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第33話 魔王国ファーレーン

 ウルに連れられて僕らは魔王城に入って行った。

 リンに馬の見張を任せ、僕とエレナとラヴィーネは、装備を置いて丸腰のまま魔王城に入った。


「おいウル! お前なんで人間を引き込んできた?」

「狼人族の戦士だからと言っていい気になるなよ。」

 正面からの続く回廊には、左右に魔王軍の幹部が並び、今にも飛びかからんと威嚇してくる。


「まあ放っておけって。フリューたちが行くことはオイラが許可をとってある。

 弱いやつほど吠えるんだよ」


 ウルのその言葉に反応した奴がいた。


「おい聞こえてんぞ!」


 ざわざわしている中進むと、一喝する声がした。


「姫様の恩人だぞ! 皆のもの控えろ!」


その声の主は、正面のドアから回廊に現れた。


「こんなに早く会えるとは思いませんでした。フリュー!」


「僕も驚いているよ。ラミア。」

 僕と魔将ラミアは再会の握手をした。


 その光景を見ていたエレナとラヴィーネはそう呟いた。

「またなの?」

「またみたいね。」


「姫さまがお待ちだ案内する。」

僕らはラミアの案内に付いて行った。



僕らは、この城のテラスに通された。

僕と魔王イブリンが初めてあった場所だ。


「フリュー!美味しいお菓子を用意したのよ。一緒に食べましょ?」

イブリンはテラスのテーブルセットでティーパーティーの用意をして僕たちを出迎えてくれた。


「フリューそちらのお姉さんたちは誰?」

「エレナとラヴィーネ、僕の仲間だよ。」

イブリンは、金色の目を二人に向けじっと見つめた。


「変ね?

お姉ちゃんは金色の髪の方が似合うと思うわ。あと青い瞳も素敵よ。

そっちのお姉ちゃんもエメラルドの髪が素敵だわ。

なんで似合ってるのに二人とも髪の色を変えているの?」


イブリンの言葉に二人は驚いた。


「さすがは魔王様ね。失礼しました。

私は賢者ラヴィーネと申します。

お目にかかれて光栄です魔王様。」


ラヴィーネはそう言って深々とお辞儀をする。

イブリンは言った。


「私も会えて嬉しいメーデイア。でも魔王様はやめて欲しいの。可愛くないでしょ?

 ラミアにも姫さまって言ってってお願いしたの。姫さまって呼んで欲しいの。」


「姫さま、なぜ私をメーデイアと?」


「お友達がそう言っているわ。ほら」

イブリンはそういって周りを見回した。


「まさか、姫さまは精霊が見えるのね?」


「ラヴィーネ、どういうこと?」

そうエレナが聞いた。


「姫さまは私のお母様、精霊王へカティアに近しい存在なんだわ。

 でもどうしてその力を得たのかは分からないけど。」


 そうラヴィーネが答えると、後で聞いていたラミアは言った。


「先代の魔王様の奥方、お亡くなりになった姫さまのお母様は、精霊の縁者だったのです。」


「精霊の縁者、それは古い表現ね。

私と同種族が魔王、魔王様の妃だったとはね」


「そうなの。亡くなったお母様はあなたと良く似た可愛い長い耳だったわ。

 あなたお母様に似ているわ。

 そうだ! 私のお母様になってくれる?」


 イブリンの無邪気な言葉にラヴィーネは答えた。


「そうね光栄だわ。お母様にはなれないけど、親戚のお姉さんくらいにはなれるわイブリン。」

 ラヴィーネがそう答えると、イブリンは走り出してラヴィーネのところに行き、よじ登ってラヴィーネの膝の上に座った。


 そしてイブリンは振り返ってラヴィーネの顔を見て

「お姉ちゃんはお母様と同じ匂いがする。」

と笑った。


僕は、イブリンに疑問を口にした。

「イブリン、君には何が見えているの?」


イブリンは少し考えると言った。

「全部よ。

 今晩のご飯はお魚。わたしお魚は好きじゃないのに。

 あとあなたたちが乗ってきた馬が1頭逃げちゃって、女の子が困っているわ。」

 イブリンはエレナを見ると、エレナはドキッとした。

「あなたの名前はエレナ、エレナはフリューが好き。

 フリューが誰を好きか教えてあげようか?」


「ちょっと待って!」

エレナは真っ赤になり、僕は慌てた。

「なになに!教えなさい!」

とラヴーネが身を乗り出した。


「びっくりした?

 残念でした。それは見てません。

 お母様に他の人が考えていることを見るのは止められていたの。それはよくないことなんだって。

 でも、そんなことは私の目で見なくてもわかるよ。」

イブリンは無邪気に笑っていた。


「ラミア、魔王軍の代表として君に聞いてほしいことがあるんだ。」

僕がそういうとラミアはイブリンを見て言った。

「姫さまは賢いお方です。 難しい言葉は分からなくても、話の本質は理解されます。

 姫さまにお話ししてください。」


「わかった。

聞いてくれるかいイブリン。」


僕がそういうとイブリンはうなづいた。


「これはフリードリヒ国王から聞いた王国の秘密の話なんだ。」


 僕はそう前置きして、王国を裏で操っていた傾国の魔女のことを話した。

 ラミアは驚き、イブリンも僕の話を真剣に聞いていた。


「なるほどな。この魔王国に伝わる話とも辻褄があう。

 この魔王様が率いる国、我々は『魔王国ファーレーン』と呼んでいるが、ヴァンパイアロードが支配する『ルクトヴァニア』とは常に争いがあり、昔から謀略と暗殺が行われている。

 我がファーレーンからすれば、王国がルクトヴァニアの手先となっている証拠はいくつか持っていたが、まさか王国が魔女に支配されていたとは思わなかった。」


その時、イブリンは突然話し始めた。


「我々の敵は『魔女エルゼベエト』、ルクトヴァニアの支配者ヴァンパイアロードの手先。

 魔女は復活して今王国の王都に向かっている。

 眷属を増やして、王国の抵抗勢力、迷いの森の精霊都市、そして我らファーレーンを滅ぼすために。

 今ならまだ間に合う、魔王軍を編成し急ぎ王都へ迎いなさい!」


 イブリンはそう告げると意識を失うように寝てしまった。


「今の言葉は精霊の言霊かもしてない。

 我々が争っている時ではないってことよ。」

ラヴィーネがそういうとラミアがうなづく。


「わかった。我々も王都奪還に手を貸そう。」


 そしてここにローゼンブルク王国解放軍と魔王国ファーレーンとの同盟が結ばれた。

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