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ボクの初恋のひと それぞれの青春  作者: 明けの明星


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20/24

高1から高2~憂鬱

るるちゃんの養成所のことや、片桐海のアメリカ行きの事

そんなことを聞いているうちにボクはなんだか自分が

何もない、何も考えていないような気分になっていた。


実際その頃のボクは、毎日何となく学校に行き、

何となく部活に行き、そして家に帰ってゲームをする、そんな日々だった。


家でもほとんど会話はせず、かろうじて食卓に着きみんなで食事をしていたけど、

何も話さず、黙々と食べてすぐに部屋に引っ込む。


母から

「ご馳走様くらい言いなさいよ」

と諭されても、

「っせ。」

と舌打ちしているだけだった。


ある日の夕食、めずらしくまいかがいた。

最近は何かと忙しいらしくて、家にいること自体少ない。


まいかはいつもよくしゃべった。子供のころからだ。

ボクは比較的無口でおとなしい子だったので、

ボクの代わりにいろいろ喋って、ますますボクを無口にさせてくれた。


その日の食卓でもまいかはしゃべっていた。

まいかが所属しているダンスカンパニーは最近注目されているらしく、

イベントなどへの出番も多く、メディアに登場することも増えていた。


「こんど、個別の取材あるかもしれないんだよ。わたなべまいかちゃんのお家紹介、とかで。

そうしたら、お母さんもけいたも出てよね」


母はなんだか嬉しそうに、

「家、掃除しておかないと」

と浮かれていた。


ボクはというと、

「ンド」

と言い放ち、席を立っていた。

めんどくさ、というのも面倒で「ンド」だけが聞こえていた。


この日、ボクが家の中で発した言葉はそれだけだった。


部屋に戻ろうとしていると、母とまいかの話が聞こえた。

「けいた、いつもこんなの?」

まいかが母に聞く。


「そうなのよ、扱いにくいったらありゃしない」

母がため息をついている。


「遅くなやってきた反抗期なのかね」

まいかが言う。


ボクは中学生の頃、親に逆らったり、やたらと腹を立てたりという

いわゆる反抗期という時期がなかった気がする。


そうなのかな、反抗期なのかな。

ボクは、ボクに腹が立っていた。

何もしない、やろうとしないボク。


母やまいかに暴言を吐いたりしたくはなかったけど、

何か言われると、すごく腹が立つ。


ほっておいてほしかった。

それでも、父も母も毎日なにかしら話しかそうけてきた。


まいかときたら、ボクがまだ小学生だったころのように、

あれこれと構ってきた。


そんなことから逃げるようにボクはますます部屋に閉じこもった。

いつしか、翔×マリアのグループメールにも反応しなくなっていた。


そんなある日、翔×マリアのグループメールにあすかからの連絡があった。


「こんど路上ライブやります。大学最後のライブかな。これでライブ活動も卒業」

とあった。


あすかはもう大学4年だ。

就職先も決まったと聞いた。

そこそこの企業だけど、勤務地が全国にありどこになるかはわからないそうだ。


「最後か」

ボクは思った。

あすか、歌はやめちゃうのかな。


翔×マリアのみんなとも、しばらく疎遠にしていたけど、

あすかの最後のライブは見に行こう、そう思った。


あすかのメールの最後に、

「サックス奏者として、片桐海がゲスト参加します」

とあった。


憂鬱な気持ちがどっと襲ってきた。

「海、あすかと一緒にライブやるんだ」


あすかは、ボクではなく海をえらんだ。


元々海の方が演奏技術も格段上だし、ろくに練習もしていないボクが

選択肢に入ること自体、あるわけないのに。


そんなことも冷静に考えられなくなっていた。


ボクは憂鬱と孤独を感じていた。

とてつもなく、ひとりぼっちになっている気がしてならなかった。


ボクが高校2年になっていた冬の事だった。

応援していただけると感激します。

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