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第67話 ウル vs 大船団

 僕らがエスメラルダ号まで戻ると同時に、付近に水柱が上がった。

 いつの間にかリドニア帝国の船団が射程距離に迫っていた。


「この時間がない時に!」

人魚の里にクラーケンが迫っている中、後方から帝国の船団が迫っており僕は焦っていた。


『我は先程の砲撃でとてもクラーケンを相手にできる状態ではない......すまないフリュー』

 あれほど強気なティアマトが項垂れており、本当に怪我が酷いことがうかがわれた。


「僕がなんとかしてクラーケンを止める。

 でも間に合わいそうにない」


「このエスメラルダ号でも、途中から浅くなるから人魚の里には進めないわよ。」

 

 僕たちが困っていると、ウェヌスは決意したように言った。

「私たちセイレーンの戦士がクラーケンを足止めして時間を稼ぎます......」


「でもどうやって?」

僕の質問にウェヌスは悲しそうな顔で答えた。

「それはまだ分かりません。

 でもそれはフリュー様も同じでしょ?

 なんとかしてみせます。」


 ウェヌスはエスメラルダ号の船首に立つと、歌を歌い始めた。

 その歌はとても美しく、そして悲しげだった。


「仲間を呼ぶ歌ね。」

 ウェヌスの周りの海面には、センレーンの戦士たちが1人また1人と集まって来ていた。

 歌が終わると、ウェヌスは海に飛び込み戦士たちと共に人魚の里に向かった。


「じゃあ私たちもウェヌスの後を追う、出発の準備なさい!

 でも浅瀬から先はどうするかよ。」

アリタリアがそう言うと海上から声が聞こえた。

「おーい! アニキ!」


 船縁から覗き込むとそこにウルとリディが小さなヨットでやってきた。


「良いところに来た!

 でも船は大丈夫だったの?」


 リディが答えた。

「親父様が乗ってるシーガル号は無事よ、でもシーキャット号が化け物に沈められちゃった。

 仲間の仇をうちたい、何か出来ることはないかしら?」


「ちょうどお願いしたい事があったんだ、そのヨットで僕をあの怪物の所まで運んでくれないか?」


「お安い御用よ! さあ乗って」

僕はリディのヨットに飛び乗った。


「アニキ、おいらはどうする? 

 あんな化け物はおいらの爪は役立たないぜ」


「そうだなぁ......そうだ。

 ティアマト! 僕の仲間をヴァンパイアの船まで送り届けてくれないか?」


『いいだろう、乗るが良い』

ティアマトはそう言って首を垂れた。


「ウルはヴァンパイアの船に乗り込んで暴れてきてよ。 出来るだろ?」


「ヴァンパイア相手なら任せて!」

ウルはそう言ってティアマトに飛び乗った。


「わぁ、竜に乗るのは初めてだよ。

 おいらはアニキの弟分のウルよろしくね。」


『我はティアマト、フリューの弟分なら我の友という事だ、さあ行くぞ』

ティアマトはそう言って帝国の船団に向かった。


 そして、僕とリディのヨットはエスメラルダ号に曳航されて、クラーケンを追った。



----------


 

『さあこれから潜ってあの船に近づくぞ...と、言葉が交わせないのは困ったものだ。

さてどうするか?』


 ティアマトは良い考えが思いつき、頭の上のウルを海面に落とした。

 そして、口を開けそれを()()()


「モガモガァ......おいおい急に何するんだ!

 真っ暗、ここはどこだ?」


 しばらくすると、突然光が見え、目に前に大型船の船尾があった。

『ほら行くが良い』

「竜の口から生還したのはおいらだけだろうなぁ」

 ウルは船尾に飛びつくと船体に爪を立ててとりついた。

 

「おいらは足止めが任務だろ? ただ1隻沈めてもね」

 ウルは操舵手の後ろから静かに近づき、音をたてず息の根を止めた。

 そして操舵輪をいっぱいに切って急旋回を始めた。

 異変に気づいた屍人が集まってきたが、ウルは操舵輪を守りながら屍人を切り裂いていく。


「ぶつかるぞ!!」

 ウルが乗った船が、突然旋回して別の帝国の船に衝突した。


「よしこれはオマケだ!」

ウルは大砲を占拠すると、適当に船団の中心めがけて砲撃を行った。


ドゴォッン


 突然に一隻が急旋回して別の船に突っ込んだかと思うと、突然味方の船を砲撃し、船団は大混乱に陥った。


「何者かが潜入したようだ、屍人はあてにならん我らで仕留めるぞ。」

 ヴァンパイア10数体が飛び立って、衝突して出火した船に集まってきた。


「待っていたよ、お前たちが来るのを」

 炎の中に爪を研いでくつろいでいた狼人族がいた。

「さあ、狩の時間だ!」

ウルはそういうと、空中で羽ばたいておるヴァンパイアの飛びかかってその鋭い爪で切り裂いた。

 そのまま、落ちる事なく死んだヴァンパイアを踏み台にして次のヴァンパイアに襲いかかった。

「相手は一人だ、殺せ!」

ヴァンパイアが複数で取り囲むも、ウルは素早いステップでその包囲を抜け、一体また一体と殺していく。

 

 十数体のヴァンパイア全てを仕留めるのに、そう時間はかからなかった。


 ウルが再び大砲を別の船にぶっ放すと、痺れを切らした別の船から反撃の砲撃が始まり、2隻は炎上した。


「こりゃまずい!」

ウルは炎上した船から海に飛び込むと、隠れていたティアマトがパクリと咥えて、潜って行った。


 船団から離れた場所でティアマトは浮上して口を開けた。

「あー死ぬかと思ったよ。」


 船団を見ると炎上して沈んでいく2隻をそのまま残して再び走り出した。


「あんだけじゃあ大した時間稼ぎにならないか......もう1隻沈めるよ。ティアマトお願い。」

 ウルがそう言うと、ティアマトの口が閉じて再び沈んで行った。

 

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