね」


「ああ? 怒ってる? アイツが? なんで?」


「あのへっこみの所為シュワか?」


「へっこみ……?」


 と、見上げるリョウ。

 ペットボトルのポイステーには、胴体部分に手で潰されたような跡があった。

 そして、ラベルに気がつく。

 いつもリョウが愛飲しているサイダーのペットボトルだ。


「あの跡。……もしかして」


 フラッシュバック。昨日、体育館裏でリョウがポイ捨てしたペットボトル。草むらに虚しく転がった、空のペットボトル。


「……そうか」


 俯くリョウ。と、すぐに青い瞳で顔を上げる。


「なんだか、俺にも責任の一端があるみてえだな。自分の不始末だ。自分で、片付ける」


 立ち上がる。裸足がライトブルーに光る。

 ポイステーが攻撃する。

 リョウは華麗に跳躍すると、その巨大な腕を駆け登って敵の顔面に蹴りを入れる。

 と、その光る足から無数の泡が一瞬に放出され、爆発する。

 吹っ飛ぶポイステー。必殺技(サイダースパーク、蹴り)を受けた。

 歩み寄り、ポーズをとるリョウ。


「飲んだ後はゴミ箱へ。……お前の人生、リサイクルだ!」


 敵の身体が青い光に包まれ、消滅する。



 ■



 夕方。旅館前の高い木の上に腰掛けるリョウ。

 街が光り、元通りになる。暗雲が消失。

 温泉旅館も元の壊れていない状態に戻っている。

 リョウの変身が解けた。元の制服姿だ。

 その光景を目の当たりにして、呆然とする。


「何なんだこりゃあ……」


「やったシュワ、やったシュワ〜〜!」


 シュワが飛び付く。リョウに頬擦りする。

 それを見てハッとする。


「お、お前宙に浮いてるぞ! え、え、どうなってんだ!?」


「スパークルエナジーのおかげシュワッ」


「スパ……何だって?」


「プリティサイダーが戦ったおかげシュワッ。ありがとうシュワッ。これからもよろしくシュワッ」


「は!? これからも!?」


「シュワ〜〜!」


 シュワは嬉しそうにぴょんぴょんと浮遊している。

 それを見て、リョウは疲れたように溜息を吐く。

 木の上からは夕暮れの街が見渡せる。

 リョウは、いつもの炭酸飲料をぐびぐびと飲む。

 飲み終わると、ふと容器を見つめる。

 と、それを向こうのペットボトルゴミ箱へ投げ入れる。

 ガコッとシュートするペットボトル。

 ニヤッと八重歯で笑うリョウ。

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