第4話 賢者の追跡と聖女の秘密
暗部の愚行を止めなくては、、、
私、ラヴィーネは、情報を下に馬に乗り大森林に急いだ。
途中街道で、多頭立ての馬車とすれ違った瞬間に血生臭い匂いを感じ、私はすぐに戻ってその馬車を止めた。
その馬車の御者席には、怯えた顔の2人の少年が乗っており、荷台から血の匂いが漂っていた。
間に合わなかったか…
「私は、宮廷魔術師長ラヴィーネ、君達は暗部の者だな?」
少年は私の身分を聞いても、余計なことは言うまいと「はい」とだけ答えた。
「なにがあったか教えてほしい。」
私の問いかけに少年らはだんまりを続けていた。
「分かった。 自分からは余計なことは何も話さない、それが君達の組織の掟だったな。
それでは私の質問にだけ答えてほしい。
君達は、荷台で死んでいる男たちと一緒に、フリューを暗殺に向かい返り討ちにあった。そうだな?」
「はい」
「君達は、フリューからの言伝を託され、王都に帰還している。そうだな?」
「はい」
「最後の質問だ、フリューからの伝言はなんだ。」
「はい、
王国の考えは理解した。
敵対する者は誰であっても殺す。
例え勇者、聖女、賢者も例外はない。
それが伝言です。」
「わかった… 君等はそのまま王都に帰ってその伝言を上官に伝えなさい。
私はフリューを追う」
そう言い残すと、そのまま大森林の方向へ馬を進めた。
最悪の事態となったな… 私は頭を抱えた。
フリューは、国の暗殺者を多数殺害したことで反逆者認定されることは間違いない。
それにフリュー自身が王国に敵対の意思を示している。
この私を殺すだと?
王国の宮廷魔術師としてフリューに会えば殺し合いか…
見晴らしがいい広い場所なら遠距離攻撃が得意な私が有利だろう。
だが、このような森林や市街地などならどうだ? 私はフリューを見つけることも出来ず、殺すことなど到底無理な話だ。
今後、騎士団を差し向けても返り討ちにあうことは目に見えている。
では、次にどう出る?
フリューを倒すには少数精鋭の最強兵力が必要、つまりだ… 勇者でなければフリューを殺せない。
その一生を見届けたいと思った相手からこれほど恨まれるとはな...
私は、先が真っ暗になるのを感じた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
賢者ラヴィーネが王都を出て数刻後、王城、王の間にて国王の謁見が行われた。
玉座に座る国王の前には、勇者アイリス、聖騎士アーサー、聖女エレナの3人が並んでおり、
脇には上級貴族が参列していた。
式次第に沿って、国王からの言葉が発せられた。
「この度の魔王討伐ご苦労であった。
この場を持って、この度の魔王討伐の恩賞を言い渡す。
まず聖騎士アーサー、この功績をもって正式に、ローゼンブルク王国皇太子に任命する。」
「ありがとうございます。」
このことにより王位継承の序列が確定し、アーサー王子は歓喜の笑みを浮かべていた。
王の言葉は続いた。
「続いて勇者アイリス、聖騎士アーサー、聖女エレナ、そして特命でここには不在であるが賢者ラヴィーネ、正式に皇太子アーサーの婚約者とし、これをもって魔王討伐の恩賞とする。」
王の言葉に対し、参列者からの大きな拍手が送られた。
さらに国王の言葉に続き、宰相サイロスから言葉が付け加えられた。
「皆様方、この度の報奨にご意見はありませんな。
形式的ではありますがこれを持って謁見を終わります。
このあと祝賀会がございますので、国王の退席後、会場の移動をお願いします。」
「少しよろしいでしょうか?」
その時、聖女エレナが声を発した。
聖女エレナは、20歳になる長いプラチナブロンドの髪の美しい女性で、日頃の控えめな態度から、この国の重鎮でもその声を聞いたものはわずかであり、それゆえに皆が驚いていた。
「発言を許そう、聖女エレナよ。」
王からの許可を得てエレナは言葉を続けた。
「私は神に使える身であり、この度の恩賞は受け取れません。
私の恩賞は、魔王討伐の最大の功労者である斥候のフリューにお譲りしたいと思います。」
その言葉に対して、宰相サイロスは慌てて口を挟んできた。
「陛下! 斥候など、勇者一行ではありません。
裏方として参加した斥候のフリューという者には私からすでに報奨金を渡しております。 王が気を止める必要はありません!」
慌てる宰相を静止して、王は言った。
「待てサイロス、お前には発言は許していない。聖女よ最大の功労者がフリューだと言ったな。その者は何者だ。」
「はい国王陛下に申し上げます。 フリューは私達勇者一行5人目の仲間です。
私は、フリューが孤児院の出であるが故に勇者一行に名前が挙げられていないとそう聞いています。」
「ほお、ワシの耳にはそのような話は聞いていないぞ。」
国王はそう言うと、サイロスを睨みつけた。
エレナは話を続けた。
「しかし、孤児院の出であるが故に、勇者一行に名を連ねられるのがはばかれるのであれば、私も勇者一行を名乗ることは出来ません。
なぜなら、私は、オーランド家の養子となりましたが元はフリューと同じ孤児でしたから。」
聖女その言葉に会場がざわついた。
聖女が拾われた孤児だなど、貴族にとって醜聞であり、王子の妃となる身分でないことを意味していた。
「私は癒しの力に目覚め、幼い頃に孤児院からオーランド家に引き取られました。
私を優しく育ててくれたお父様お母様には大変感謝しております。このような発言をお許しください。
しかし、フリューがその出自を理由に勇者一行に認められないのであれば、私がここにいる訳にはいかないのです。」
そのエレナの言葉に対し、会場に参列していたオーランド神官長は、娘である聖女エレナを暖かい目で見守っていた。
エレナの言葉に対し国王は、
「聖女の言葉は理解した。
公の場で自ら出自を公表した以上、王子との婚約は再考せねばなるないな、そのフリューという斥候の件についても再考しよう。
よってこの報奨の件に関しては全て無かったこととし、再考の後言い渡す。
良いなサイロス」
と言った。
「分かりました」
国王の言葉に対し、宰相は苦々しく同意した。