高1~もうひとつの挑戦
るるちゃんが「タレント養成所の入所オーディション」を受けたことが
るるちゃんの両親の知るところとなったらしい。
今まで、親に預けていたるるちゃんの貯金通帳を返してくれるように頼んだから。
小さいころから、お年玉やお祝いをコツコツとためていたらしく、
るるちゃんの言う通り、養成所の1年分の費用くらいが貯まっているそうだ。
もちろん、用途を聞いてくるるるちゃんの両親。
るるちゃんは養成所に入りたいと伝えたそうだ。
そこでいろいろと議論はあったのだろうけど、
結局、るるちゃんの両親は賛成してくれたようだ。
それどころか、費用も出してくれるそうだ。
るるちゃんの貯金はこのままとっておきなさい。と。
その代わり、大学へは進学すること、そしてちゃんと卒業すること、を約束したそうだ。
るるちゃんの高校は大学付属なので、今のままなら内部進学できる。
るるちゃんは
「私はこんなことからしか始められない。これでもすごい1歩なの」
と言う。
自分の道をぐいぐいと切り開いていくまいかを見ていると、すごく消極的に思えるけど、
まいかが猪突猛進すぎるのだ。
るるちゃんの両親は、いままで一度も自分から何かをやりたい、と言ったことのないるるちゃんが、
自分で決めて行動した、というだけでうれしかったのかもしれない。
その頃、外部受験をして公立の高校に進学した片桐海から連絡があった。
「クラスに女子がいる。いいぞー」
と。
海の進学先は共学校だ。
女子がいて当然だ。
何だ、こんな事自慢してきやがって、と思いながら
久しぶりに海と会った。
少し会わなかっただけで、海は随分と大人っぽくなったように見えた。
背も伸びいているかもしれない。
お互いの学校のこと、部活の事、いろいろ話した。
そうしているうちに、海が
「俺は高校の間にアメリカの工科高校に留学して
工科大学の研究室の夏期講座に参加する」
と言った。
その頃、海は宇宙工学に興味をもっていて、将来はロケットの製作に携わりたいと思っていた。
そのためにその道では先進国であるアメリカで学びたい、そう考えていたようだ。
「留学なら、うちの高等部でもいろんなところに行けるのに」
ボクは言った。
ボクの高校では、留学に力を入れていて多くのプログラムが用意されていた。
「そうなんだけど俺が行きたいのは、あの工科高校と大学の夏期講座なんだ。
通っている高校は行きたい高校と姉妹校として提携しているから、毎年留学生を派遣しているんだ。
そして、大学の夏期講座も高校のある地域とその大学の地域が姉妹都市だから、優先的に参加できる」
海はそういうことを入念に調べ、外部受験を決断したのだ。
ボクが毎日をボケっと過ごしている間に、自分の将来への道筋を組み立てていたんだ。
なんだか、ボクは自分だけが取り残されたような気分になった。
前、海の合格祝いでみんなで集まった時みたいに。
それでも、海のこの計画をうまくいきますように、と思った。
そう思えただけでも、ボクは安心した。
みんなの夢なんか、叶わなければいいのに、
そう思うボクがすぐ隣にいるような気がしていたから。
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