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中1の夏~ 少し大人な夏休み

ありがたくも好成績だった期末テストのおかげで、

ボクの夏休みは自由で思い通りのことができることになった。


1学期の終業式、ボクは成績表と少しの荷物を抱えて帰路についていた。


家に帰ると、母とまいかが何か言い合っていた。

ボクの姿を見るとまいかはすぐに部屋に戻ってしまった。


「お姉ちゃん、高校受験したいんだって」

母が言った。

まいかも中学受験をして高校まで進める中学に通っている。

でもその高校にはいかないで、他の高校を受験する、のだそうだ。


ボクの学校にも何人かは別の高校に行くから、別にすごく珍しいことではない。

でも、なんでわざわざ受験したいんだろう。

まいかは中学も楽しく通っていて友達も多い。学校生活に問題があるとは思えない。


しかし、まいかのそんな問題より、ボクには差し迫った難題があった。

サックスの演奏だ。

学園祭でボクは片桐海たちとサックスの演奏をする、ことにしてしまった。

片桐は乗り気ですでに、学園祭実行委員に参加のエントリーをすると張り切っている。


はっきり言って、ボクの演奏はとても人に聞かせられるレベルではない。

しかも、あすかまで誘ってしまった。

これが一番の問題だ。

あすかが本当に来たらどうしよう。


海の後ろにただ突っ立っているだけ、になるのは避けたかった。


夏休み、吹奏楽部の練習もある。

それと、音楽教室でのレッスンを増やしてもらった。

もちろん費用は父が払ってくれた。


ボクの夏休みはサックスの練習三昧となった


学校で吹奏楽部の練習をし、その後音楽教室。

そして、帰りに近所の図書館に寄る。


それが夏休みの行動パターンだった。


サックスもいいけど、勉強も侮れない。

せっかく費用を追加で出してくれたんだから、

2学期、成績がた落ちなんてならないようにしないと。


夕方、図書館で2時間ほど勉強をしてそれから家に帰る、

それが日課だった。


図書館は駅から少し離れていたけど、数年前に新築されたばかりで

個別ブースになっている席もあり、多くの学生が利用していた。


ある日、図書館から帰ろうとしていたところ、

あすかに会った。

その隣にはまいかがいた。


少し驚いたけど、あすかとまいか、そしてボクの3人で並んで一緒に帰った。

まいかは

「私、高校は別の学校を受験する。舞踊科のあるところ。そして体育大学か芸術系、音大で、舞踊を専攻したい」

と言う。


まいかは小さなころからダンスを習っていた。

発表会にも何度か連れていかれたけど、結構上手かった。


「もうそこまで考えてるんだ」

ボクが言うと、

「そこまでって、あっという間だよ、大学受験まで」

まいかが当たり前のように言った。


そういえば、小学6年の時点であすかは将来をきめていたっけ。

医者になる、だから大学は医学部に行くって。


「あすかは医学部受けるの」

ボクは聞いた。

「うーーん、ま、いろいろあって、医学部にはいかないことにした」

あすかが言った。

ボクはあすかのお母さんのことが頭をよぎっていた。

それを察したかのように

「親の決めた道には進まない」

そう言った。


高校3年生、受験生のあすかは日中は予備校の夏期講習を受け、その帰りにこの図書館で

数時間勉強をする、という夏休みをすごしているそうだ。


そして、高校受験のためにやはり勉強にきていたまいかと会って、

いろいろ話していたんだそうだ。


その夏休み、ボクたちは毎日のようにこの図書館で同じ時間を過ごした。

そして一緒に帰った。


帰り道、いろいろなことを語り合った。

将来の夢、なりたい職業、なりたい大人。

まいかは世界で活躍するダンサーになる、そう言った。


医学部に行かない、というあすかが何を目指しているのかはわからない。

でも医者になりたい、と言わされていた時よりも瞳が輝いているように見えた。


そしてボクは、今はまだ学園祭でサックスの演奏を立派にこなすこと、

これが一番の夢だった。

それから先のことはとても考えていられなかった。


去年までとはまったく違う夏休み。

ボクは今年の夏、すこしだけ大人になった気がした。


そろそろツクツクボウシの鳴き声が聞こえ始めた頃だった。



中1、中3、高3、三人のそれぞれの夏休みです。

応援していただけると感激します。

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