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第24話 城跡の迷宮へ

「魔獣の一掃作戦を開始する。

 これは来たる対王国兵との戦いに備えた前哨戦と思って心してかかれ。」


 フリードリヒ王の号令により、東門から辺境伯軍、近衛騎士団、神官騎士団らからなる連合軍が出発した。


 しばらくして、先行していた斥候部隊から報告が入った。

「この先にワーウルフの群がこちらに向かっています。その数1000頭」


 その知らせを聞きフリードリヒ王が指示を出す。

「魔獣の群れは魔術師キルケが広域殲滅魔法で数を減らす。残りを一頭ずつ仕留めていく。

 一番数を仕留めた奴には、褒美を取らせよう。

と言っても今のワシに手持ちはないがな。

王都を奪還した際には必ずだ。」


 王の言葉に続き、王に付き添っていた辺境伯の副官クロースが言った。

「それでは、私が秘蔵の酒を出しましょう!」


「「「「おおおお!」」」


その言葉に兵が脇立った。



 ある程度距離を詰めたところで、キルケとエルフの魔法戦士たちが先行した。


「さあ久々の広域魔法ね。士気を高めるため出来るだけ派手なのをお見舞いしましょうか。」


『-Roar an tàirneanachー』


キルケの呪文と共に暗雲が立ち込め光り輝いた


ドガァン!!ドドドン!


 雷鳴がなり(いかずち)がワーウルフの群を薙ぎ払った。


「お見事でした。久々にキルケさまの広域魔法を見せていただきましたが、さすが威力は健在ですね。」

お付きの魔法戦士ロメが言うと、キルケは言った。

「これで秘蔵の酒はわたしの物ね。」

妹と同様に姉も相当な酒好きであった。


 ロメは、キルケに聞いた

「本当は、メーデイア様と一緒に行きたかったんじゃないですか?」


「運命に挑むには運命に選ばれた者でないといけない。だから私はあそこに相応しくないと思うわ。」

ロメにはキルケがメーデイアを羨ましく思ってるように感じた。


「それにねロメ、私は派手な魔法が得意なの。

ダンジョンで使うような細々した魔法は苦手。そういうのはメーデイアに任せるわ。」


 ロメは今感じたのは、思い違いだったかも...と思った。



ーーーーーーーーーーーーーーー



城門から出たアウグスト卿は言った。

「さあ、王たちが露払いをしてくれる間に迷宮を目指すぞ。」


 アウグスト卿の騎乗する馬を先頭に、僕たち5人は4頭の馬に乗って荒地の荒野を駆けていた。

 体の軽いリンは僕の後に騎乗した。


 遠くでは土煙が上がった場所で雷鳴が轟いていた。


「あーやってるわねー。姉様の魔法は派手好きだから。」


 ラヴィーネの言葉に、エレナがため息をついた。

「あなたの魔法だって大概じゃない。似た者姉妹ってところかしら?」


「あら、あなたが言う?リンに聞いたわよ。

 深夜に隠れて馬を飛ばしたのに、馬が輝きまくってたって」


 二人に会話を聞いていて僕は前から思ったことを聞いた。

「魔王討伐の時は、二人そんなに仲良くなかったよね?」


僕の問いに、笑いながらラヴィーネが答えた。


「ハハハハハッ!この子、聖女なんて呼ばれながら育ちがバレるの困るからって猫被ってたのよ。

 もうバレちゃったから隠す必要がなくなったんでしょ。これが本性よ!」


「それは!

 だから聖女なんて呼ばれるの嫌だったのよ。」


ラヴィーネの煽りに、エレナは狼狽えていた。


「でもさエレナ、僕は今の方がずっと良いと思うよ。」


 僕の言葉にエレナが赤くなって黙っていた。

 僕の後に乗っていたリンが言った。


「兄さん、そういうところですよ。」


 王様たちが魔獣を引き付けていくれていたおかげで、僕らは順調に迷宮に到着した。


 その古い城跡で、塔は崩れ去っていた。

 この荒地の中で、崩れた城壁には蔦が壁に絡まり、不思議と緑に覆われていた。


「ここにはエルフの結界の影響で生態系が異なるのだろう。結界を解けばこれも枯れ果てるだろうな。」

アウグスト卿がそのように説明した。


 城内を進み階段を降りると、そこに壁が蔦で覆われた。広間があり、その中央の壁には巨大で重厚な木の扉があった。

 古城の中で特に違和感が感じられた。


「この扉には時を止める結界がかけられているの。

 何百年もの間ここにある生命力を糧に結界は維持されていた。

 今はオウグが生命力を注いでいるけど、この地は代々のエルフが維持していたのよ。」

ラヴィーネは悲しそうに言った。


「この地は代々エルフが犠牲になって守ってきた呪いみたいなもの。

 私は今までずっと解放する方法を探し続け、代々の王に仕え太古の龍『ニーズヘッグ』倒せる勇者を探していた。」


エレンがラヴィーネの言葉に口を挟む。

「でも今の勇者アイリスでは無理よ。」


「そうね。私もそう思うわ。

 あなたがフリューに可能性を感じたように私もフリューに可能性を感じた。

 そしてユグドラシルの女王へカティアさまも精霊剣をフリューに託された。

 これは偶然じゃないわ。」


ラヴィーネはそう言って扉に向かった。

「これから私が封印を解きます。

 一度解いたらもう戻れない。あとは太古の竜を倒すのみよ。」


『ーsgaoil an seulaー」

ラヴィーネは呪文を唱えると、その扉に軽く口付けをした。


キーーーーーーン


 甲高い音と共に一瞬部屋が光り輝いたあと、壁面に茂っていた蔦の葉が枯れて崩れ落ちていった。

 木製の扉はだんだん色が抜けていきボロボロに崩れていく。

 何百年も時計を早回しするように風化していった。


そして完全に朽ちた状態で変化が止まった。


 アウグスト卿は、腰の剣を鞘ごと抜くと、鞘の先で扉を突き壊し扉を破壊した。

 エレナがライトの呪文で光源を作り中を照らすと、扉の先は見えなくなるまで石造りの廊下が続いている。


 僕が先に踏み込もうとしたところ、リンに止められた。


「兄さん、ここは私にやらせてください。私の役目ですから。」

そう言って、リンは用心しながら中に踏み込んで行った。




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